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ぬりかべ
しおりを挟むぬりかべ
漢が大通りを行こうとしていた。
しかし、そこには大きな壁「ぬりかべ」が立ちはだかっていた。
「おい、そこをどけよ。邪魔なんだよ、キミ」
漢はいきりたったが、ぬりかべはびくともしない。
「ボクは、大通りを向こうに抜けたいんだ。人の邪魔をするなんて、全くキミは妖怪だな」
漢は、ぬりかべを説得しようとするが、ぬりかべには通じない。
「分かった。じゃあ、悪いけど力づくて行かせてもらうよ」
漢は、ぬりかべをよじ登ろうとするのだが、3メートルは有にある上に、コンクリートのように分厚く表面がつるつる滑るので、とてもよじ登れない。
「なんてこった。これでは、ワタシだけじゃなく、皆が学校や職場に遅刻するじゃないか...そ、そうだ。キミが消えてしまえばいいんだ」
漢は、近くの廃材置き場に捨ててあったツルハシを持ってくると、ぬりかべに突き立てた。
ガイーン!
大音響とともに漢の手が痺れた。
(ワタシを壊そうとしても無駄だ。私は、あちこちにいるから)
ぬりかべは、直接漢の脳内に喋りかけてきた。
漢が、周囲を見回すと、なんと辻々にこのぬりかべが立っているではないか。
(ワタシを壊しても修理する奴等には困らない)
漢が良く見ると、ぬりかべを漆喰の様なもので修理している腰巾着が相撲の付き人のように寄り添っている。
「キミは、いつからここに突っ立っているんだ?いつからだ?」
漢がいきりたって詰問した。
(人類の起源から...)
漢は呆れ果て、元来た路を引き返した。
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