先生、おねがい。

あん

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65-高谷広side

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 「最低すぎるだろ、俺……」


 あんな夢を見て朝勃ちするなんて、心に申し訳がなさすぎる。第一、あのウブな子があんな大胆な行動を起こすわけがないのに、まんまと誘いに乗っかった自分が恨めしい。


 「はぁ……」


 (……とりあえずシャワー浴びるか)


 罪悪感に苛まれながらも、さっさと熱を冷ますべく寝室から出ると、いつものように青いエプロン姿の心が、台所に立っていた。ふわっとした黒髪が可愛く揺れて、夢で見たよりも幼い黒い瞳が俺を捉える。


 「お、おはっ、おはようございます!」

 「ああ、お、おはよう」


 いつも以上に言葉を詰まらせている心を不思議に思いつつも、気まずい感情の方が大きくて、目を逸らす。心を見ていると、あの夢が思い出されてヤバいと思ったからだ。


 (心にバレないように、風呂場に……)


 「ゆ、ゆっくり寝られましたか?」

 「え!?」


 タイムリーな質問に思わず大きな声を上げてしまった。ビクッと跳ねた心の肩を見て、まずいと思い、慌てて笑顔を作る。果たして上手く笑えているのかは謎だが。


 「あ、ああ、うん。ぐっすり熟睡だったよ」

 「そ……そうですかっ。良かったです」

 「うん。じゃあ、ちょっとシャワー浴びてくるな」


 そうして足を踏み出すと、今度は心が「シャワー!?」と、大きな声を上げた。


 「お、お風呂ですか!?」

 「え、だ、駄目かな……?」


 (バレた……?)


 背中に冷や汗が伝うも、心は取れるんじゃないかと心配になるほど、首を横に振って、否定した。


 「あっ、だ、大丈夫です!!ちゃんと、掃除しました!!」

 「え、うん?あ、ありがとう?」

 「い、いえっ」


 噛み合ってるのか分からない会話に、お互い苦笑いを浮かべて、各自の行動に移る。

 今日はずっと、こんな風に気まずい調子が続いて、やっと普通に戻れたのは夕食が終わった頃だった。


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