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しおりを挟む「しーん。泣くことないよ?」
先生は俺の背中をさすってくれる。俺はただ、先生の胸の中で泣くだけ。
「うっ……ごめんなさっ……」
「大丈夫。悪いことじゃないから」
俺の顔をクイっと上に向かせた先生が、長くて綺麗な指で俺の涙を拭ってくれた。
ぼやける視界に見える先生は、相変わらず優しい瞳で俺を見つめてて。それに安心して、少しだけ気持ちが落ち着いた。
「あのさ……今まで一回も自慰したこと無いのか?」
(じ、い……?)
それは今まで聞いたことのない言葉だった。
「……あ、の……じい、って何ですか?」
「え」
「……?」
「あー……それは、まあ……あれだ」
よっぽど言いにくいことなのか口ごもる先生。小首を傾げて待つこと数秒、先生はやっと言葉を続けた。
「まあ、つまり、一人でエロいことをすること、なんだけど……」
「っ!?な、ないです……!」
(じい、ってそんな意味だったの!?)
ぶんぶんと首を振ったら、先生の顔が少し強張った。信じられないと言うような、驚いた顔。
えっちなことをしないのは駄目なのだろうか。
自分でするなんて知識は持っていなかったし、しようとも思わなかった。それに……そういうのをする方が、何だか悪いことなイメージがある。
「……じゃあ、朝にそこが濡れてたことは?」
「そ……それは、あり……ます」
恥ずかしかったけど白状すれば、ちょっと安心した様子の先生。けどすぐにまた心配そうな顔に戻った。
「不安になんなかった?大丈夫?」
「ほ、保健の授業で習ってたから……」
「そっか」
そんなやり取りの間にも身体は熱いままで、あそこはムズムズする。自分の身体が自分のものじゃない感覚が怖くて、思わず先生の腕を掴んだ。
「せ、せんせ......俺、こんなっ」
「心……」
俺の手から抜けた先生の腕。それだけで泣きそうなほど胸が痛んだけど、早とちりだったと分かる。先生の手が今度は俺の手の上に重なったからだ。
「大丈夫。男なら皆なることだから」
「皆……先生も……?」
「ああ。俺もなるよ」
その言葉に少しだけ安心したし、罪悪感も和らぐ。自分だったら嫌悪しか感じない現象も、先生と同じなら怖くない気がした。
「自慰も皆してる」
「一人で、ですか?」
「ん。したら、朝に出ることも少なくなるし」
朝は正直困っていた。
下着は汚れるし、布団だって染みがついてないかヒヤヒヤする。それをなくす為なら、恥ずかしい行為も必要なことなのかもしれない。けど……。
「でも、俺、やり方……分かんない、です」
そう伝えれば、重なっている手の力が少しだけ強まった。
「……大丈夫。俺が教えるから」
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