先生、おねがい。

あん

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 一時間後には無事に遊園地に到着。
 
 「彼氏どうしたの?急用?」

 俺の頭にウサ耳をつけながら、栗原君が不思議そうに首を傾げた。ちなみにこのウサ耳は、俺が来ることが決定してすぐに、みんなで買ってくれたらしい。ちょっと恥ずかしいけれど、みんなが俺のために買ってくれたのかと思うと、素直に嬉しかった。大事にしようって、そう思う。

 「あ、えと……お仕事で……」
 「え?仕事?高校生じゃないの、あの赤髪」
 「えっ」

 (そ、そうだった。みんな勘違いしてるんだった……!)

 どうやって誤魔化そう。ついそんなことを考えてしまったけれど、すぐに心の中で首を振る。
 誤魔化す必要なんてない。だって、これは本当のことを言う絶好の機会だもん。俺の恋人は戸塚君じゃないんだよって。
 今なら言える。俺は覚悟を決めて、スゥッと息を吸い込んだ。

 「あ、あの、それはっ」
 「バイトじゃねえの?」

 (……あれ?)

 俺の覚悟は、内山君の言葉によって、あっけなく散っていき、栗原君は「あぁ」と納得したように頷いた。

 「なるほど。ごめん察し悪くて」
 「う、ううんっ」

 (うぅ……また駄目だった……)

 どうして俺ははっきりものを言えないのだろう。一言違うって言うだけなのに。大切なお友だちに隠しごとなんてしたくないのに。

 (でも、本当のこと言っても隠し事には変わりないよね……)

 先生が恋人ってことは伏せなきゃいけないのだから、言えてもせいぜい年上ってことくらいだ。でも、嘘つくのと、ところどころ隠すのとじゃ、やっぱり違うのではないか。
 そう自責の念に駆られていると、唐突にギュッと手を取られた。相手は山田君。俺の両手をお互いの胸の前で握って、緊張した面持ちで俺のことを見つめている。心なしか、ほっぺたも赤い気がする。

 (遊びすぎて疲れちゃったのかな?)

 それならば、今来たばかりの俺に気を遣わないで、どこかで休んだ方が良いと提案しようとしたのだけど──。

 「俺だったら!」
 「……?」

 (山田君だったら……?)

 その言葉の続きが気になって、黙ったまま続きを待つ。

 「俺だったら、望月に寂しい思いさせない!」
 「ふぇ?」
 「だ、だからっ!もし望月が今寂しんなら……それなら、おっ、俺がっ、望月のこと、もっと幸せに──」

 「もー!とっつー早くー!」
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