どうあがいても恋でした。

タリ イズミ

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2巻【一】

2春休み

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 新学年が始まり、朔也たちは二年生に進級した。同じ書道部で幼馴染みの今井はるかは別のクラスになったが、朔也と山宮は今年も同じクラスになった。掲示板で山宮の名前を発見したとき、朔也より早く登校していた山宮もその場にいた。朔也が「やった!」とメッセージを送ると「恥っず」とだけ返ってきたが、白いマスク越しの目元が笑っていたから、お互いに喜んだと思う。

 昨日ロングホームルームを終え、今日は朝から新入生歓迎会。人数がほしい部活にとっては新部員獲得のチャンスだ。

 小学校にあがる前から書道に親しんできた朔也は、これまでずっと書道部だった。だが、一見地味に思える部活だからか、「書道部に入っている」と言うと、「背が高くて運動ができるのにどうして?」と首を傾げられる。

 しかし、この高校の書道部はひと味違う。ダンス等を取り入れた複数人で作品を書く書道パフォーマンスを練習し、パフォーマンス甲子園での優勝を目指して活動している半運動部だ。だから、今日も書道部は書道パフォーマンスを披露した。新歓は三年生のみで行うので朔也は参加しなかったが、新入生には新鮮な驚きを与えられる演技を披露できたと思う。

 そうやって多くの部活が校庭でさまざまな発表をする中、放送部の山宮は「次はダンス部の演技です」等のアナウンスを行っていた。放送部は一人しかいないため、数分で自分の番が終わる他の部活とは違う。一人で何時間もぶっ続けで活動していたはずだ。

 そんな楽しくも忙しい日は午前で終了。パフォーマンスを終えた書道部は明日からの活動となり、朔也は昼ご飯を食べるとすぐに放送室に向かった。放送室内にはぐったりと椅子に突っ伏している山宮がいて、朔也が「これ」と差し入れの水のペットボトルを渡すと、一気に半分ほど飲み干した。

 思いが通じ合ってから、春休みも二人は放送室で会っていた。日の長くなった夕方、部活を終えた朔也が扉をノックして「よ」と開けると、宿題をしている山宮が「おう」と言って出迎える。扉を閉めると全てがシャットアウトされて、学校生活から切り取られた空間は独特の空気を漂わせる。下校時刻まで宿題をこなしつつお喋りをして、慣れないキスをすると山宮の口からのど飴の薄荷のにおいがした。

 そうやって山宮は休み期間中もコツコツ宿題に取り組んでいたのだが、不得手な勉強が彼の前に立ちはだかる。朔也の予想通り、授業開始の明日が迫っても終えられないでいた。そのため、今日はラストスパートをかけなければならない日だったのだが。
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