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急速に過保護になる子どもと完全拒絶お姉さん
好意は徹底的に否定するタイプ
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教会の清掃を手伝った後。私は神父様の家に戻り、台所で昼食の準備をしていた。
今日はまだカイル君に会っていないけど、近日中にここから去ることを伝えよう。
そんなことを考えながら、シチューを煮込んでいると
「お、お姉さん。おはよう」
今朝はいつもより早く起きて、どこかに行っていたカイル君が、やや緊張した様子で声をかけて来た。
昨晩の行為の名残か、彼は少しもじもじしていたが
「あれ? お姉さん、今日はすごく綺麗だね?」
私の変化に気付いて首を傾げると
「お姉さんは前から可愛かったけど、なんで今日はこんなに綺麗に見えるんだろう?」
ちなみに私は基本的に、墓場とカラスと黒衣が似合う魔女的な容姿をしている。
髪も目も漆黒で、肌は血が通っていないかのように青白い。今は体調がいいので肌や髪に潤いがあるものの、以前はパサパサだった。
この子は私の何に可愛さを見出したのだろうと疑問を抱きつつ、外見の変化は自分の体質に触れることなので黙っていた。
するとカイル君はプシューッと赤くなって
「……俺、やっぱりお姉さんに恋しちゃったのかな?」
「どうして、そんな結論に至ったの?」
昨日の勃起=神様の罰(または病気)説といい、予想外の発想を連発するカイル君に瞠目すると
「だって前に村の人が、恋をすると相手が輝いて見えるって言っていたから。恋をしたから、お姉さんがキラキラして見えるのかなって」
「いや、今日は珍しくコンディションがいいだけだから。君の精神状態とは無関係だよ」
冷静にツッコむも、カイル君は熱っぽい目で私を見上げて
「でも俺、いつもお姉さんが気になるし、見ていると胸がきゅうってなるんだ……」
彼はすっかり性欲と恋情を混同しているようだ。無駄に熱を上げるカイル君を、私は冷ややかに見返して
「気になるのは私が余所者で、君が優しいからだよ。胸がきゅうってなるのは、昨日の1件を引きずっているだけ」
「お姉さんが特別だから、きゅうってなるんじゃないの?」
「違うよ。普通こんな齢の離れた女を好きにはならないから、一時的におかしくなっているだけだよ」
素っ気なく好意を否定すると、カイル君は悲しそうに瞳を揺らした。
でも彼の好意は明らかに、同情と性欲が合わさったものだ。じゃなきゃ、どうしてこんな女を好きになる。
私はカイル君に特別な好意は無くとも感謝はしている。だから私を好きだなんて誤解して、心や時間を浪費して欲しくない。
「それより今日は、ずっと姿が見えなかったけど、どこに行っていたの?」
「あっ、そうだ。これ。お姉さんにあげたくて取りに行っていたんだ」
カイル君が差し出したのは
「これ、クォーツだよね? どこで手に入れたの?」
タイムリーなプレゼントに驚く。クォーツは大きく強固で透明度の高いものほど、より多くの魔力を溜められる。
これは大きさ・強度・透明度ともにCランクほどだったが、十分アイテムの素材になるレベルだ。
子どもが簡単に手に入れられるものではないので出所を聞くと
「森の奥とか洞窟とか、魔物が多いところにたまに落ちているんだ。女の人は綺麗なものが好きだから、お姉さんも喜ぶかなって」
魔物は死ぬと骨とともに空っぽのクォーツを残す。だからカイル君の言うとおり、魔物の生息地によく落ちている。
しかし魔物の生息地に、常人は気軽に出入りできない。ただカイル君は戦えるので、ちょっとした冒険感覚で行けてしまうのだろう。
「嬉しいけど……これ、すごく貴重なものだよ。簡単にくれていいの?」
こういう小さな村では、魔力やクォークについて知らない人も多い。
特に金儲けと縁の無い子どもは、クォーツを見つけても綺麗な石程度にしか思わないのだろう。
相手の無知に付け込んで、価値あるものを奪うのは気が引けたので聞いてみるも
「いいんだ。むしろ貴重なものなら、余計にお姉さんにあげたい」
「なんで? 世話になっているのは、こっちなのに」
「昨日のお礼と言うか、お詫びと言うか……すごく気持ちよかったから、俺もお姉さんに何かしてあげたくて」
カイル君は少し照れながら素朴な好意を口にすると
「だからお姉さんが嬉しいなら遠慮なくもらって」
「……やっぱりこれは受け取れないよ」
クォーツを返そうとすると、カイル君は目を丸くして
「どうして? 貴重なんでしょう? お姉さんにとっても価値があるんじゃないの?」
「……私は昨日、君に親切にしたわけじゃない。お礼をもらう理由が無い」
「どういう意味?」
キョトンと首を傾げるカイル君に、私は説明をためらった。
他人の精液を魔力に変換する。その体質を知れば、どんな風に生きて来たか明らかで、あえて人に知らせたくはなかった。
でも、もう何も知らないカイル君に無邪気に慕われることに耐えられない。だから話した。
自分が闇属性で、他の属性の者と違い他人の体液を魔力に変換するのだと。私の場合それは男の精液だと。
今日はまだカイル君に会っていないけど、近日中にここから去ることを伝えよう。
そんなことを考えながら、シチューを煮込んでいると
「お、お姉さん。おはよう」
今朝はいつもより早く起きて、どこかに行っていたカイル君が、やや緊張した様子で声をかけて来た。
昨晩の行為の名残か、彼は少しもじもじしていたが
「あれ? お姉さん、今日はすごく綺麗だね?」
私の変化に気付いて首を傾げると
「お姉さんは前から可愛かったけど、なんで今日はこんなに綺麗に見えるんだろう?」
ちなみに私は基本的に、墓場とカラスと黒衣が似合う魔女的な容姿をしている。
髪も目も漆黒で、肌は血が通っていないかのように青白い。今は体調がいいので肌や髪に潤いがあるものの、以前はパサパサだった。
この子は私の何に可愛さを見出したのだろうと疑問を抱きつつ、外見の変化は自分の体質に触れることなので黙っていた。
するとカイル君はプシューッと赤くなって
「……俺、やっぱりお姉さんに恋しちゃったのかな?」
「どうして、そんな結論に至ったの?」
昨日の勃起=神様の罰(または病気)説といい、予想外の発想を連発するカイル君に瞠目すると
「だって前に村の人が、恋をすると相手が輝いて見えるって言っていたから。恋をしたから、お姉さんがキラキラして見えるのかなって」
「いや、今日は珍しくコンディションがいいだけだから。君の精神状態とは無関係だよ」
冷静にツッコむも、カイル君は熱っぽい目で私を見上げて
「でも俺、いつもお姉さんが気になるし、見ていると胸がきゅうってなるんだ……」
彼はすっかり性欲と恋情を混同しているようだ。無駄に熱を上げるカイル君を、私は冷ややかに見返して
「気になるのは私が余所者で、君が優しいからだよ。胸がきゅうってなるのは、昨日の1件を引きずっているだけ」
「お姉さんが特別だから、きゅうってなるんじゃないの?」
「違うよ。普通こんな齢の離れた女を好きにはならないから、一時的におかしくなっているだけだよ」
素っ気なく好意を否定すると、カイル君は悲しそうに瞳を揺らした。
でも彼の好意は明らかに、同情と性欲が合わさったものだ。じゃなきゃ、どうしてこんな女を好きになる。
私はカイル君に特別な好意は無くとも感謝はしている。だから私を好きだなんて誤解して、心や時間を浪費して欲しくない。
「それより今日は、ずっと姿が見えなかったけど、どこに行っていたの?」
「あっ、そうだ。これ。お姉さんにあげたくて取りに行っていたんだ」
カイル君が差し出したのは
「これ、クォーツだよね? どこで手に入れたの?」
タイムリーなプレゼントに驚く。クォーツは大きく強固で透明度の高いものほど、より多くの魔力を溜められる。
これは大きさ・強度・透明度ともにCランクほどだったが、十分アイテムの素材になるレベルだ。
子どもが簡単に手に入れられるものではないので出所を聞くと
「森の奥とか洞窟とか、魔物が多いところにたまに落ちているんだ。女の人は綺麗なものが好きだから、お姉さんも喜ぶかなって」
魔物は死ぬと骨とともに空っぽのクォーツを残す。だからカイル君の言うとおり、魔物の生息地によく落ちている。
しかし魔物の生息地に、常人は気軽に出入りできない。ただカイル君は戦えるので、ちょっとした冒険感覚で行けてしまうのだろう。
「嬉しいけど……これ、すごく貴重なものだよ。簡単にくれていいの?」
こういう小さな村では、魔力やクォークについて知らない人も多い。
特に金儲けと縁の無い子どもは、クォーツを見つけても綺麗な石程度にしか思わないのだろう。
相手の無知に付け込んで、価値あるものを奪うのは気が引けたので聞いてみるも
「いいんだ。むしろ貴重なものなら、余計にお姉さんにあげたい」
「なんで? 世話になっているのは、こっちなのに」
「昨日のお礼と言うか、お詫びと言うか……すごく気持ちよかったから、俺もお姉さんに何かしてあげたくて」
カイル君は少し照れながら素朴な好意を口にすると
「だからお姉さんが嬉しいなら遠慮なくもらって」
「……やっぱりこれは受け取れないよ」
クォーツを返そうとすると、カイル君は目を丸くして
「どうして? 貴重なんでしょう? お姉さんにとっても価値があるんじゃないの?」
「……私は昨日、君に親切にしたわけじゃない。お礼をもらう理由が無い」
「どういう意味?」
キョトンと首を傾げるカイル君に、私は説明をためらった。
他人の精液を魔力に変換する。その体質を知れば、どんな風に生きて来たか明らかで、あえて人に知らせたくはなかった。
でも、もう何も知らないカイル君に無邪気に慕われることに耐えられない。だから話した。
自分が闇属性で、他の属性の者と違い他人の体液を魔力に変換するのだと。私の場合それは男の精液だと。
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