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「位置についてー、よーい、どん!!」
河川敷に響く山田君の声。体育祭まで一週間を切った日曜日、俺は山田君にリレーの練習に付き合ってもらっていた。ちなみに先生は、学校でバスケ部の大会の手伝いに駆り出されて、17時ごろまで帰って来ない。
「望月!タイム上がった!」
走り終わると、ニコニコとストップウオッチを掲げて駆けてくる山田君。まるで自分のことのように喜んでくれる山田君のおかげで、嬉しさが二倍になる。
「ほんと?」
「ほんとほんと!やっぱ、望月って足速いな!」
「他はダメダメなんだけど、走るのは好きなんだ。球技は球が変な方向に飛んでっちゃう」
「俺は球技の方が好きだなー。バスケとか超楽しい!」
「でも、今回は借り物競走なんだよね?」
「おう!借り物競争も、すっげえ面白そうじゃん?」
借り物競争と言っても、うちの学校は、紙に書かれていることに当てはまる人と一緒にゴールまで走ることになっている。つまりコミュニケーション能力や顔の広さも関わってくるわけで、まさに山田君にぴったりの競技だった。
「応援するね」
二人で草の上に座りながらそう言うと、山田君はいたずらっ子のように笑った。
「ありがと!!でも、かなりの確率で望月のとこ行くよ?」
「え?」
「友達って書いてたら望月のとこ行くし、可愛い人とか、かっこいい人って書いてても望月のとこ行く!」
「だ、駄目だよ。友達は嬉しいけど……他は嘘になっちゃうもん」
「嘘じゃないって。望月マジで可愛いし、勉強も出来て足も速いからちょーかっこいい!」
「でも……」
「あとさ」
山田君が少しだけ照れたようにニコッと微笑んだ。
「好きな人って書いてても、真っ先に望月のとこ行くから」
(好きな人……?)
どういう意味なのか一瞬迷った。
前までの俺だったら、すぐに友達としてだって思うはず。けど、俺自身が先生に恋してるのもあって、男同士って言い訳は通用しないって知った。
(でもやっぱり……さっき山田君自身が友達って言ってたし、友達としてってことだよね……?)
みんながみんな、同性を好きになるってこともないだろうし。最終的にそう結論を出した俺は、山田君に微笑みかけた。
「……ありがとう。俺も、山田君と仲良くなれて、すごく嬉しい」
なんだか照れくさいけど、いつも気持ちをいっぱい伝えてくれる山田君に、俺の気持ちも知ってほしい。これからは、山田君のおかげで学校が楽しくなったお礼をしていきたい。
そんな俺の言葉に、山田君は緊張した面持ちでゴクリと喉を上下させ、手を俺のほっぺに──
「おーい!お二人さん、差し入れを持ってきたよー!!」
「……っ」
遠くからの声にビクッとなった山田君が手を戻す。
(……?虫でも付いてたのかな……?)
そう不思議に思っているうちに、声の主が近くにやってきて、コンビニの袋を差し出した。
「はい、もっちー。スポドリだよ」
「わ、松野君、ありがとう。えっと、いくらだった?」
「そんなのいいよ」
「でも……」
そんなやりとりをしているうちに、山田君が無言のままガサッと袋に手を入れた。ゴクゴクと凄い勢いで消費されるドリンクに圧倒されてしまう。
(そ、そんなに喉乾いてたのかな……)
練習に付き合ってもらってる身で、飲み物を持ってくる気遣いを出来なかった自分を反省する。
(次は飲み物と一緒に、お礼のお菓子でも作って持ってこようかな……)
「位置についてー、よーい、どん!!」
河川敷に響く山田君の声。体育祭まで一週間を切った日曜日、俺は山田君にリレーの練習に付き合ってもらっていた。ちなみに先生は、学校でバスケ部の大会の手伝いに駆り出されて、17時ごろまで帰って来ない。
「望月!タイム上がった!」
走り終わると、ニコニコとストップウオッチを掲げて駆けてくる山田君。まるで自分のことのように喜んでくれる山田君のおかげで、嬉しさが二倍になる。
「ほんと?」
「ほんとほんと!やっぱ、望月って足速いな!」
「他はダメダメなんだけど、走るのは好きなんだ。球技は球が変な方向に飛んでっちゃう」
「俺は球技の方が好きだなー。バスケとか超楽しい!」
「でも、今回は借り物競走なんだよね?」
「おう!借り物競争も、すっげえ面白そうじゃん?」
借り物競争と言っても、うちの学校は、紙に書かれていることに当てはまる人と一緒にゴールまで走ることになっている。つまりコミュニケーション能力や顔の広さも関わってくるわけで、まさに山田君にぴったりの競技だった。
「応援するね」
二人で草の上に座りながらそう言うと、山田君はいたずらっ子のように笑った。
「ありがと!!でも、かなりの確率で望月のとこ行くよ?」
「え?」
「友達って書いてたら望月のとこ行くし、可愛い人とか、かっこいい人って書いてても望月のとこ行く!」
「だ、駄目だよ。友達は嬉しいけど……他は嘘になっちゃうもん」
「嘘じゃないって。望月マジで可愛いし、勉強も出来て足も速いからちょーかっこいい!」
「でも……」
「あとさ」
山田君が少しだけ照れたようにニコッと微笑んだ。
「好きな人って書いてても、真っ先に望月のとこ行くから」
(好きな人……?)
どういう意味なのか一瞬迷った。
前までの俺だったら、すぐに友達としてだって思うはず。けど、俺自身が先生に恋してるのもあって、男同士って言い訳は通用しないって知った。
(でもやっぱり……さっき山田君自身が友達って言ってたし、友達としてってことだよね……?)
みんながみんな、同性を好きになるってこともないだろうし。最終的にそう結論を出した俺は、山田君に微笑みかけた。
「……ありがとう。俺も、山田君と仲良くなれて、すごく嬉しい」
なんだか照れくさいけど、いつも気持ちをいっぱい伝えてくれる山田君に、俺の気持ちも知ってほしい。これからは、山田君のおかげで学校が楽しくなったお礼をしていきたい。
そんな俺の言葉に、山田君は緊張した面持ちでゴクリと喉を上下させ、手を俺のほっぺに──
「おーい!お二人さん、差し入れを持ってきたよー!!」
「……っ」
遠くからの声にビクッとなった山田君が手を戻す。
(……?虫でも付いてたのかな……?)
そう不思議に思っているうちに、声の主が近くにやってきて、コンビニの袋を差し出した。
「はい、もっちー。スポドリだよ」
「わ、松野君、ありがとう。えっと、いくらだった?」
「そんなのいいよ」
「でも……」
そんなやりとりをしているうちに、山田君が無言のままガサッと袋に手を入れた。ゴクゴクと凄い勢いで消費されるドリンクに圧倒されてしまう。
(そ、そんなに喉乾いてたのかな……)
練習に付き合ってもらってる身で、飲み物を持ってくる気遣いを出来なかった自分を反省する。
(次は飲み物と一緒に、お礼のお菓子でも作って持ってこようかな……)
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