先生、おねがい。

あん

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 うさぎさんを抱きながら帰って行った蓮君を見送った俺は、しばらくして家に着いたという蓮君からの連絡に安心して、定時上がりの先生を待っていた。もちろん、浴衣を着たままで。


 (に、似合うって言ってたけど、ほんとかな……)


 そわそわうきうき。そんな浮かれた気持ちで、ちょこんとソファに座って待つ。


 (早く会いたい……)


 そう思った瞬間、ガチャっと扉の開く音がした。


 「……!」


 (帰ってきた……!)


 俺は勢いよく立ち上がり、ヒラヒラと袖をなびかせて玄関に向かう。本当は走ってしまいたいくらいだったけど、そこは理性を保ち、控えめに早歩きで。


 「ただいま」

 「……おかえりなさい」


 この瞬間が好き。会いたくて会いたくて堪らなくて。そしてやっと会えて、一気に心が満たされる瞬間。

 カバンを預かり、先生の手が空くようにする。これは二人の暗黙の了解。その理由はちょっぴり恥ずかしいもの。


 「……ん」


 ゆっくりと塞がれる唇。毎日の習慣となった、お帰りなさいのキス。

 カバンを預かるようになってからは両手で顔を包んでくれる。先生に触れられている場所が多ければ多いほど、幸せになるの。

 玄関の段差では埋まらない身長差。本当は俺がつま先立ちにならなくちゃいけないのに、いつも先生が屈んでくれる。


 「……はぁっ」


 いつもより、ちょっぴり長かった。おでことおでこがくっつき、耳をするりと撫でられてピクッと肩が震えた。


 「せんせ……」

 「……可愛いなぁ」


 しみじみとそう言われて、キスで熱くなったほっぺが、ますます赤く染まる。胸がきゅんきゅん苦しくて。好きで好きで堪らない。


 「可愛すぎて、あの場で抱きしめたくなった」

 「ほんと……?」

 「ほんと」


 (嬉しい……)


 「心……」


 恥ずかしくて目を伏せたけど、すぐに気配がして、顎をちょっとだけ上げて、そっと目を閉じた。


 「んぅっ……んん、んぅ」


 さっきよりも激しい愛を与えられて、ここが玄関だということを忘れ、ふにゃふにゃに蕩けてしまう。


 「せん、せ……」


 腰が立たなくなってしまい、先生にもたれかかる。そんな状態のときに「ソファとベッド、どっちにする?」と囁かれれば、自然と口が動いちゃうもので。俺は迷うことなくあっちを選んだ。
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