どうあがいても恋でした。

タリ イズミ

文字の大きさ
上 下
62 / 145
2巻【二】

3 肉じゃなくて草でも食ってろ

しおりを挟む
 白糸の滝に着くと、朔也のクラスはまだ集まっていなかった。滝の側なだけあって、ミストのように水が飛んでいる空間だ。パーカーを脱がなくてよかったな。そんなふうに思いながらA組から集合写真を撮っているのを眺めていると、肩をちょんちょんとつつかれる。

「去年と同じクラスメイト発見」

 副委員長が笑顔でそう言って、側にいた山宮の腕を引っ張った。

「せっかくだから三人で撮ろうぜ」

 山宮がなにか言いかけたが、その前に彼が掲げたスマホに三人で収まる。見せてもらうと、きちんと白糸の滝が背景に入っていた。

「それ、共有させて」
「オーケー」

 朔也の台詞に副委員長がススッとスマホを操作した。すぐにスマホが振動して画像が転送されてくる。副委員長がにかっと笑った。

「私服でこういうところに来る学校、あんまりないよな。ラッキーって感じ」
「スマホを預ける学校もあるよね」

 そこで画像をまじまじと見つめた山宮が「俺、小さくね?」と呟いた。平均的な身長の副委員長と朔也に挟まれているため、確かにそう見える。副委員長と同時に噴き出したら、山宮がむっとした顔で二人を睨んできた。

「まあまあ、山宮はそれくらいの身長がちょうどいいんだよ」
「身体測定でいくつだったの」

 朔也の言葉に山宮は去年と同じ「一六五」と答え、ぷいと顔を逸らした。その横顔に目元の泣きぼくろを見つける。朔也は学校で喋っていた今井との様子を思い出して首を傾げた。

「今井より高いからいいじゃん?」
「なにゆえの委員長基準よ。女子と比べる時点でおかしくね」
「あたしがなあに?」

 声を聞きつけたらしい今井がひょこっとやって来た。

「お、去年のクラスメイトが一人増えた。これはスマホの出番」

 なにも知らない副委員長がそう言って、スマホをタップする。四人が収まる画像を確認すると、今井が弾ける笑顔でピースをしていた。女子が入ると一気に画像が明るくなる。

「ほらな。今井が入ると山宮も背が高くなるぞ」

 副委員長の言葉に今井が「あたしってそういう要員なの?」と眉尻を下げる。副委員長が肩をすくめた。

「山宮が小さいって落ち込んだからさ」
「山宮君、落ち込むような身長? 普通じゃない? 朔ちゃんが伸びすぎただけだよ」
「今井、伸びすぎたとか言わないでよ」
「お前らみてえな背が高い部類の言い分は聞かねえ。肉じゃなく草でも食ってろ」
「それ、あたしはお肉でいいんだよね?」
「委員長も草だわ。俺を抜かすなよ」
「あたし、もう身長は止まってるよ。お肉でお願いしたいなあ」

 山宮と今井のやり取りはごく自然で、ぽんぽんと会話が成り立っている。朔也も気づいたら笑って相槌を打っていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

普通の学生だった僕に男しかいない世界は無理です。帰らせて。

かーにゅ
BL
「君は死にました」 「…はい?」 「死にました。テンプレのトラックばーんで死にました」 「…てんぷれ」 「てことで転生させます」 「どこも『てことで』じゃないと思います。…誰ですか」 BLは軽い…と思います。というかあんまりわかんないので年齢制限のどこまで攻めるか…。

学園の天使は今日も嘘を吐く

まっちゃ
BL
「僕って何で生きてるんだろ、、、?」 家族に幼い頃からずっと暴言を言われ続け自己肯定感が低くなってしまい、生きる希望も持たなくなってしまった水無瀬瑠依(みなせるい)。高校生になり、全寮制の学園に入ると生徒会の会計になったが家族に暴言を言われたのがトラウマになっており素の自分を出すのが怖くなってしまい、嘘を吐くようになる ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初投稿です。文がおかしいところが多々あると思いますが温かい目で見てくれると嬉しいです。

告白ゲームの攻略対象にされたので面倒くさい奴になって嫌われることにした

雨宮里玖
BL
《あらすじ》 昼休みに乃木は、イケメン三人の話に聞き耳を立てていた。そこで「それぞれが最初にぶつかった奴を口説いて告白する。それで一番早く告白オッケーもらえた奴が勝ち」という告白ゲームをする話を聞いた。 その直後、乃木は三人のうちで一番のモテ男・早坂とぶつかってしまった。 その日の放課後から早坂は乃木にぐいぐい近づいてきて——。 早坂(18)モッテモテのイケメン帰国子女。勉強運動なんでもできる。物静か。 乃木(18)普通の高校三年生。 波田野(17)早坂の友人。 蓑島(17)早坂の友人。 石井(18)乃木の友人。

王道にはしたくないので

八瑠璃
BL
国中殆どの金持ちの子息のみが通う、小中高一貫の超名門マンモス校〈朱鷺学園〉 幼少の頃からそこに通い、能力を高め他を率いてきた生徒会長こと鷹官 仁。前世知識から得た何れ来るとも知れぬ転校生に、平穏な日々と将来を潰されない為に日々努力を怠らず理想の会長となるべく努めてきた仁だったが、少々やり過ぎなせいでいつの間にか大変なことになっていた_____。 これは、やりすぎちまった超絶カリスマ生徒会長とそんな彼の周囲のお話である。

元執着ヤンデレ夫だったので警戒しています。

くまだった
BL
 新入生の歓迎会で壇上に立つアーサー アグレンを見た時に、記憶がざっと戻った。  金髪金目のこの才色兼備の男はおれの元執着ヤンデレ夫だ。絶対この男とは関わらない!とおれは決めた。 貴族金髪金目 元執着ヤンデレ夫 先輩攻め→→→茶髪黒目童顔平凡受け ムーンさんで先行投稿してます。 感想頂けたら嬉しいです!

忘れ物

うりぼう
BL
記憶喪失もの 事故で記憶を失った真樹。 恋人である律は一番傍にいながらも自分が恋人だと言い出せない。 そんな中、真樹が昔から好きだった女性と付き合い始め…… というお話です。

婚約破棄された王子は地の果てに眠る

白井由貴
BL
婚約破棄された黒髪黒目の忌み子王子が最期の時を迎えるお話。 そして彼を取り巻く人々の想いのお話。 ■□■ R5.12.17 文字数が5万字を超えそうだったので「短編」から「長編」に変更しました。 ■□■ ※タイトルの通り死にネタです。 ※BLとして書いてますが、CP表現はほぼありません。 ※ムーンライトノベルズ様にも掲載しています。

【完結】I adore you

ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。 そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。 ※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。

処理中です...