どうあがいても恋でした。

タリ イズミ

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4巻【一】

1 文化祭翌日

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【一】

「あーあ、とうとう試験二週間前か」
 青空の下、横を歩く幼馴染みの今井はるかの声に折原朔也(さくや)は小さく笑った。少し暑くて長袖の白いシャツを捲る。同じ書道部員で朔也のクラスメイトである中村も人混みの中で笑みを漏らした。

「今井ちゃん、うちのクラスの落差はすごかったよ。文化祭準優勝の賞状を飾るときは笑顔で拍手をしてたのに、試験範囲発表の瞬間全員ががっくりきちゃって」

 想像したらしい今井が朗らかに笑った。ポニーテールと白い長袖のセーラー服に青いスカーフが揺れる。襟につくボブヘアの中村は少しだけ鬱陶しそうに髪を耳にかけた。三人のローファーが秋めいた日差しの下でコツコツと音を立てる。昼過ぎの時間は夕飯前の買い物をする人が多いのか、学校側の商店街は賑わっていた。

 今日は文化祭の翌日、文化祭で設営した教室の撤収日だった。内装を剥がして段ボールをたたみ、掃除をしてから机と椅子を並べる。大きなものを撤去するような作業はなかったので、二時間ほどで全てが終了した。他クラスよりも早い帰りのホームルームで担任は文化祭準優勝の賞状を持ってきて、全員で昨日の賑わいを思い出したように拍手をした。賞状を額に入れて黒板の上に飾る。朔也は皆と同じく笑顔でそれを見た。
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