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しおりを挟む俺はキュッと、先生の肩を掴む。
「物は、いらない、です」
「そっか」
「けど……その……」
「うん」
「ギュってして欲しい……」
恥ずかしくて伏し目がちになってしまう。すると、髪を撫でていた先生の手が背中に周り、身体を密着させるように力を込められた。
先生の体温に胸がドキドキして、身体がぴったりとくっついてるのが恥ずかしくて。だけど、もっともっと欲しくて。上目で見ると、先生はコテンと首を傾げた。
「あとは?」
その言葉に、俺の胸が跳ね上がる。
「まだ、良いの……?」
「もちろん」
「……じゃあ、あの……キス、も」
「うん」
ほっぺに片手が添えられる。そのまま唇が重なり、そして、触れただけですぐに離れていってしまった。俺はそれを追いかけるように顔を近づけてしまい、先生が小さく笑う。
「もっかい?」
「ん……もっと……」
駄々っ子のような目になっちゃったかも。それでも、もっと深いキスが今すぐに欲しかった。先生とする、あの蕩けちゃいそうになるキスが好き。
先生のカッコいい顔が再び近づいてくる。トクントクンと高鳴る胸に、どこか心地良さを覚えながら、目をゆっくりと閉じる。
「んむ……んん、ぁ……んぅ」
柔らかい、濃厚なキス。舌を絡め取られ、漏れる甘い息。次に唇が離れるころには、俺はトロトロに蕩けていて、先生の支えなしでは身体を保っていられなかった。
「気持ち良かった?」
ほっぺを撫でる先生に、コクリと頷く。息が荒くなっていたから、言葉では返事が出来なかったから。そんな俺に、先生は大人っぽい顔で微笑む。
「蕩けた顔して……可愛いね」
「んぅ……」
「ほら、あとは?心のしたいこと、なんでもするよ?」
この状況で、その答えは一つしかなくて。でも、素直に言うのはやっぱり恥ずかしくて。俺は先生の首に抱きつくように腰を上げる。そうすれば顔を見なくて済むから、ちょっとだけ、恥ずかしいのが和らぐかなって。
「あとは……先生の、したいこと……してほし……」
そう耳元で呟くと、ブワッと先生の体温が上がった気がした。それはもちろん、気のせいだと思うけれど、なんだかそんな感じがしたのだ。
「心くーん、それはちょっとズルいんじゃないですか?」
「うっ……」
(そ、そうだよね)
先生の揶揄うような声に、自分がしてしまったことの恥ずかしさを自覚する。
「ご、ごめんなさ……ひゃっ」
すぐに身体を離そうとしたけれど、その前に視界が一変し、背中はソファの柔らかな感触で包まれた。覆いかぶさる先生は、何かのスイッチが入ったような、大人の男の人の目をしている。
「嘘だよ。本当に可愛いね、心は」
「ふぇっ……あ、んっ」
耳を手でゆっくりとなぞられて、変な声が出てしまった。恥ずかしくて口を押さえるも、それに追い打ちをかけるように先生の唇が耳元に寄る。
「しばらくしてなかったし……今日はめいいっぱい可愛がらせてもらおうかな」
そしてペロッと耳たぶを舐めた先生が、「準備もあるし」と色っぽく囁いた。
「あっ……」
そうして俺は、何週間ぶりに先生にたっぷり甘やかしてもらったのだった。
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