先生、おねがい。

あん

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140‐高谷広side

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 「尾上先輩、買ってきました」

 「サンキュ」


 海の家で買ってきたビールを尾上先輩に渡して、砂浜に腰を下ろすと、端に寄せられてる荷物が目に入った。


 「心……来たんですか?」

 「ん?ああ。荷物置いて、御坂さんと貝拾いに行った」

 「……そうですか」

 「うん。……あ゛ー、美味い」


 ビールを喉奥へと流し込んだ尾上先輩が満足そうに唸る。そんな先輩を横目に、俺はウーロン茶を片手に持ちながら心のことをボーっと考えていた。


 (心の水着姿、まだまともに見てないんだよな……)


 店で試着するか聞いたら、恥ずかしがって拒否されてしまった。


 (絶対可愛いよな……変な奴に絡まれてないかな……。まぁ御坂さんといるんなら大丈夫か……)


 とは言え、早く心の水着姿を見たいのは確かだし。ほかの男どもに見られたくないのも確かだ。

 ていうか、そんなことよりも先にさっきの態度をまず謝らなきゃ。


 (嫌われてないかな……)


 もしもウザいと思われてたら……そう思うと軽く死ねる。


 (はぁ……)


 眉を寄せながらウーロン茶を飲む俺に、尾上先輩がニヤリと口端をつりあげた。


 「で、DKと付き合うってどう?」

 「……っ!ごふっ」

 「うわ。汚いな」


 あまりにも唐突な発言のせいでむせ返った俺に、その辛辣な言いよう。むしろ、辛うじて噴き出さなかったのを褒めて欲しいくらいなのに。

 俺は目に生理的な涙を浮かべながら、尾上先輩を見やる。そんな俺を見て、先輩は一層楽しそうにニヤッと笑った。


 「真面目なやつだと思ってたのに、まさか自分の生徒に手を出すなんて。広も案外やるなぁ」

 「な、何を言って……」

 「分かるだろ。広はともかく、望月君を見てれば」

 「なっ……」

 「広を見る目が恋する乙女のそれになってる。このメンバーで気づいてないのは健くらいだろ」

 「……」


 恋する乙女の目。それは否定できない。

 心が俺に向けてくる視線は、瞳孔が開いていて、キラキラウルウルで、本当に本当に可愛い。それはもう、色々我慢するのが辛いくらいに。




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