24 / 329
23
しおりを挟む「せんせ……離して、ください……」
「だーめ。心が逃げないように、寝るまではこのまま」
(な、なんか、恥ずかしい……)
背中に感じる先生の身体は、俺よりも断然大きくて頼もしい。大人の男の人って感じがする。
「あの……」
「ん?」
「いや、だから……手を……」
いくら身動きしても開放してもらえなくて、もう諦めるしかないのだと悟った頃、先生が耳元で「心」と名前を呼んだ。
「な、何ですか?」
「バイト、掛け持ち辞められないのか?」
「え……」
「全部辞めろとは言わないけどさ、これからは俺が一緒にいるし、どれか一つにしてくれた方が嬉しい。心の身体の為にも」
腰にあったはずの手はいつの間にか頭に置かれていて、優しく撫でられる。
(これからは……先生が、一緒にいる)
確かにバイトをしてた理由は一人で家に居たくなかったからだ。先生と暮らすことになった今、家事だってきちんとしたいし、辞めどきなのかもしれない。
「……分かり、ました。昨日のカフェ以外は、明日話してきます」
御坂さんのお店は特に好きだから、そこだけは続けたい。そう言えば、先生が納得したように頷いたのが背中越しの微かな振動で分かった。
「ん。もし困ったら、何でも言ってな」
「……はい」
先生は本当に優しい。
強要するでもなく自分の考えを押し付けるでもなく、ひたすら俺のことを考えてくれる。手を差し伸べてくれようとする。そのことがどうしようもなく嬉しくて、慣れない喜びに胸が痛い。
布団の中で手を胸に当て、意識が薄れる瞬間を待つ。
先生の体温は手と同じで少しだけ冷たい。もしかしたら俺のが人より高いのかもしれないけれど、どっちにしても先生の体温が落ち着くことに変わりはない。
(今日はきっと、良い夢を見られる気がする……)
次第に二つの体温が合わさって、眠りにつく頃には布団の中は心地いい温度に包まれていた。
0
お気に入りに追加
190
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる