先生、おねがい。

あん

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 「心、どう?」

 「えへへ……プカプカして、すっごく楽しいですっ」


 尾上さんがビールを片手にパラソルに戻ってきて、先生と俺は海に入ることにした。泳げなくて不安そうにしていた俺に、先生が海の家で借りてきてくれたのはシャチフロート。シャチの形をした浮き輪みたいなもの。

 
 (楽しい……)


 プカプカ浮かびながら、潮の香りを存分に堪能する。たまに足をバタバタしたりして、俺は海遊びに夢中になった。しばらくして顔を上げると、微笑ましそうに見てた先生と目が合い、俺は急に我に帰る。

 
 (あ……俺自分ばっかり……)


 あまりにも初めての海が楽しすぎて、先生のことを放置していた。せっかく一緒に来て、シャチさんまで借りて来てくれたのに、これはあまりにも酷すぎる。甘えすぎだ。


 「あ、あの……」

 「ん?」

 「えっと、あの……先生は、泳がなくて良いんですか?」

 「え?どうして?」

 「だって、俺ばっかり楽しんで……」


 バツが悪くて語尾は尻窄みしてしまった俺に、先生が「ああ」と納得しような顔を見せる。そして、ニコッと爽やかな笑顔を咲かせた。


 「泳ぐより、心の可愛い姿を見てる方が楽しい」

 「……っ」


 その言葉の破壊力といったら、それはそれは凄まじいもので。胸がきゅうんと甘い音を鳴らす。


 (うぅ……好きっ)


 堪らなくなった俺は、前のめりになって、シャチさんの背にある突起に抱きついた。

 もう、好きって言いたくて仕方ない。その言葉は喉まで出かかったけれど、一応外だからと、グッと我慢して飲み込んだ。そして、俺は突起に抱きつきながら、横目で先生を盗み見る。

 
 (身体……カッコいいなぁ……)


 思えば、いつも俺ばっかり、その……し、シてもらってたから、先生の裸を見るのはこれが初めてだ。細いけどそれだけじゃない。引き締まったお腹には、薄っすらとだけど筋肉の線が見えている。


 (いち、に、さん……いっぱい……)


 いつも一緒にいるのに、先生が鍛えている姿は見たことがない。いったい、いつ鍛えているのだろう。俺のつるぺたなお腹とは大違い。

 俺のお腹と言えば……実は、先生に身体を見られるようになってから、先生が仕事から帰ってくるまでの間、ちょっとだけ腹筋をしている。だらしないお腹だったら幻滅されちゃうと思って始めたのに、悲しいことに全然効果がない。

 
 (どんな感じなんだろう……硬そう。触ってみたい……ツンって、ちょっとだけで良いから)


 好きな人の肌。そういうことには少しだけ疎い俺だけど、興味を持たないわけがなくて。

 ゴクリと、生唾を飲んだ瞬間──


 「助けて!!」

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