撃ち抜けヴァージン

タリ イズミ

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透明な水

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 その日から和泉はあたしが画像を送るたびに毎回返事をくれるようになった。内容はジュース以外のことのほうが長かった。学校生活のことも多かったが、野球部ではどこのポジションだったのかだとか、好きな食べ物はなんなのかだとか、あるときは和泉から宿題が分からないから教えてほしいと言ってきたときもあった。

 通話してお喋りしたい。文字を打ちながらそのまどろっこしさにくちびるを噛む。だが、それをしてしまうとなにかの一線を越えてしまう気がした。たまに和泉は夜遅くまで返信が来ない上に明るい話題を避けることがあって、碓氷と会ってたんだろうなと薄々気づいてしまう。そんな日に電話をしたら、余計なことを言ってしまいそうだった。

 和泉とは変わらず学校では話さない。あたしが友人とかわいい髪型の動画を検索して騒いでいるときも、今秋から始まるアニメの声優について盛り上がっているときも、宿題の多さに愚痴っているときも、ただただ和泉は静かに教室で座っている。

 確認したことはないし、和泉から確認されたこともない。だが、メッセージをやり取りしているときは同じ気持ちだと信じたかった。名前のつけられない関係性に揺られていると、和泉の透明な水の中に入って閉じ込められたような気持ちになる。

 あたしはそこで息をするのに精一杯で、毎晩水を抱くように眠った。
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