14 / 40
クォーツバード
物と命
しおりを挟む
光属性は最も神に愛された属性だと言う。絶滅したはずのクォーツバードと出会い友だちになったことからも分かるように、直感に優れるだけじゃなく引きが強い。つまり強運だ。
魔法アイテムに欠かせない素材としてクォーツは高値で売れる。つまり落ちていればみんな拾うのだから、目に見えて落ちていることは少ない。
あったとしても人目を逃れるような小さな塊だ。しかしカイルは人が見落とした、そこそこの大きさのクォーツを発見してくれた。
今日も家事や教会の仕事の手伝いの合間を縫って、カイルとクォーツを探しに来た。
もうクォーツに溜めるほどの魔力は無い。しかしクォーツは、それ自体が高値で売れる。
お金があれば元の生活に戻っても、前ほど無理せずに済む。カイルにどうやって別れを納得させるかは未定だが、お金はあるに越したことが無いので可能な限り集めていた。
しかしクォーツを探して森を歩く途中。カイルがふと誰かに呼ばれたように顔を上げて、辺りを見渡した。
「カイル? どうしたの?」
「ピィが呼んでいる気がする」
遠くを見るような眼差しで、森の一点に目を向けると
「行かなくちゃ!」
突然走り出したカイルを、私も慌てて追いかける。
私たちの体力差からして、本来ならあっという間に置いて行かれただろうが、幸い本格的に走り出す前に
「ピィ……」
弱弱しい鳴き声をあげながら、ピィがよれよれと飛んで来た。
カイルはピィを両手で受け止めると
「怪我している。誰にやられたの?」
その問いに答えるように、ピィが飛んで来た方向から
「おい。その鳥を寄越せ。その鳥は俺たちのものだ」
現われたのは18歳くらいの傲慢そうな少年たちだった。都会的な服装から、すぐにこの辺りの人間では無いことが分かった。
カイルは謎の4人組に
「お兄さんたちは誰!? なんでピィを傷つけたの!?」
「ピィ? そいつはクォーツバードだ。愛玩用じゃなく、魔法アイテムのための素材だ」
クォーツバードはとっくに絶滅したはずの種なので、一般の人はまず知らない。そんなクォーツバードを知る彼らは、魔法学校の生徒だそうだ。
エリートを育てる魔法学校は都市部にある。
その魔法学校の生徒が、なぜこんな辺鄙な村に居るかと言うと、リーダー格の少年がここら一帯の領主の息子らしい。
その縁で去年、この森で魔法の練習をしていた彼は偶然ピィを見かけた。
その時はクォーツバードだと知らなかったようだが、『生きる宝石』とも呼ばれる彼らは人の所有欲を刺激する姿をしている。
だから領主の息子もその希少性を知らずとも欲しいと思い、去年もこの子を攻撃したようだ。
しかしその時は準備不足ゆえに逃げられ、火の魔法により負傷したピィはカイルに助けられた。
ピィを逃がした彼は、学校の友だちに話して希少さを知り、帰省ついでに本格的に捕獲しに来たそうだ。
カイルはピィを両手で包むように庇いながら
「お金持ちならこんな小さな子を殺さなくても、魔法の装備でもアイテムでもいくらでも買えるでしょう。なんでピィを殺そうとするの?」
カイルは知らないことだが、クォーツバードの価値は3億から10億だ。それだけ高価なら、貴族が動いても不思議は無いが
「コイツの好きな女を射止めるためさ」
彼らの回答に、私はポカンとした。しかし彼らにとっては、とても素晴らしい計画らしく
「彼女は学園でもいちばんの美人で、しかも名家の娘だ。金を出せば買える在り来たりな贈りものはもらい慣れている」
「そこで伝説のクォーツバードの出番だ」
「今から100年ほど前。貴族は殺して空にしたクォーツバードに自分の魔力を込めて意中の相手に贈ったそうだ」
その逸話なら私も知っている。当時ただでさえ激減していたクォーツバードを、絶滅に追いやった最後の一因。
「小鳥の形をした透明な結晶の中で、愛する者の魔力の光が揺らめく。まさに心を込めた贈りものってヤツだ」
「どうだ? ロマンチックだろ? これなら必ず彼女も気に入る。だから俺にはその鳥が必要なんだ」
彼らは得意げに笑いながら言った。女の気を引くために狩られる側の気持ちなど、まるで考えもせずに。
彼らの素敵な思い付きに、カイルは敵意の表情で
「殺した動物を部屋に飾ることがロマンチック? そんなのロマンチックどころか悪趣味だよ。その人だって、きっと喜ばないよ」
私もそう思うが残念ながら
「お前はガキだから、そう思うんだよ。女に限らず人間は希少で得難いものが好きなんだ。とっくに絶滅したはずの鳥を自分のものにできたら誰だって喜ぶさ」
彼らの言うとおり、希少な小鳥をもらったら喜ぶ者のほうが多いだろう。だからこそクォーツバードは乱獲されたのだから。
「だいたいこの森はうちの領地だ。うちの領地にあるものは、うちの一族のものだ。人の家のものに勝手に名前を付けて、領主の一族から宝を奪おうとするお前のほうが悪なんだよ!」
厳しく責め立てられてカイルは怯んだ。いくら強くても、カイルはただの村人だ。領主の息子に逆らえば、どんな罰を受けるか分からない。
魔法アイテムに欠かせない素材としてクォーツは高値で売れる。つまり落ちていればみんな拾うのだから、目に見えて落ちていることは少ない。
あったとしても人目を逃れるような小さな塊だ。しかしカイルは人が見落とした、そこそこの大きさのクォーツを発見してくれた。
今日も家事や教会の仕事の手伝いの合間を縫って、カイルとクォーツを探しに来た。
もうクォーツに溜めるほどの魔力は無い。しかしクォーツは、それ自体が高値で売れる。
お金があれば元の生活に戻っても、前ほど無理せずに済む。カイルにどうやって別れを納得させるかは未定だが、お金はあるに越したことが無いので可能な限り集めていた。
しかしクォーツを探して森を歩く途中。カイルがふと誰かに呼ばれたように顔を上げて、辺りを見渡した。
「カイル? どうしたの?」
「ピィが呼んでいる気がする」
遠くを見るような眼差しで、森の一点に目を向けると
「行かなくちゃ!」
突然走り出したカイルを、私も慌てて追いかける。
私たちの体力差からして、本来ならあっという間に置いて行かれただろうが、幸い本格的に走り出す前に
「ピィ……」
弱弱しい鳴き声をあげながら、ピィがよれよれと飛んで来た。
カイルはピィを両手で受け止めると
「怪我している。誰にやられたの?」
その問いに答えるように、ピィが飛んで来た方向から
「おい。その鳥を寄越せ。その鳥は俺たちのものだ」
現われたのは18歳くらいの傲慢そうな少年たちだった。都会的な服装から、すぐにこの辺りの人間では無いことが分かった。
カイルは謎の4人組に
「お兄さんたちは誰!? なんでピィを傷つけたの!?」
「ピィ? そいつはクォーツバードだ。愛玩用じゃなく、魔法アイテムのための素材だ」
クォーツバードはとっくに絶滅したはずの種なので、一般の人はまず知らない。そんなクォーツバードを知る彼らは、魔法学校の生徒だそうだ。
エリートを育てる魔法学校は都市部にある。
その魔法学校の生徒が、なぜこんな辺鄙な村に居るかと言うと、リーダー格の少年がここら一帯の領主の息子らしい。
その縁で去年、この森で魔法の練習をしていた彼は偶然ピィを見かけた。
その時はクォーツバードだと知らなかったようだが、『生きる宝石』とも呼ばれる彼らは人の所有欲を刺激する姿をしている。
だから領主の息子もその希少性を知らずとも欲しいと思い、去年もこの子を攻撃したようだ。
しかしその時は準備不足ゆえに逃げられ、火の魔法により負傷したピィはカイルに助けられた。
ピィを逃がした彼は、学校の友だちに話して希少さを知り、帰省ついでに本格的に捕獲しに来たそうだ。
カイルはピィを両手で包むように庇いながら
「お金持ちならこんな小さな子を殺さなくても、魔法の装備でもアイテムでもいくらでも買えるでしょう。なんでピィを殺そうとするの?」
カイルは知らないことだが、クォーツバードの価値は3億から10億だ。それだけ高価なら、貴族が動いても不思議は無いが
「コイツの好きな女を射止めるためさ」
彼らの回答に、私はポカンとした。しかし彼らにとっては、とても素晴らしい計画らしく
「彼女は学園でもいちばんの美人で、しかも名家の娘だ。金を出せば買える在り来たりな贈りものはもらい慣れている」
「そこで伝説のクォーツバードの出番だ」
「今から100年ほど前。貴族は殺して空にしたクォーツバードに自分の魔力を込めて意中の相手に贈ったそうだ」
その逸話なら私も知っている。当時ただでさえ激減していたクォーツバードを、絶滅に追いやった最後の一因。
「小鳥の形をした透明な結晶の中で、愛する者の魔力の光が揺らめく。まさに心を込めた贈りものってヤツだ」
「どうだ? ロマンチックだろ? これなら必ず彼女も気に入る。だから俺にはその鳥が必要なんだ」
彼らは得意げに笑いながら言った。女の気を引くために狩られる側の気持ちなど、まるで考えもせずに。
彼らの素敵な思い付きに、カイルは敵意の表情で
「殺した動物を部屋に飾ることがロマンチック? そんなのロマンチックどころか悪趣味だよ。その人だって、きっと喜ばないよ」
私もそう思うが残念ながら
「お前はガキだから、そう思うんだよ。女に限らず人間は希少で得難いものが好きなんだ。とっくに絶滅したはずの鳥を自分のものにできたら誰だって喜ぶさ」
彼らの言うとおり、希少な小鳥をもらったら喜ぶ者のほうが多いだろう。だからこそクォーツバードは乱獲されたのだから。
「だいたいこの森はうちの領地だ。うちの領地にあるものは、うちの一族のものだ。人の家のものに勝手に名前を付けて、領主の一族から宝を奪おうとするお前のほうが悪なんだよ!」
厳しく責め立てられてカイルは怯んだ。いくら強くても、カイルはただの村人だ。領主の息子に逆らえば、どんな罰を受けるか分からない。
0
お気に入りに追加
95
あなたにおすすめの小説
可愛すぎてつらい
羽鳥むぅ
恋愛
無表情で無口な「氷伯爵」と呼ばれているフレッドに嫁いできたチェルシーは彼との関係を諦めている。
初めは仲良くできるよう努めていたが、素っ気ない態度に諦めたのだ。それからは特に不満も楽しみもない淡々とした日々を過ごす。
初恋も知らないチェルシーはいつか誰かと恋愛したい。それは相手はフレッドでなくても構わない。どうせ彼もチェルシーのことなんてなんとも思っていないのだから。
しかしある日、拾ったメモを見て彼の新しい一面を知りたくなってしまう。
***
なんちゃって西洋風です。実際の西洋の時代背景や生活様式とは異なることがあります。ご容赦ください。
ムーンさんでも同じものを投稿しています。
黒の神官と夜のお世話役
苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
地味女で喪女でもよく濡れる。~俺様海運王に開発されました~
あこや(亜胡夜カイ)
恋愛
新米学芸員の工藤貴奈(くどうあてな)は、自他ともに認める地味女で喪女だが、素敵な思い出がある。卒業旅行で訪れたギリシャで出会った美麗な男とのワンナイトラブだ。文字通り「ワンナイト」のつもりだったのに、なぜか貴奈に執着した男は日本へやってきた。貴奈が所属する博物館を含むグループ企業を丸ごと買収、CEOとして乗り込んできたのだ。「お前は俺が開発する」と宣言して、貴奈を学芸員兼秘書として側に置くという。彼氏いない歴=年齢、好きな相手は壁画の住人、「だったはず」の貴奈は、昼も夜も彼の執着に翻弄され、やがて体が応えるように……
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる