9 / 24
拒絶-2
しおりを挟む
「でも、イズミンは嫌なんでしょ?」
だって、泣きそうだったじゃん。そう続けようとしたが、和泉はあたしの言葉を無視して校舎を指さした。
「姫宮さん、授業を受けておいたほうがよかったんじゃない?」
「それ、ウチが頭悪いと思ってる? ウチ、勉強できるほうだけど」
案の定、和泉は「そうなの?」と意外そうに聞き返してきた。思わず人差し指でトントンとその胸をつつく。
「イズミン、それってギャル差別。髪がプリンでもちゃんと勉強する子はいる!」
「そっか」
和泉が自然な笑みを浮かべた。
「俺たち、なんか似てるね。見た目と中身が違う」
「委員長が放課後学校でエッチしようとしてて、ギャルのウチが勉強できるってこと?」
「まあ、そんな感じ」
和泉の落ちてきた眼鏡を直す仕草に、なんだか心がそわそわする。体を触ってしまった指先を反対の手で包み込んでちらっと見上げた。すると、泣きぼくろの目が「なに?」と見下ろしてくる。あたしはむずむずとする口をとがらせた。
「ウチ、意外と面倒見がいいって言われるけど。ウチじゃイズミンの力になれない?」
すると和泉は「そうだね」と否定しなかった。
「柊馬君には柊馬君の考えがある。それを姫宮さんは変えられないでしょ」
「イズミンの考えを変えるのは駄目なの」
「俺が意見を変えても周りは変わらないよ」
和泉の上履きがそこにあった小さな石ころを蹴った。
「さっきのことだって半月もすれば殆どの人は忘れる。そうやって時間が過ぎ去るのを待つのが一番楽だ。前にも言ったよね。俺は優等生じゃない。ただちょっと諦めが早いだけだよ」
にべもない答えに再び絶句する。自分が助けたいと思っても、手を差し出してくれなければなにもできない。これまで積極的に話しかけることで友人に囲まれてきたあたしは、それを求めない人に出会ったことがなかった。
「姫宮さんの気持ちはありがたく受け取っておくよ」
じゃあね。リップクリームをあたしに押しつけた和泉は背を翻し、あたしをそこに残して校舎へと戻っていく。足が動かなくて、ゴミ箱の中を見る。梨ジュースの紙パックは握りつぶされていて、くの字にへこんでいた。
――ただ諦めが早いだけだよ。
あたしはこぶしを握りしめ、曇り空を睨んだ。
だって、泣きそうだったじゃん。そう続けようとしたが、和泉はあたしの言葉を無視して校舎を指さした。
「姫宮さん、授業を受けておいたほうがよかったんじゃない?」
「それ、ウチが頭悪いと思ってる? ウチ、勉強できるほうだけど」
案の定、和泉は「そうなの?」と意外そうに聞き返してきた。思わず人差し指でトントンとその胸をつつく。
「イズミン、それってギャル差別。髪がプリンでもちゃんと勉強する子はいる!」
「そっか」
和泉が自然な笑みを浮かべた。
「俺たち、なんか似てるね。見た目と中身が違う」
「委員長が放課後学校でエッチしようとしてて、ギャルのウチが勉強できるってこと?」
「まあ、そんな感じ」
和泉の落ちてきた眼鏡を直す仕草に、なんだか心がそわそわする。体を触ってしまった指先を反対の手で包み込んでちらっと見上げた。すると、泣きぼくろの目が「なに?」と見下ろしてくる。あたしはむずむずとする口をとがらせた。
「ウチ、意外と面倒見がいいって言われるけど。ウチじゃイズミンの力になれない?」
すると和泉は「そうだね」と否定しなかった。
「柊馬君には柊馬君の考えがある。それを姫宮さんは変えられないでしょ」
「イズミンの考えを変えるのは駄目なの」
「俺が意見を変えても周りは変わらないよ」
和泉の上履きがそこにあった小さな石ころを蹴った。
「さっきのことだって半月もすれば殆どの人は忘れる。そうやって時間が過ぎ去るのを待つのが一番楽だ。前にも言ったよね。俺は優等生じゃない。ただちょっと諦めが早いだけだよ」
にべもない答えに再び絶句する。自分が助けたいと思っても、手を差し出してくれなければなにもできない。これまで積極的に話しかけることで友人に囲まれてきたあたしは、それを求めない人に出会ったことがなかった。
「姫宮さんの気持ちはありがたく受け取っておくよ」
じゃあね。リップクリームをあたしに押しつけた和泉は背を翻し、あたしをそこに残して校舎へと戻っていく。足が動かなくて、ゴミ箱の中を見る。梨ジュースの紙パックは握りつぶされていて、くの字にへこんでいた。
――ただ諦めが早いだけだよ。
あたしはこぶしを握りしめ、曇り空を睨んだ。
10
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ナイトプールで熱い夜
狭山雪菜
恋愛
萌香は、27歳のバリバリのキャリアウーマン。大学からの親友美波に誘われて、未成年者不可のナイトプールへと行くと、親友がナンパされていた。ナンパ男と居たもう1人の無口な男は、何故か私の側から離れなくて…?
この作品は、「小説家になろう」にも掲載しております。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる