1 / 2
矛盾
しおりを挟む「ううん……、いい」
まさかこの世に、こんな行為をみずから望んで人前で平然とできる女性がいるということが信じられない。
そんなアベルの想いなど露ともかえりみるわけもなく、アイーシャは恍惚とした表情を顔に浮かべ、腰をゆっくりと動かしはじめる。
化粧をほどこしているために、身体より色が白く見える顔が、愉悦に赤く染まっている。
「ああ……ん。ああ、いいわぁ……」
アベルにはひたすら驚倒ものの光景だった。己の取らされている苦しく恥ずかしい姿勢もわすれて、ただただアイーシャの姿を凝視していた。
サライアもアーミナもエリスも驚きもせず平然と見ていることは、彼らはすでに見慣れているのだろう。
彼女の動きに合わせて手足の銀輪も揺れる。アベルのものとおなじく檜皮色のサンダルが、ひどく猥褻に見える。あのように浅ましい姿を自分もつい先ほど晒したのかと思うと、アイーシャの淫猥なすがたに自分自身がかさなり、アベルはいたたまれない。
目を逸らしたい。だが逸らせない。
「ん、んんん、ああ、ああ……陛下ぁ」
耳をおおいたい。だが、出来ない。
「ああっ、ああっ、ああっ!」
アベルの前で、アイーシャという妖艶な毒花が、開花しはじめている。
アベルは恐怖すら感じながら、つい先ほどまでは、まがりなりにも人の形をしていた生き物が、なにか別の生物に変成していく様を魅入られたように見つめつづけた。
(私も……あんな風になっていたのだろうか?)
強制されたとはいえ、不様な姿で死ぬほどの恥辱をあたえられた果てに、快を得てしまった。その様をすべて見られていたのだ。
自分もまた、今のアイーシャを見ている自分とおなじように、見る者からそう思われていたのかもしれないと思うと、全身から火が吹くほどの羞恥を感じる。
「うう……、いい、いい、いいわぁ!」
と言いつつ、アイーシャの黒い眉が歪んでいるのは、激しく極めた快楽には、ときに辛さも含んでいるのだろうか、とアベルはぼんやりと考えた。
「ああ! はぁ……っ」
天井に向けて放った彼女の吐息は、桃色に染まっているようだ。
女性と本物の接吻すらまだしたことのないアベルには、ひたすら異様な見物で、アイーシャのみならず、グラリオンというこの国が、この国の宮廷が、さらに後宮というものがつくづくおぞましく思えてきた。いや、女という生き物がそのものがおぞましく思えてきた。この世のすべての女性というものは、こんな魔性を身の内に持っているものなのか。そう思うと空恐ろしくさえなってくる。
まさかこの世に、こんな行為をみずから望んで人前で平然とできる女性がいるということが信じられない。
そんなアベルの想いなど露ともかえりみるわけもなく、アイーシャは恍惚とした表情を顔に浮かべ、腰をゆっくりと動かしはじめる。
化粧をほどこしているために、身体より色が白く見える顔が、愉悦に赤く染まっている。
「ああ……ん。ああ、いいわぁ……」
アベルにはひたすら驚倒ものの光景だった。己の取らされている苦しく恥ずかしい姿勢もわすれて、ただただアイーシャの姿を凝視していた。
サライアもアーミナもエリスも驚きもせず平然と見ていることは、彼らはすでに見慣れているのだろう。
彼女の動きに合わせて手足の銀輪も揺れる。アベルのものとおなじく檜皮色のサンダルが、ひどく猥褻に見える。あのように浅ましい姿を自分もつい先ほど晒したのかと思うと、アイーシャの淫猥なすがたに自分自身がかさなり、アベルはいたたまれない。
目を逸らしたい。だが逸らせない。
「ん、んんん、ああ、ああ……陛下ぁ」
耳をおおいたい。だが、出来ない。
「ああっ、ああっ、ああっ!」
アベルの前で、アイーシャという妖艶な毒花が、開花しはじめている。
アベルは恐怖すら感じながら、つい先ほどまでは、まがりなりにも人の形をしていた生き物が、なにか別の生物に変成していく様を魅入られたように見つめつづけた。
(私も……あんな風になっていたのだろうか?)
強制されたとはいえ、不様な姿で死ぬほどの恥辱をあたえられた果てに、快を得てしまった。その様をすべて見られていたのだ。
自分もまた、今のアイーシャを見ている自分とおなじように、見る者からそう思われていたのかもしれないと思うと、全身から火が吹くほどの羞恥を感じる。
「うう……、いい、いい、いいわぁ!」
と言いつつ、アイーシャの黒い眉が歪んでいるのは、激しく極めた快楽には、ときに辛さも含んでいるのだろうか、とアベルはぼんやりと考えた。
「ああ! はぁ……っ」
天井に向けて放った彼女の吐息は、桃色に染まっているようだ。
女性と本物の接吻すらまだしたことのないアベルには、ひたすら異様な見物で、アイーシャのみならず、グラリオンというこの国が、この国の宮廷が、さらに後宮というものがつくづくおぞましく思えてきた。いや、女という生き物がそのものがおぞましく思えてきた。この世のすべての女性というものは、こんな魔性を身の内に持っているものなのか。そう思うと空恐ろしくさえなってくる。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
おばあちゃんの迎え火
わいんだーずさかもと
大衆娯楽
いつも楽しみにしていたお盆休み。
田舎に帰ると優しく迎えてくれるおばあちゃんが大好きだった。
でも、おばあちゃんは去年死んじゃったんだ。
おばあちゃんはもういない。
そう思っていた。。。

もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
HSPの独り言
へんちゃん
大衆娯楽
HSP(Highly Sensitive Person =繊細さん)だと気づいたのが1年前。
37年間生きてきて、ようやく自分が
「何が違うのかわからない」とか
「人と同じ様にできない苦しさ」とか
そういうものが見えてきた今日この頃。
普通だと気づかないような
日頃の「なんだかなー・・・」を、
刺激的にデフォルメして書いてみよう。
そんな内容です。
本当にあったかどうか?は、ご想像にお任せします。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
窓野枠 短編傑作集 1
窓野枠
大衆娯楽
日常、何処にでもありそうな、なさそうな、そんなショートショートを書き綴りました。窓野枠 オリジナル作品となります。「クスッ」と笑える作風に仕上げているつもりです。この本の作品20編をお読みになりましたら、次巻も、閲覧のほど、よろしくお願いいたします。

なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。
ご都合主義のハッピーエンドのSSです。
でも周りは全くハッピーじゃないです。
小説家になろう様でも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる