どうあがいても恋でした。

タリ イズミ

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5巻【二】

1 新学期1

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【二】

 閉鎖期間が明けて数日、始業式の朝に朔也は緊張して学校に登校した。いよいよ今日から三年生が始まる。校門へと近づくと、校舎に入る前のところに人だかりができているのが見えた。クラス替えの発表だ。学ランと紺に白いスカーフのセーラー服がわいわいと集まっていて、朔也は三年生の紙が張り出されている山へ近づいた。

「朔、はよ」

 明るい声が飛んできてそちらを見ると、笑顔の水野だった。「おはよ」と笑みを浮かべて側へ寄ると、「俺F組だった」と張り出された白い紙を指さす。

「AからDまでが文系で、EからGが理系だってよ」
「そっか、水野は理系だったね」
「朔は文系だろ? Dより前を見るといいと思うぜ」

 じゃあまたと彼は爽やかに手をあげて校舎へと向かい、文系外部受験組の今井と水野はクラスが違うんだなと思う。

 それでもいいと思えるなら強いけど、できれば山宮と同じクラスになりたい。

 朔也は人だかりの後ろから縦長の名票を見て、小さい字の名前を探す。あいうえお順だから、各クラスの先頭を探してすぐに自分の名前は見つけた。C組だ。しかも担任は昨年と同じ、学年主任でもある高橋茂先生である。今井の名前がD組にあって、担任のところに一年生のときの担任の高橋舞子という名前が入っていた。朔也たちの学校は一学年七クラス。文系外部受験組は二クラスと聞いているから、おそらくCとDがそうなのだろう。急いでCとDの名票を見たが、あいうえお順最後のほうの山宮の名前を探すのが難しい。前にいる生徒の頭でよく見えない。

『山宮、クラスどこだった?』

 そっとスマホをいじってメッセージを送った。いつもの山宮なら登校している時間だ。だが既読がつかない。そのとき、前が一気に開けて、朔也は「ごめんね」と声をかけてから名票の下のほうが見える前へ進んだ。CとD、どっちだ。最後の五人の名前をさっと見ると、C組のほうへ山宮の名前があった。

 山宮と同じクラス! 体がかあっと熱くなって、思わずガッツポーズをしたくなる。新学期早々一番重要事項だったものにチェックがつけられる。邪魔になるからとそそくさとその場を離れたが、やったやったと心の中で小躍りした。

 すごい。三年間同じクラス。その確率を弾き出し、顔がにやけそうになって頬をぴたぴたと叩きながら昇降口へ向かう。スマホを取り出し、まだ既読のつかないそこへ「同じクラスだよ!」と追加のメッセージを送った。昇降口のすのこがカタカタと軽やかな音を立てて上履きに履き替え、三年生の階へ廊下を進む。同じ校舎なのに、階段でどこに向かうかというだけで空気が新鮮に感じられる。

「おはよ! クラス離れちゃったね」
「進路もあるから仕方ないか」

 そんな会話をするセーラー服が側を歩いており、スマホがポケットで振動したのを感じてぱっと見た。だが、山宮からではなく、書道部三年生のグループ連絡だ。

『名票を確認したけど、五人全員違うクラスみたい。私、G』

 去年クラスメイトだった中村凛子のメッセージに、それぞれが自分はどこだったというメッセージがぽこんぽこんと表示される。五人それぞれのアイコンの名前を確認し、今年もこの四人と一緒に書道部を引っ張るんだと自分を鼓舞する。

『おれ、Cだった』
『ホント、見事にバラバラ。グループ連絡、活用してこ!』

 じゃあ放課後はまた書道室で。そんなメッセージで締めたとき、とうとう三年C組の室名札のある教室へたどり着いた。足を止めた上履きがリノリウムの廊下でキュッと音を立てる。
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