131 / 145
5巻【二】
1 新学期1
しおりを挟む
【二】
閉鎖期間が明けて数日、始業式の朝に朔也は緊張して学校に登校した。いよいよ今日から三年生が始まる。校門へと近づくと、校舎に入る前のところに人だかりができているのが見えた。クラス替えの発表だ。学ランと紺に白いスカーフのセーラー服がわいわいと集まっていて、朔也は三年生の紙が張り出されている山へ近づいた。
「朔、はよ」
明るい声が飛んできてそちらを見ると、笑顔の水野だった。「おはよ」と笑みを浮かべて側へ寄ると、「俺F組だった」と張り出された白い紙を指さす。
「AからDまでが文系で、EからGが理系だってよ」
「そっか、水野は理系だったね」
「朔は文系だろ? Dより前を見るといいと思うぜ」
じゃあまたと彼は爽やかに手をあげて校舎へと向かい、文系外部受験組の今井と水野はクラスが違うんだなと思う。
それでもいいと思えるなら強いけど、できれば山宮と同じクラスになりたい。
朔也は人だかりの後ろから縦長の名票を見て、小さい字の名前を探す。あいうえお順だから、各クラスの先頭を探してすぐに自分の名前は見つけた。C組だ。しかも担任は昨年と同じ、学年主任でもある高橋茂先生である。今井の名前がD組にあって、担任のところに一年生のときの担任の高橋舞子という名前が入っていた。朔也たちの学校は一学年七クラス。文系外部受験組は二クラスと聞いているから、おそらくCとDがそうなのだろう。急いでCとDの名票を見たが、あいうえお順最後のほうの山宮の名前を探すのが難しい。前にいる生徒の頭でよく見えない。
『山宮、クラスどこだった?』
そっとスマホをいじってメッセージを送った。いつもの山宮なら登校している時間だ。だが既読がつかない。そのとき、前が一気に開けて、朔也は「ごめんね」と声をかけてから名票の下のほうが見える前へ進んだ。CとD、どっちだ。最後の五人の名前をさっと見ると、C組のほうへ山宮の名前があった。
山宮と同じクラス! 体がかあっと熱くなって、思わずガッツポーズをしたくなる。新学期早々一番重要事項だったものにチェックがつけられる。邪魔になるからとそそくさとその場を離れたが、やったやったと心の中で小躍りした。
すごい。三年間同じクラス。その確率を弾き出し、顔がにやけそうになって頬をぴたぴたと叩きながら昇降口へ向かう。スマホを取り出し、まだ既読のつかないそこへ「同じクラスだよ!」と追加のメッセージを送った。昇降口のすのこがカタカタと軽やかな音を立てて上履きに履き替え、三年生の階へ廊下を進む。同じ校舎なのに、階段でどこに向かうかというだけで空気が新鮮に感じられる。
「おはよ! クラス離れちゃったね」
「進路もあるから仕方ないか」
そんな会話をするセーラー服が側を歩いており、スマホがポケットで振動したのを感じてぱっと見た。だが、山宮からではなく、書道部三年生のグループ連絡だ。
『名票を確認したけど、五人全員違うクラスみたい。私、G』
去年クラスメイトだった中村凛子のメッセージに、それぞれが自分はどこだったというメッセージがぽこんぽこんと表示される。五人それぞれのアイコンの名前を確認し、今年もこの四人と一緒に書道部を引っ張るんだと自分を鼓舞する。
『おれ、Cだった』
『ホント、見事にバラバラ。グループ連絡、活用してこ!』
じゃあ放課後はまた書道室で。そんなメッセージで締めたとき、とうとう三年C組の室名札のある教室へたどり着いた。足を止めた上履きがリノリウムの廊下でキュッと音を立てる。
閉鎖期間が明けて数日、始業式の朝に朔也は緊張して学校に登校した。いよいよ今日から三年生が始まる。校門へと近づくと、校舎に入る前のところに人だかりができているのが見えた。クラス替えの発表だ。学ランと紺に白いスカーフのセーラー服がわいわいと集まっていて、朔也は三年生の紙が張り出されている山へ近づいた。
「朔、はよ」
明るい声が飛んできてそちらを見ると、笑顔の水野だった。「おはよ」と笑みを浮かべて側へ寄ると、「俺F組だった」と張り出された白い紙を指さす。
「AからDまでが文系で、EからGが理系だってよ」
「そっか、水野は理系だったね」
「朔は文系だろ? Dより前を見るといいと思うぜ」
じゃあまたと彼は爽やかに手をあげて校舎へと向かい、文系外部受験組の今井と水野はクラスが違うんだなと思う。
それでもいいと思えるなら強いけど、できれば山宮と同じクラスになりたい。
朔也は人だかりの後ろから縦長の名票を見て、小さい字の名前を探す。あいうえお順だから、各クラスの先頭を探してすぐに自分の名前は見つけた。C組だ。しかも担任は昨年と同じ、学年主任でもある高橋茂先生である。今井の名前がD組にあって、担任のところに一年生のときの担任の高橋舞子という名前が入っていた。朔也たちの学校は一学年七クラス。文系外部受験組は二クラスと聞いているから、おそらくCとDがそうなのだろう。急いでCとDの名票を見たが、あいうえお順最後のほうの山宮の名前を探すのが難しい。前にいる生徒の頭でよく見えない。
『山宮、クラスどこだった?』
そっとスマホをいじってメッセージを送った。いつもの山宮なら登校している時間だ。だが既読がつかない。そのとき、前が一気に開けて、朔也は「ごめんね」と声をかけてから名票の下のほうが見える前へ進んだ。CとD、どっちだ。最後の五人の名前をさっと見ると、C組のほうへ山宮の名前があった。
山宮と同じクラス! 体がかあっと熱くなって、思わずガッツポーズをしたくなる。新学期早々一番重要事項だったものにチェックがつけられる。邪魔になるからとそそくさとその場を離れたが、やったやったと心の中で小躍りした。
すごい。三年間同じクラス。その確率を弾き出し、顔がにやけそうになって頬をぴたぴたと叩きながら昇降口へ向かう。スマホを取り出し、まだ既読のつかないそこへ「同じクラスだよ!」と追加のメッセージを送った。昇降口のすのこがカタカタと軽やかな音を立てて上履きに履き替え、三年生の階へ廊下を進む。同じ校舎なのに、階段でどこに向かうかというだけで空気が新鮮に感じられる。
「おはよ! クラス離れちゃったね」
「進路もあるから仕方ないか」
そんな会話をするセーラー服が側を歩いており、スマホがポケットで振動したのを感じてぱっと見た。だが、山宮からではなく、書道部三年生のグループ連絡だ。
『名票を確認したけど、五人全員違うクラスみたい。私、G』
去年クラスメイトだった中村凛子のメッセージに、それぞれが自分はどこだったというメッセージがぽこんぽこんと表示される。五人それぞれのアイコンの名前を確認し、今年もこの四人と一緒に書道部を引っ張るんだと自分を鼓舞する。
『おれ、Cだった』
『ホント、見事にバラバラ。グループ連絡、活用してこ!』
じゃあ放課後はまた書道室で。そんなメッセージで締めたとき、とうとう三年C組の室名札のある教室へたどり着いた。足を止めた上履きがリノリウムの廊下でキュッと音を立てる。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説

普通の学生だった僕に男しかいない世界は無理です。帰らせて。
かーにゅ
BL
「君は死にました」
「…はい?」
「死にました。テンプレのトラックばーんで死にました」
「…てんぷれ」
「てことで転生させます」
「どこも『てことで』じゃないと思います。…誰ですか」
BLは軽い…と思います。というかあんまりわかんないので年齢制限のどこまで攻めるか…。
学園の天使は今日も嘘を吐く
まっちゃ
BL
「僕って何で生きてるんだろ、、、?」
家族に幼い頃からずっと暴言を言われ続け自己肯定感が低くなってしまい、生きる希望も持たなくなってしまった水無瀬瑠依(みなせるい)。高校生になり、全寮制の学園に入ると生徒会の会計になったが家族に暴言を言われたのがトラウマになっており素の自分を出すのが怖くなってしまい、嘘を吐くようになる
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿です。文がおかしいところが多々あると思いますが温かい目で見てくれると嬉しいです。

告白ゲームの攻略対象にされたので面倒くさい奴になって嫌われることにした
雨宮里玖
BL
《あらすじ》
昼休みに乃木は、イケメン三人の話に聞き耳を立てていた。そこで「それぞれが最初にぶつかった奴を口説いて告白する。それで一番早く告白オッケーもらえた奴が勝ち」という告白ゲームをする話を聞いた。
その直後、乃木は三人のうちで一番のモテ男・早坂とぶつかってしまった。
その日の放課後から早坂は乃木にぐいぐい近づいてきて——。
早坂(18)モッテモテのイケメン帰国子女。勉強運動なんでもできる。物静か。
乃木(18)普通の高校三年生。
波田野(17)早坂の友人。
蓑島(17)早坂の友人。
石井(18)乃木の友人。

王道にはしたくないので
八瑠璃
BL
国中殆どの金持ちの子息のみが通う、小中高一貫の超名門マンモス校〈朱鷺学園〉
幼少の頃からそこに通い、能力を高め他を率いてきた生徒会長こと鷹官 仁。前世知識から得た何れ来るとも知れぬ転校生に、平穏な日々と将来を潰されない為に日々努力を怠らず理想の会長となるべく努めてきた仁だったが、少々やり過ぎなせいでいつの間にか大変なことになっていた_____。
これは、やりすぎちまった超絶カリスマ生徒会長とそんな彼の周囲のお話である。


婚約破棄された王子は地の果てに眠る
白井由貴
BL
婚約破棄された黒髪黒目の忌み子王子が最期の時を迎えるお話。
そして彼を取り巻く人々の想いのお話。
■□■
R5.12.17 文字数が5万字を超えそうだったので「短編」から「長編」に変更しました。
■□■
※タイトルの通り死にネタです。
※BLとして書いてますが、CP表現はほぼありません。
※ムーンライトノベルズ様にも掲載しています。

【完結】I adore you
ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。
そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。
※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)
夏目碧央
BL
兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。
ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる