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2巻【二】
3 肉じゃなくて草でも食ってろ
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白糸の滝に着くと、朔也のクラスはまだ集まっていなかった。滝の側なだけあって、ミストのように水が飛んでいる空間だ。パーカーを脱がなくてよかったな。そんなふうに思いながらA組から集合写真を撮っているのを眺めていると、肩をちょんちょんとつつかれる。
「去年と同じクラスメイト発見」
副委員長が笑顔でそう言って、側にいた山宮の腕を引っ張った。
「せっかくだから三人で撮ろうぜ」
山宮がなにか言いかけたが、その前に彼が掲げたスマホに三人で収まる。見せてもらうと、きちんと白糸の滝が背景に入っていた。
「それ、共有させて」
「オーケー」
朔也の台詞に副委員長がススッとスマホを操作した。すぐにスマホが振動して画像が転送されてくる。副委員長がにかっと笑った。
「私服でこういうところに来る学校、あんまりないよな。ラッキーって感じ」
「スマホを預ける学校もあるよね」
そこで画像をまじまじと見つめた山宮が「俺、小さくね?」と呟いた。平均的な身長の副委員長と朔也に挟まれているため、確かにそう見える。副委員長と同時に噴き出したら、山宮がむっとした顔で二人を睨んできた。
「まあまあ、山宮はそれくらいの身長がちょうどいいんだよ」
「身体測定でいくつだったの」
朔也の言葉に山宮は去年と同じ「一六五」と答え、ぷいと顔を逸らした。その横顔に目元の泣きぼくろを見つける。朔也は学校で喋っていた今井との様子を思い出して首を傾げた。
「今井より高いからいいじゃん?」
「なにゆえの委員長基準よ。女子と比べる時点でおかしくね」
「あたしがなあに?」
声を聞きつけたらしい今井がひょこっとやって来た。
「お、去年のクラスメイトが一人増えた。これはスマホの出番」
なにも知らない副委員長がそう言って、スマホをタップする。四人が収まる画像を確認すると、今井が弾ける笑顔でピースをしていた。女子が入ると一気に画像が明るくなる。
「ほらな。今井が入ると山宮も背が高くなるぞ」
副委員長の言葉に今井が「あたしってそういう要員なの?」と眉尻を下げる。副委員長が肩をすくめた。
「山宮が小さいって落ち込んだからさ」
「山宮君、落ち込むような身長? 普通じゃない? 朔ちゃんが伸びすぎただけだよ」
「今井、伸びすぎたとか言わないでよ」
「お前らみてえな背が高い部類の言い分は聞かねえ。肉じゃなく草でも食ってろ」
「それ、あたしはお肉でいいんだよね?」
「委員長も草だわ。俺を抜かすなよ」
「あたし、もう身長は止まってるよ。お肉でお願いしたいなあ」
山宮と今井のやり取りはごく自然で、ぽんぽんと会話が成り立っている。朔也も気づいたら笑って相槌を打っていた。
「去年と同じクラスメイト発見」
副委員長が笑顔でそう言って、側にいた山宮の腕を引っ張った。
「せっかくだから三人で撮ろうぜ」
山宮がなにか言いかけたが、その前に彼が掲げたスマホに三人で収まる。見せてもらうと、きちんと白糸の滝が背景に入っていた。
「それ、共有させて」
「オーケー」
朔也の台詞に副委員長がススッとスマホを操作した。すぐにスマホが振動して画像が転送されてくる。副委員長がにかっと笑った。
「私服でこういうところに来る学校、あんまりないよな。ラッキーって感じ」
「スマホを預ける学校もあるよね」
そこで画像をまじまじと見つめた山宮が「俺、小さくね?」と呟いた。平均的な身長の副委員長と朔也に挟まれているため、確かにそう見える。副委員長と同時に噴き出したら、山宮がむっとした顔で二人を睨んできた。
「まあまあ、山宮はそれくらいの身長がちょうどいいんだよ」
「身体測定でいくつだったの」
朔也の言葉に山宮は去年と同じ「一六五」と答え、ぷいと顔を逸らした。その横顔に目元の泣きぼくろを見つける。朔也は学校で喋っていた今井との様子を思い出して首を傾げた。
「今井より高いからいいじゃん?」
「なにゆえの委員長基準よ。女子と比べる時点でおかしくね」
「あたしがなあに?」
声を聞きつけたらしい今井がひょこっとやって来た。
「お、去年のクラスメイトが一人増えた。これはスマホの出番」
なにも知らない副委員長がそう言って、スマホをタップする。四人が収まる画像を確認すると、今井が弾ける笑顔でピースをしていた。女子が入ると一気に画像が明るくなる。
「ほらな。今井が入ると山宮も背が高くなるぞ」
副委員長の言葉に今井が「あたしってそういう要員なの?」と眉尻を下げる。副委員長が肩をすくめた。
「山宮が小さいって落ち込んだからさ」
「山宮君、落ち込むような身長? 普通じゃない? 朔ちゃんが伸びすぎただけだよ」
「今井、伸びすぎたとか言わないでよ」
「お前らみてえな背が高い部類の言い分は聞かねえ。肉じゃなく草でも食ってろ」
「それ、あたしはお肉でいいんだよね?」
「委員長も草だわ。俺を抜かすなよ」
「あたし、もう身長は止まってるよ。お肉でお願いしたいなあ」
山宮と今井のやり取りはごく自然で、ぽんぽんと会話が成り立っている。朔也も気づいたら笑って相槌を打っていた。
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