206 / 329
198
しおりを挟む
*
ドキドキ、ソワソワ。そんな忙しく動く胸を押さえて、寝室の扉を開く。中には、ヘッドボードに背を預けて、スマホを操作している先生が。今日は眼鏡をしていない。それがちょっと……いや、すごく恥ずかしい。
「上手く出来た?」
「は、はい……たぶん……」
落ち着かない俺を見かねた先生が、ベッドから降りて近くまで寄ってくる。もうそれだけでドキドキで。肩を抱かれながら連れて行かれ、俺はポスッとベッドに腰を下ろした。
「緊張してる?」
「もっ、もちろんです」
「俺も」
早口で返答した俺に先生が小さく笑って、ベッド脇の引き出しからなにかを取り出した。俺はろーしょんだと思ったんだけど、よく見ると、それとは違っていて。
(細長い、箱……?)
「せんせ……?」
「んー、後ろ向いて」
「は、はい……」
言われるがまま先生に背中を向ける。すると、先生の手が首をまわり、ヒヤッとした感触がした。
「はい、出来た」
「え……これって……」
首元に手を当てて振り返る。驚いた顔をする俺に、先生はふわりと微笑んだ。
「プレゼント。改めて、誕生日おめでとう」
「……っ」
シンプルなネックレス。ツイストラインのリングには、ひとつだけ小さな青い宝石が埋め込まれている。キラッと輝くそれは、控えめだけど、すごく綺麗で。
「こ……こんな高そうなのもらえませんっ」
本当はとっても嬉しかったのに、思わずそう言ってしまった。すぐに自分の言動に後悔して、そしてそれが顔に出てしまったのだろう。先生はわざとらしく眉を下げた。
「えー、せっかく買ったのに?」
「だ、だって……俺っ、てっきり、その……こ、この後が、プレゼントかと……」
「そんなわけないだろー?ていうか、この後はむしろ、俺にとってのプレゼントじゃない?」
「そ、そんなこと……」
そんなことない。俺は今日という日を、とっても楽しみにしていた。それこそ、愛知君に言い当てられてしまうほどに。
だけどそう言ったら、はしたない子みたいで。先生にそう思われてしまうのが嫌で、俺は口を噤んだ。
「気にするほど高くないよ。それに、せっかくの誕生日なんだし、たまには良いだろ?」
「う……」
「すごく似合ってる。可愛い」
先生がネックレスの横の鎖骨をスルリと撫でる。その指の感触と、先生から可愛いって言ってもらえたこと。それだけで、俺の胸はキュンキュンと高鳴って、単純なことに、もう嬉しい以外の感情は無くなってしまう。
「ありがとうございます……一生大切にします……」
(ずっと。死ぬまで大切にする……)
これは今日から俺の宝物。大好きな先生からもらった、大切な大切な宝物。
幸せいっぱいの笑顔を見せた俺に、先生も穏やかに微笑んでくれて、俺たちはどちらともなく唇を重ねた。
ドキドキ、ソワソワ。そんな忙しく動く胸を押さえて、寝室の扉を開く。中には、ヘッドボードに背を預けて、スマホを操作している先生が。今日は眼鏡をしていない。それがちょっと……いや、すごく恥ずかしい。
「上手く出来た?」
「は、はい……たぶん……」
落ち着かない俺を見かねた先生が、ベッドから降りて近くまで寄ってくる。もうそれだけでドキドキで。肩を抱かれながら連れて行かれ、俺はポスッとベッドに腰を下ろした。
「緊張してる?」
「もっ、もちろんです」
「俺も」
早口で返答した俺に先生が小さく笑って、ベッド脇の引き出しからなにかを取り出した。俺はろーしょんだと思ったんだけど、よく見ると、それとは違っていて。
(細長い、箱……?)
「せんせ……?」
「んー、後ろ向いて」
「は、はい……」
言われるがまま先生に背中を向ける。すると、先生の手が首をまわり、ヒヤッとした感触がした。
「はい、出来た」
「え……これって……」
首元に手を当てて振り返る。驚いた顔をする俺に、先生はふわりと微笑んだ。
「プレゼント。改めて、誕生日おめでとう」
「……っ」
シンプルなネックレス。ツイストラインのリングには、ひとつだけ小さな青い宝石が埋め込まれている。キラッと輝くそれは、控えめだけど、すごく綺麗で。
「こ……こんな高そうなのもらえませんっ」
本当はとっても嬉しかったのに、思わずそう言ってしまった。すぐに自分の言動に後悔して、そしてそれが顔に出てしまったのだろう。先生はわざとらしく眉を下げた。
「えー、せっかく買ったのに?」
「だ、だって……俺っ、てっきり、その……こ、この後が、プレゼントかと……」
「そんなわけないだろー?ていうか、この後はむしろ、俺にとってのプレゼントじゃない?」
「そ、そんなこと……」
そんなことない。俺は今日という日を、とっても楽しみにしていた。それこそ、愛知君に言い当てられてしまうほどに。
だけどそう言ったら、はしたない子みたいで。先生にそう思われてしまうのが嫌で、俺は口を噤んだ。
「気にするほど高くないよ。それに、せっかくの誕生日なんだし、たまには良いだろ?」
「う……」
「すごく似合ってる。可愛い」
先生がネックレスの横の鎖骨をスルリと撫でる。その指の感触と、先生から可愛いって言ってもらえたこと。それだけで、俺の胸はキュンキュンと高鳴って、単純なことに、もう嬉しい以外の感情は無くなってしまう。
「ありがとうございます……一生大切にします……」
(ずっと。死ぬまで大切にする……)
これは今日から俺の宝物。大好きな先生からもらった、大切な大切な宝物。
幸せいっぱいの笑顔を見せた俺に、先生も穏やかに微笑んでくれて、俺たちはどちらともなく唇を重ねた。
0
お気に入りに追加
190
あなたにおすすめの小説
執着攻めと平凡受けの短編集
松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。
疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。
基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
君のことなんてもう知らない
ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。
告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。
だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。
今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが…
「お前なんて知らないから」
寮生活のイジメ【社会人版】
ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説
【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】
全四話
毎週日曜日の正午に一話ずつ公開
異世界ぼっち暮らし(神様と一緒!!)
藤雪たすく
BL
愛してくれない家族から旅立ち、希望に満ちた一人暮らしが始まるはずが……異世界で一人暮らしが始まった!?
手違いで人の命を巻き込む神様なんて信じません!!俺が信じる神様はこの世にただ一人……俺の推しは神様です!!
年上の恋人は優しい上司
木野葉ゆる
BL
小さな賃貸専門の不動産屋さんに勤める俺の恋人は、年上で優しい上司。
仕事のこととか、日常のこととか、デートのこととか、日記代わりに綴るSS連作。
基本は受け視点(一人称)です。
一日一花BL企画 参加作品も含まれています。
表紙は松下リサ様(@risa_m1012)に描いて頂きました!!ありがとうございます!!!!
完結済みにいたしました。
6月13日、同人誌を発売しました。
目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる