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オマケ・学園祭とメイド服

素直ワンコ誠太郎

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 夏休みの最後に、終わったはずの僕の初恋は予期せぬ形で成就した。脅迫者と被害者から恋人へと関係が変わったことで、お互いを名前で呼び合うようになった。彼に「 誠太郎せいたろう」と呼んでもらえるのも、彼を「 まもる」と呼べるのもとても嬉しい。

 僕が理想としていた清く美しい交際ではないが、無意識下でずっと願い続けていた恋が叶ったのだから、とても幸せだ。

 それから少し月日が経って10月の下旬。

 僕と守は学園祭の出し物で、クラスの皆で喫茶店をやることになった。調理係と接客係がハッキリと分かれており、後者は執事かメイドの仮装をする。

 普通なら単純に男子が執事で、女子がメイドになるところだ。けれど、せっかくの学園祭なのに普通じゃ面白くないと、身長170センチ以上と以下で、執事服かメイド服か分けることになった。身長180センチの僕は執事服で接客することになったのだが、

「お前は恋人になっても僕で商売するんだな」

 学園祭当日。守は僕と写真が撮れる権利を、1枚500円で販売した。芸能人でもない男の写真に、500円は高い気がする。しかし執事服が良かったのか予想外に売れて、午前中だけで20人以上の女性に写真を撮られた。

 僕が不満を述べると、守はキュルン顔で

「だって、こんなに女子にモテる男が自分の彼氏だなんて自慢じゃん。だから写真を売るの。商売じゃないよ」
「そ、そうなのか?」

 自慢と言われて喜ぶ僕に、守は途端にゲス顔になって

「嘘だよ。チョロいな。俺の損にならない限り売れるもんはなんでも売ろうってだけだよ」
「やっぱり商売なんじゃないか! お前は本当に僕が好きなのか!?」

 守の僕を使った商売は、今日に限ったことじゃない。流石にナンパや合コンには駆り出されなくなったが、運動部への貸し出しは今も続いている。写真くらいならこうして売られてしまうし、なぜか恋人なのに各種雑用もさせられている。本当は僕の気持ちに付け込んで、いいように利用しているだけなんじゃないかと、しばしば不安になる。

 けれど守は激昂する僕の唇にチュッとキスすると、頬に手を添えたまま僕を見上げて

「そうやってカンカンに怒りながら、俺を嫌えないところが可愛い。だから意地悪しちゃうの、分かる?」
「分からないがキスはズルい……」

 どんなに怒ったり悲しかったりしても、僕は守にキスされたりハグされたりすると、感情がリセットされて嬉しさでいっぱいになってしまう。そんな僕の心情など、相変わらずお見通しの守は

「機嫌が直ったみたいだな?」
「いや、流石に僕を安く見積もりすぎだ。後10回はしてもらわないと直らないぞ!」

 本当はとっくに機嫌が直っていたが、もっとキスして欲しくて駄々をこねてみた。しかし守はスッと僕から離れると、

「今はいつ人が来るか分からないからダメ。その代わり、後でたくさんサービスしてやるよ。今日はちょうどメイド服だしな」

 身長168センチの守は、メイド服を着せられていた。しかもいわゆるミニスカメイドだ。女子はともかく他の男子は気の毒なことになっているが、守だけはとても可愛い。……そしてちょっとエロいので

「そ、その格好でサービスしてくれるのか?」
「満更でもないみたいだな? リアクションが薄いから、流石に女装は趣味じゃないのかと」
「女装が好きなわけじゃないが、お前が可愛らしい恰好をしているとドキドキする。とても可愛い」

 素直に愛情を口にすると、守は珍しく照れたように

「……お前はいろいろ甘酸っぱいね」

 目を逸らしたのも束の間、再び距離を詰めると今度は頬にキスをして

「後夜祭までこれで我慢して?」

 悪戯っぽく微笑んで接客に戻った。さっきは色々と文句を言ってしまったが、以前の一方的な搾取とは違い、恋人になってからの守は僕にたくさんご褒美をくれる。ただの奴隷は御免だが、愛の奴隷ならやぶさかではない。学園祭後のご褒美を目指して、仕事をがんばろうと僕は気を引き締めた。
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