先生、おねがい。

あん

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 ──ガンっ


 何故かいきなり山田君が机におでこを打ち付けた。


 「んんんんんっ!!」

 「え!?ど、どうしたの!?」

 「可愛いっ!今のめっっっちゃ可愛い!!」

 「え、え?」

 
 山田君の言ってることが理解出来なくて、困惑するしかない。


 (可愛い?俺が?)


 よく分からないけど、今はとにかく山田君のおでこが心配だ。結構大きな音だった。赤くなったおでこに手を伸ばしたけど、それは目的に達することなく、掴まれてブンブンと振られてしまう。


 「良いに決まってるだろー!幸せになろうよ!てか俺が幸せにする!!」

 「え、う、うん。ありが、とう?」


 山田君の声が大きすぎて周りの注目の的。山田君の友達から「なに山田、プロポーズ?」なんて揶揄われたりして赤くなった俺とは逆に、山田君は「そうそう」なんて言ってニコニコしたままだ。


 「なんか、望月の新しい顔いっぱい見れて嬉しい」

 「え」

 「今度はさ、笑顔見たい」

 「笑顔?」

 「うん。きっとめっちゃ可愛い!」


 (笑顔……)


 笑顔は苦手だ。

 中学校の卒業写真でも、自分では笑ってたはずなのに実際はヘンテコな顔だった。


 (でも、そうだよね)


 俺が山田君や先生の笑顔を見たら心が晴れるように、相手だって同じはず。俺が笑顔でいることで、相手が少しでも楽しい気持ちになれるなら、笑顔でいた方が良い。


 (そしたら先生も、もっと笑ってくれるかな……)


 先生の優しい微笑みを思い出して、心がぽかぽかする。


 「頑張ってみるね」


 笑顔に頑張るも何もないかもしれないけど、山田君と繋がったままの手をぎゅっと握って意気込む。そんな俺に、山田君は大きく頷いてくれた。

 
 「おう!」




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