先生、おねがい。

あん

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 夕食が終わって、俺たちは叔母さんに泊まるように促された。

 先生は渋っていたけれど、そこはお母さんの強い押しが勝ち、俺たちは一晩ここに泊まらせてもらうことになった。

 蓮君は早々に部屋に行ってしまい、叔父さんは久しぶりに先生と飲めたのが嬉しかったらしく、飲み過ぎてソファで潰れていた。

 そして俺はというと、先生がお風呂に入っている間に、叔母さんが持ってきてくれたアルバムをダイニングテーブルに広げて、キラキラとした眼差しを送っていた。


 「かわっ……可愛いっ」


 土遊びをしてる幼少期の先生。カメラに向けられたあどけない笑顔に、胸がきゅぅんと締め付けられる。

 お遊戯会、運動会、遠足。

 どれもこれも可愛くて、テンションが上がりまくりの俺に、向かいに座っている叔母さんが「ふふ」と笑みを漏らす。


 「こっちは中学生ね。反抗期だったわ」

 
 そう言って見せられたのは、学ランを着た先生の写真。中央に写っている先生は、面倒臭そうにそっぽを向いて眉を寄せていた。


 「反抗期……?」

 「何聞いても、知らないうるさい黙れ、って。癪だから、無理やり写真撮ってやったわ」

 「へえ……」


 (叔母さん、たくましい……)


 先生にもそんな風に反抗期があったなんて。いつも優しい先生からは想像できなくて、少し意外だった。


 「ふふ。まあ、高校生になったら落ち着いたけどね」


 次の写真に写る先生はブレザー姿だった。先程とは違って表情は柔らかく、照れたように笑っている。

 高校生ということは、今の俺と同じくらいの歳。

 写真の中の先生は、今より髪が短くて少し幼い顔つきだけど、今と同じくキラキラ輝いている。


 (うぅ、かっこいい……)

 
 こんな格好良い人が同じクラスだったら、絶対にモテるに違いない。

 もし俺が、先生と同級生だったら──そう考えて、やっぱりやめた。

 俺はクラスメイトの顔もろくに見ないような、暗い男の子。対して先生は、クラスの中心にいるようなキラキラの人。そんな二人が、同じクラスだったところで、どんな接点が持てるというのか。

 俺は大人の先生と出会ったから、こんなに変われたんだと思うから。友達が出来て、大切な人が出来て、自分に少しだけ自信が持てるようになったのは、今の先生のおかげ。

 そうしみじみ思っていると、ふとテーブルの上に置いていた手に、ふわりと叔母さんの手が重なった。


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