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しおりを挟む「んんーっ」
まずはレバーを引こうとしたのだけど、これがなかなか硬くて上手くできない。最初からこれでは先が思いやられる。苦戦してると、見兼ねた蓮君が助け舟を出してくれる。
「俺、やる」
「あ、ありがとう……」
これ以上無駄な時間を使うわけにもいかず、諦めて蓮君に渡すと、いとも簡単にカチャッと音がした。
「すごい……蓮君、力強いんだねぇ……」
「そう?」
コテンと首を傾げた蓮君が銃を返してくれる。それを受け取った俺は、蓮君の指導通りに、コルクを詰めて銃口を的に向けた。つま先立ちになりながら狙いを定めるけど……可愛いうさぎさんを撃つのがは心苦しい。
(でも、これも蓮君のためっ……ごめんなさいっ)
俺はぎゅっと目を瞑って引き金を引いた。瞬間、バンッと音が鳴ったけど、目を開けてもうさぎさんは倒れていなかった。もちろんそれは残念なんだけど、ちょっとホッとしちゃう。
「心……目つぶったら、駄目だよ?」
「う、うん……けど、なんか可哀想で……。で、でもっ、次は頑張るねっ!」
そうして撃つこと四発。ちゃんと目は開けていたのだけど、どれもかすりもせず。
「うぅ……最後の一発……」
「ははっ、頑張れねーちゃん!」
(ね、ねーちゃん……?)
「あっ、ありがとうございますっ」
ちょっと引っかかるけど、お店のおじさんも応援してくれてるんだからと、ギュッと銃を握りしめる。そうして最後の引き金を引こうとしたとき、ふわりと背後から抱きしめるように手を添えられた。
「ふぇっ、蓮君?」
「ちょっと上狙って」
「上……?」
「銃身がぶれないように。手を台の上に置いて、脇は締めて」
「う、うんっ」
フワリと香るシトラスの匂いを感じながら、蓮君の言った通りにする。
「撃って」
耳元で囁かれた瞬間、引き金を引く。勢いよく飛んで行った銃弾は、うさぎさんの耳に命中し、そして──コテン、と倒れてくれた。
「……!やったぁ!」
何度撃っても駄目だったのに、最後の一発で目標達成。俺は嬉しくてたまらなくなって、思わず蓮君にぎゅうっと抱きついてしまった。
「すごいっ。すごいすごいっ」
「心、上手」
蓮君が俺の頭を撫でる。その言葉に、俺は顔を上げてかぶりを振った。
「えっ、違うよっ。蓮君が教えてくれたんだよっ」
「でも、心が撃った」
そうしてお互いを見つめ合っていると、大きな咳払いが一つ。
「あー……イチャつくのは良いが、他所でやってくれねえかね」
ニヤニヤとしたおじさんが、俺にうさぎさんを差し出していた。俺は我に返って、慌ててぬいぐるみを受け取る。
「あっ、す、すみませんっ。ありがとうございます」
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