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「あー楽しかった!な!望月!」
帰りの車。行きと同じで、隣に座るのは山田君。ニカッと笑いかけてきた山田君に、俺も満面の笑みを浮かべた。
「うんっ。すっごく楽しかったっ」
本当に本当に楽しかった。皆で思う存分水遊びをした後は、尾上さんと御坂さんも加わって海の家で焼きそばを食べた。家で食べるよりも美味しく感じるのは、海水浴の醍醐味だって山田君が教えてくれた。
「山田君、泳ぐの上手くてびっくりしちゃった」
「へへっ。運動は得意だからさっ」
「ふふ。あと、山田君腹筋割れてるんだね。いいなぁ……」
「へっ!?え、いやっ、えっ、見たの!?俺の!?」
山田君がガッと目を見開く。
「……?うん」
俺はコクリと頷いた。
見たと言うより、遊んでいたら自然と目に入ったって感じだけれど。
「ええっ、やばっ!!どうしよ!!」
山田君が顔を真っ赤に染めて、あまりにも驚愕した表情を浮かべるので、見ては駄目だったのだろうかと心配になる。
(山田君って、案外恥ずかしがり屋さんなのかな……?)
嫌だったなら申し訳ないことをしたな、と思ったけれど、山田君はそんな俺の心配をよそに、一人でブツブツと呟き始める。
「……この日の為に鍛えたかいがあった……兄ちゃんがいきなり、筋トレのスパルタ指導しだしたのって、この為だったんだ……辛かったけど……死ぬかと思ったけど……ありがとう、兄ちゃん……」
「……?」
(この日のため?あっ、そっか。周りの人に見られちゃうもんね……)
そういえば俺も、知らない人にチラッと身体を見られた。その大体は男の人だったから、俺の筋肉のなさを見ていたのかもしれない。
「俺は筋肉全然ないから、恥ずかしいな……」
ポソッと呟く。するとそれに反応した山田君が、ブンブンと首を振った。
「いいいいやっ!?そんなことない!!むしろ良い!!最高!!」
「え?あ、ありがとう……?」
「お、おうっ。どういたしまして!!」
(フォローしてくれるなんて、山田君はやっぱり優しいなぁ……)
しみじみそう思っていると、後ろの尾上さんが山田君の頭を引っ叩いた。山田君は「いでっ!」と声を上げて、「何すんだよ!」と尾上さんをキッと睨んだ。
「お前なぁ、さっきまでは感謝してたくせに、そんな睨むなよ。それより、望月君に言いたいことあるんだろ。早くしないとそろそろ着くぞ」
「え?……あっ、そうだ!そうだった!」
山田君は何かを思い出したように背筋を正して、俺の方を向いた。その表情はどこか緊張しているものだった。
「あのさっ、望月」
(……なんだろう?)
俺もピンッと姿勢を正す。
「うん、なに?」
「えっと、さ……今度夏祭りあるじゃん?」
「うん」
そう。山田君の言う通り、もう少しで夏祭りがある。去年までは関係なかったイベントごとだけど、今年は違う。ひと味もふた味も違う。
(だって──)
「でさ……一緒に行かね?ふっ、二人でっ」
「えっ」
思わなかった提案に素っ頓狂な声が出てしまった。慌てて口を抑えるも時すでに遅し。俺の気持ちは山田君に伝わってしまっていて。山田君は傷ついた顔で俺を見た。
「え……もしかして駄目な感じ……?」
「あ、えっと……ご、ごめんなさいっ」
俺は慌てて口から手を離し、山田君に頭を下げる。
「先約があって……」
「あー楽しかった!な!望月!」
帰りの車。行きと同じで、隣に座るのは山田君。ニカッと笑いかけてきた山田君に、俺も満面の笑みを浮かべた。
「うんっ。すっごく楽しかったっ」
本当に本当に楽しかった。皆で思う存分水遊びをした後は、尾上さんと御坂さんも加わって海の家で焼きそばを食べた。家で食べるよりも美味しく感じるのは、海水浴の醍醐味だって山田君が教えてくれた。
「山田君、泳ぐの上手くてびっくりしちゃった」
「へへっ。運動は得意だからさっ」
「ふふ。あと、山田君腹筋割れてるんだね。いいなぁ……」
「へっ!?え、いやっ、えっ、見たの!?俺の!?」
山田君がガッと目を見開く。
「……?うん」
俺はコクリと頷いた。
見たと言うより、遊んでいたら自然と目に入ったって感じだけれど。
「ええっ、やばっ!!どうしよ!!」
山田君が顔を真っ赤に染めて、あまりにも驚愕した表情を浮かべるので、見ては駄目だったのだろうかと心配になる。
(山田君って、案外恥ずかしがり屋さんなのかな……?)
嫌だったなら申し訳ないことをしたな、と思ったけれど、山田君はそんな俺の心配をよそに、一人でブツブツと呟き始める。
「……この日の為に鍛えたかいがあった……兄ちゃんがいきなり、筋トレのスパルタ指導しだしたのって、この為だったんだ……辛かったけど……死ぬかと思ったけど……ありがとう、兄ちゃん……」
「……?」
(この日のため?あっ、そっか。周りの人に見られちゃうもんね……)
そういえば俺も、知らない人にチラッと身体を見られた。その大体は男の人だったから、俺の筋肉のなさを見ていたのかもしれない。
「俺は筋肉全然ないから、恥ずかしいな……」
ポソッと呟く。するとそれに反応した山田君が、ブンブンと首を振った。
「いいいいやっ!?そんなことない!!むしろ良い!!最高!!」
「え?あ、ありがとう……?」
「お、おうっ。どういたしまして!!」
(フォローしてくれるなんて、山田君はやっぱり優しいなぁ……)
しみじみそう思っていると、後ろの尾上さんが山田君の頭を引っ叩いた。山田君は「いでっ!」と声を上げて、「何すんだよ!」と尾上さんをキッと睨んだ。
「お前なぁ、さっきまでは感謝してたくせに、そんな睨むなよ。それより、望月君に言いたいことあるんだろ。早くしないとそろそろ着くぞ」
「え?……あっ、そうだ!そうだった!」
山田君は何かを思い出したように背筋を正して、俺の方を向いた。その表情はどこか緊張しているものだった。
「あのさっ、望月」
(……なんだろう?)
俺もピンッと姿勢を正す。
「うん、なに?」
「えっと、さ……今度夏祭りあるじゃん?」
「うん」
そう。山田君の言う通り、もう少しで夏祭りがある。去年までは関係なかったイベントごとだけど、今年は違う。ひと味もふた味も違う。
(だって──)
「でさ……一緒に行かね?ふっ、二人でっ」
「えっ」
思わなかった提案に素っ頓狂な声が出てしまった。慌てて口を抑えるも時すでに遅し。俺の気持ちは山田君に伝わってしまっていて。山田君は傷ついた顔で俺を見た。
「え……もしかして駄目な感じ……?」
「あ、えっと……ご、ごめんなさいっ」
俺は慌てて口から手を離し、山田君に頭を下げる。
「先約があって……」
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