先生、おねがい。

あん

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156-高谷広side

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  「お願いです……先生」


  心が顔を赤らめながら、うるうると上目遣いをしてくる。その様子があまりにも可愛いすぎるのと、心のおねだりが珍しいのとで、俺は情けないことにピタっと硬直してしまった。

  そして、それが悪かった。無言を肯定ととった心が、そっと俺の胸を押す。普段ならなんてことない力でも、動揺しきった俺を押し倒すのは容易くて。俺はベッドを軋ませながら、倒れてしまった。


  「し、心っ……ちょっと待って」


  慌てて起きようとするも、それを阻むように心がのしかかってくる。


  「せんせ……」


  甘えるように前に倒れてすり寄ってくる仕草に、心臓が跳ね上がった。うるさい鼓動が聞こえてしまわないかと心配になるも、心は特に気にした様子を見せず、俺の肩に手を添えて、耳元に口を寄せた。その際にふわりと香ったシャンプーの匂いが堪らない。

 
  「先生……好き……」

  「……っ」


  甘く囁いた唇が、そのまま俺の耳たぶを甘噛みする。


  「はむぅ……んぅ」


  心は声を漏らしながら、はむはむと耳を弄び、終いにはペロっと舌を這わせた。そして、夢中になったように舌を動かし続け、耳元に淫らな水音が響く。


  (ど、どこでスイッチ入ったんだ、この子……)


  あまりの衝撃に、開いた口が塞がらない。普段の恥ずかしがり屋からは想像も出来ない積極的な行動は、夢かと思うほど現実的じゃなかった。俺は、与えられる刺激をなんとかやり過ごしながら、思考を巡らせる。


  「んうぅ……ん」


  心の身体が揺れるたびに、肌と擦れ合う桜色の突起。それに興奮を覚えながらも頭を回転させ、ふとあることに思い至った。それは、俺がその横に付けたもの。


  (もしかして……キスマーク、か……?)


  いつもと違うことといえば、そのくらいしか思いつかない。あの傲慢とも言える赤い印が、心の興奮を煽ったのだろうか。


  「……っ」


  (確かに嬉しいとは言ってたけど……それにしたって、可愛すぎるだろ……)


  その衝撃の事実に堪らなくなった俺は、手で顔を覆い、一人で悶えた。

  そうしている間にも行為は続き、ツツーと舌で首筋をなぞられる。もしかしたらこれは、俺がさっき心にしたことを同じようにしているのかも。そんな都合の良い想像は、心が鎖骨のくぼみを舐めたことで確信に変わった。それならば、次の場所は胸だろうか。


  「ん……」

  「は……っ」


  予想通りに胸を吸われ、切ない声が漏れる。一応言っておくが、これは感じたわけじゃない。俺は胸では感じない。ただ、こんな時まで『お返し』をしようとする健気な心が、可愛くて愛おしくて、堪らなくなったのだ。

  しかし、それを知らない本人は、頂きから口を離して上目で俺を見る。そして、俺の胸に顎を乗せ、コテンと首を傾げた。


  「せんせ……きもちぃ……?」


  純粋でまっすぐな瞳。胸は気持ち良い場所だと、信じて疑っていないのだろう。それほど心の胸は性感帯と化し、そして、それを作ったのが俺自身だと言うことに、酷く興奮した。

  しかし、俺はそれを悟られないように、心のふわりとした髪を撫でながら、優しく微笑んだ。


  「うん。気持ち良いよ」


  嘘をついた罪悪感は多少あるけれど、それでも心が咲かせた嬉しそうな笑顔を見たら、そんなものは一瞬にして吹き飛んでしまった。


  「んぅ……ちゅ……んん」


  気を良くした心が、再び可愛い唇を寄せる。チュッチュと吸い付く姿は、まるで赤子のようで。それが可愛くて何度も髪を撫でてしまう。その度に心は幸せそうに目を細めた。


  「ぷはぁっ……」


  しばらくして、心は満足そうに胸から口を離し、上体を起こした。そして、俺の腹に手を置いて膝を使いながら、次の目的へと向かっていった。



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