先生、おねがい。

あん

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 ドキドキ、ソワソワ。そんな忙しく動く胸を押さえて、寝室の扉を開く。中には、ヘッドボードに背を預けて、スマホを操作している先生が。今日は眼鏡をしていない。それがちょっと……いや、すごく恥ずかしい。


 「上手く出来た?」

 「は、はい……たぶん……」


 落ち着かない俺を見かねた先生が、ベッドから降りて近くまで寄ってくる。もうそれだけでドキドキで。肩を抱かれながら連れて行かれ、俺はポスッとベッドに腰を下ろした。


 「緊張してる?」

 「もっ、もちろんです」

 「俺も」


 早口で返答した俺に先生が小さく笑って、ベッド脇の引き出しからなにかを取り出した。俺はろーしょんだと思ったんだけど、よく見ると、それとは違っていて。


 (細長い、箱……?)


 「せんせ……?」

 「んー、後ろ向いて」

 「は、はい……」


 言われるがまま先生に背中を向ける。すると、先生の手が首をまわり、ヒヤッとした感触がした。


 「はい、出来た」

 「え……これって……」


 首元に手を当てて振り返る。驚いた顔をする俺に、先生はふわりと微笑んだ。


 「プレゼント。改めて、誕生日おめでとう」

 「……っ」


 シンプルなネックレス。ツイストラインのリングには、ひとつだけ小さな青い宝石が埋め込まれている。キラッと輝くそれは、控えめだけど、すごく綺麗で。


 「こ……こんな高そうなのもらえませんっ」


 本当はとっても嬉しかったのに、思わずそう言ってしまった。すぐに自分の言動に後悔して、そしてそれが顔に出てしまったのだろう。先生はわざとらしく眉を下げた。


 「えー、せっかく買ったのに?」

 「だ、だって……俺っ、てっきり、その……こ、この後が、プレゼントかと……」

 「そんなわけないだろー?ていうか、この後はむしろ、俺にとってのプレゼントじゃない?」

 「そ、そんなこと……」


 そんなことない。俺は今日という日を、とっても楽しみにしていた。それこそ、愛知君に言い当てられてしまうほどに。

 だけどそう言ったら、はしたない子みたいで。先生にそう思われてしまうのが嫌で、俺は口を噤んだ。


 「気にするほど高くないよ。それに、せっかくの誕生日なんだし、たまには良いだろ?」

 「う……」

 「すごく似合ってる。可愛い」


 先生がネックレスの横の鎖骨をスルリと撫でる。その指の感触と、先生から可愛いって言ってもらえたこと。それだけで、俺の胸はキュンキュンと高鳴って、単純なことに、もう嬉しい以外の感情は無くなってしまう。


 「ありがとうございます……一生大切にします……」


 (ずっと。死ぬまで大切にする……)


 これは今日から俺の宝物。大好きな先生からもらった、大切な大切な宝物。

 幸せいっぱいの笑顔を見せた俺に、先生も穏やかに微笑んでくれて、俺たちはどちらともなく唇を重ねた。



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