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3巻【四】
3 体育祭のダンス
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三時間目、赤いジャージを着たA組からC組の三クラスが、クーラーの効いた体育館に集まった。何故かそれぞれの担任と体育教師数名が立って待っていた。床に朔也の身長よりはるかに長い木製の棒が寝かせてあり、朔也たちのクラスはその棒の後ろへ座るよう指示される。近寄ってみると、棒の端には漏斗状に広がる枠がはまっており、大量のリボンがぐるりと並べてつけられていた。それらは端から五十センチほどを残して端から丸められ、輪ゴムで留められており、絡まっていない。B組を挟む形でA組とC組が移動し、つるりとした床に全員が体育座りになって教師のほうを向いた。
「体育祭で二年生が披露する学年ダンスはメイポールだ」
A組担任の教師の言葉に皆が顔を見合わせる。朔也も初めて聞く名前だ。
「外国に古くからあるダンスで、日本でもさまざまな学校で採用されている。クラス全員が一つの棒、ポールの周りを囲んで踊り、紐を編んでいく」
朔也たちのクラスの前で棒の周りに教師たちが集まった。各担任と他の体育教師が支え、床に布を噛ませて背の高いポールをまっすぐに立たせる。すると先端からリボンがぶら下がって揺れた。色はオレンジと白。よく見ると、それらが交互に並んでいるのが分かる。脚立に乗った教師が二本だけ輪ゴムを外し、隣り合うオレンジと白の一本ずつを下へ垂らした。
「紐は一人一本。全員で紐を持ち、音楽に合わせて紐を編んでポールに巻きつけていく。折原、ちょっと手伝ってくれ」
急に名指しされ、慌てて「はい」と立ち上がる。オレンジの紐を持つようにと指示され、リボンの端を掴んだ。木製の棒は直径十センチ以上あり、床についた部分は不安定な丸い形になっている。見上げれば、三メートルはあるだろうか、はるか上からリボンがぶら下がっている印象だ。
「折原、紐がたるまない距離までポールから離れて」
「はい」
リボンを手にしたままポールから下がり、ぴんと引っ張った。かなり距離が離れ、リボンが長いことが分かる。
「この状態が基本姿勢だ。もう一人手伝ってもらおうか。水野」
副委員長が名指しされ、朔也の隣で白のリボンを持つ。同じようにぴんと張るまでポールから離れ、朔也の間に少し距離をとった。
「折原と水野、向かい合って。折原は紐を上にあげて水野の外側へ、水野は紐を下げて折原の内側へ歩いて交差してみろ。紐はたるませずに張った状態を保つんだ」
朔也は副委員長と顔を見合わせ、言われたとおりに向かい合った。交差するとき朔也がリボンをあげ、副委員長がリボンを下げて少し屈む。朔也の持つオレンジのリボンの下を、白のリボンを持った副委員長がくぐり抜けた。
「ポールの先端を見てほしい。二人が交差したことで、オレンジと白の紐が交差してるだろう。今は折原が持つ紐を上にしたから、オレンジが白の上に来ている。これが逆になったらどうだ」
朔也たちは元の位置に戻り、今度は副委員長がリボンを上にあげ、朔也がその下をくぐった。
「今度は白がオレンジの上に来ている。メイポールでは全員が紐を持ってポールの周りを移動して交差する。カラーの紐の者は時計回り、白の者が反時計回りだ。交差するときに紐を上下させることによって編み目ができる。B組全員でやってみよう」
朔也たちのクラス全員が立ち上がり、ポールの周りに出席番号順に輪を作る。先ほどまで留められていた全てのリボンが下に垂れ、偶数番がオレンジのリボンを、奇数番が白を持った。全員がリボンを持って広がると、ポールの周りに大きな円ができる。オレンジのリボンを持った朔也たちは左を向き、白を持ったメンバーが右を向く。それぞれ十六人ずつが互い違いに向き合うことになった。出席番号が後ろの女子と目が合い、笑みを交わす。
「オレンジは紐を上にして外側へ、白は紐を下にして内側へ。前に進んで目の前の人と交差」
彼女と目を合わせ、リボンを上にして外側へ、彼女は下へ引っ張り内側へ交差した。
「今度は逆だ。オレンジは紐を下にして内側へ、白は紐を上にして外側へ」
朔也はリボンを下へ引っ張り、次の女子の白いリボンの下を屈んでくぐり抜けた。すれ違いざまに「背が高くて大変そう」と言われ、「大丈夫」と笑って返す。それが繰り返され、ジグザグに動きながらリボンを上下に動かし、前にいるクラスメイトをくぐらせ、自分がくぐるのを交互に行う。再び最初と同じ彼女が目の前に来たとき、一周したんだなと気づく。
「ポールの上を見てみろ」
全員が中央のポールを見上げ、「あっ」と声をあげる。オレンジと白の二色が斜め九十度で交わり、ポールに巻きつく形でリボンが編み込まれていた。他のクラスから「なるほど」とか「すごいね」と歓声があがる。一気に華やいだ体育館内の様子に説明した教師が「分かったな」と笑い、中央でポールを支えている教師陣も笑顔になった。
「体育祭で二年生が披露する学年ダンスはメイポールだ」
A組担任の教師の言葉に皆が顔を見合わせる。朔也も初めて聞く名前だ。
「外国に古くからあるダンスで、日本でもさまざまな学校で採用されている。クラス全員が一つの棒、ポールの周りを囲んで踊り、紐を編んでいく」
朔也たちのクラスの前で棒の周りに教師たちが集まった。各担任と他の体育教師が支え、床に布を噛ませて背の高いポールをまっすぐに立たせる。すると先端からリボンがぶら下がって揺れた。色はオレンジと白。よく見ると、それらが交互に並んでいるのが分かる。脚立に乗った教師が二本だけ輪ゴムを外し、隣り合うオレンジと白の一本ずつを下へ垂らした。
「紐は一人一本。全員で紐を持ち、音楽に合わせて紐を編んでポールに巻きつけていく。折原、ちょっと手伝ってくれ」
急に名指しされ、慌てて「はい」と立ち上がる。オレンジの紐を持つようにと指示され、リボンの端を掴んだ。木製の棒は直径十センチ以上あり、床についた部分は不安定な丸い形になっている。見上げれば、三メートルはあるだろうか、はるか上からリボンがぶら下がっている印象だ。
「折原、紐がたるまない距離までポールから離れて」
「はい」
リボンを手にしたままポールから下がり、ぴんと引っ張った。かなり距離が離れ、リボンが長いことが分かる。
「この状態が基本姿勢だ。もう一人手伝ってもらおうか。水野」
副委員長が名指しされ、朔也の隣で白のリボンを持つ。同じようにぴんと張るまでポールから離れ、朔也の間に少し距離をとった。
「折原と水野、向かい合って。折原は紐を上にあげて水野の外側へ、水野は紐を下げて折原の内側へ歩いて交差してみろ。紐はたるませずに張った状態を保つんだ」
朔也は副委員長と顔を見合わせ、言われたとおりに向かい合った。交差するとき朔也がリボンをあげ、副委員長がリボンを下げて少し屈む。朔也の持つオレンジのリボンの下を、白のリボンを持った副委員長がくぐり抜けた。
「ポールの先端を見てほしい。二人が交差したことで、オレンジと白の紐が交差してるだろう。今は折原が持つ紐を上にしたから、オレンジが白の上に来ている。これが逆になったらどうだ」
朔也たちは元の位置に戻り、今度は副委員長がリボンを上にあげ、朔也がその下をくぐった。
「今度は白がオレンジの上に来ている。メイポールでは全員が紐を持ってポールの周りを移動して交差する。カラーの紐の者は時計回り、白の者が反時計回りだ。交差するときに紐を上下させることによって編み目ができる。B組全員でやってみよう」
朔也たちのクラス全員が立ち上がり、ポールの周りに出席番号順に輪を作る。先ほどまで留められていた全てのリボンが下に垂れ、偶数番がオレンジのリボンを、奇数番が白を持った。全員がリボンを持って広がると、ポールの周りに大きな円ができる。オレンジのリボンを持った朔也たちは左を向き、白を持ったメンバーが右を向く。それぞれ十六人ずつが互い違いに向き合うことになった。出席番号が後ろの女子と目が合い、笑みを交わす。
「オレンジは紐を上にして外側へ、白は紐を下にして内側へ。前に進んで目の前の人と交差」
彼女と目を合わせ、リボンを上にして外側へ、彼女は下へ引っ張り内側へ交差した。
「今度は逆だ。オレンジは紐を下にして内側へ、白は紐を上にして外側へ」
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