どうあがいても恋でした。

タリ イズミ

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2巻【三】

2行ってら

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「マジで恥ずいわ。学校と同じ声とか、気づかねえでいいのに」

 タオルをキャッチした朔也はははっと笑い、まだ皆が戻ってこないのをいいことに山宮の隣を陣取る。

「オリエンテーションでも放送をやるなんて思わなかった。立候補したの?」
「担任の先生にやるかって聞かれたから、嬉しくなってやりますって言っちまって……多分、顧問の先生が口添えしてくれて、役割を与えてくれたんじゃねえかと思ってる」
「でも、山宮の声で目が覚めるなんてすごくいい。今日も朝からかっこよかった」

 すると山宮は「恥っず」と投げつけたタオルを奪った。

「朝で発声練習ができなかったけど、学校と同じレベルに聞こえるならよかったぜ」
「ちゃんと聞こえてたよ、イケボ君」
「それ、やめ」
「おれだけ山宮の声だって気づいてるなんて、ちょっと優越感」
「恥ずかしいやつ」

 山宮の言葉にふふっと笑った。朝から気分がよかった。

 二日目のディベートとレクリエーションは思ったよりも大変ではなかった。風呂の一件で気軽に話ができる男子が増えていたし、中村がいることで女子にも話しかけやすい。他のクラスでも、去年のクラスメイトを通せば話すのは難しくなかった。ディベート自体では負けたが、相手チームとフィードバックするときは皆笑顔で話し合えた。レクリエーションもチーム戦だったが、お遊びの体育の時間といった感じだ。教師も巻き込んだ大縄飛びに皆も笑顔でわいわいと時間を過ごし、あっという間に夜の自由時間になった。

「で、これから自由時間だけど」

 体育館から部屋に戻るなり、体操部の男子が意味ありげに笑った。

「さっき女子と約束した。皆で部屋に遊びに行かねえ?」
「おお、ザ・宿泊行事!」

 拍手があがったので、朔也も一応ぱちぱちと手を叩いた。

「飲み物を持って、A三〇八に集合」
「何人くらい来んの」
「それは行かねえと分かんねえ」

 乗り気な男子たちは各々ペットボトルなどを持ったが、朔也も山宮も畳に座ったまま動かなかった。

「あれ、行かねえの?」

 怪訝そうに尋ねられ、朔也は「今日は疲れちゃった」と笑い、山宮は「興味ねえ」と返した。

「じゃあ行ってくるわ」

 楽しそうに出て行く五人を「じゃあね」「行ってら」と見送る。
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