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第10話・波乱
乱戦
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私たちは魔属性の使い手を捜していたので、どちらの班にも状態異常対策をしてあった。
私たちの班には、全ての状態異常を解除できるユエルが居る。しかもユエルは100レベルになるまでに、全ての状態異常とステータスダウンを無効にする体質を得ていた。
私とカイゼルも水属性の魔法によって、個別になら治癒と一部の状態異常が解除できる。だからこちらの班が動けなくなる恐れはまずないと考えて、2つしかない全ての状態異常を無効にするアクセサリーは風丸とクレイグに譲った。
それなのに、なぜ風丸は『沈黙』と『毒』を受けていたのか?
これまで散々戦力外扱いして来たクレイグだが、実は彼には他のメンバーには無い特技がある。それは物質を司る地属性であり、敵軍や犯罪者を武力によって制圧する騎士団ならではの特技『装備破壊』。騎士であるクレイグは『装備破壊』によって、敵兵や犯罪者を殺さずに無力化できる。
ただし魔王やダンジョン内のモンスターは、そもそも『装備』していないので、封印の儀式では使いどころのない特技だった。また装備があまりに強固だと破壊できないので、最強装備には武器防具ともに使えない。しかし全状態異常無効のアクセサリーには有効だったのだろう。
クレイグは風丸の隙を突いてアクセサリーを破壊。そこに魔属性の使い手が『沈黙』と『毒』をかけた。
アイテムや装備の破壊は一部の魔属性も行う。ただし魔属性の場合は自身の死と引き換えの呪いとしての発動で、装備中のアイテムや重要なキーアイテムには無効だったので油断した。
ユエルの魔法によって、風丸の『沈黙』と『毒』が一気に解ける。声を取り戻した風丸が真っ先に叫んだのは
「2人とも気を付けろ! 敵はクレイグだけじゃない!」
その警告と同時に、悪寒を伴う黒い魔力が私とユエルを襲う。全状態異常無効の体質を得たユエルは無事だったが、私は身体が麻痺して堪らずその場に倒れ込んだ。
「マスター!」
さらに私に駆け寄ろうとするユエルの背後から
ギィンッ!
剣と剣がぶつかり合う音。背後からの突然の斬撃を、ユエルは辛うじて剣で防いだ。後ろからユエルに斬りかかったのは、風丸と交戦中のクレイグではなく
「今の攻撃を防ぐとは。『剣聖の片りん』は伊達じゃないようだな」
邪悪な笑みを浮かべるカイゼルに、ユエルは深刻な顔で
「カイゼルさん。どうしてあなたまで……」
「俺たちを排除して封印の騎士になりたいんだとさ。ネフィロスの野郎に唆されたんだ」
風丸の説明によって、アルゼリオの魂を奪った魔属性の使い手が他ならぬネフィロスであることが判明した。
風丸がボロボロなのはネフィロスに全ステータスダウンをかけられて動きが鈍ると同時に、クレイグに『装備破壊』されて『沈黙』と『毒』を食らわされたから。さらに助けを求めに行こうとした由羽ちゃんも私と同様、魔法で麻痺させられてネフィロスに捕まっていた。
だとすれば、魔属性の使い手を捜すという名目で私たちを二分したのも、私とユエルが居ない隙に、まずは風丸から始末するための罠だったんだ。
「ネフィロスさん。なぜこんなことを」
ぐったりした由羽ちゃんを連れて姿を現したネフィロスを、ユエルは咎めるように睨んだ。一方のネフィロスは、いつもどおり悠然と微笑をたたえて
「疑問を感じるのは当然ですが、悠長に話している場合でしょうか?」
ネフィロスが指した先で、カイゼルが魔法の詠唱を終えた。凝縮された青白い光が弾けると同時に、私とユエルに向かって巨大な氷の槍が迫る。ユエルは私を片腕で抱えると、もう一方の手で聖句を唱えて剣を振るう。眼前に現れた真白き光の盾が、カイゼルの氷の槍を粉砕した。
「チッ! おい、ネフィロス! ユエルを沈黙させろ! 魔法が通らん!」
「残念ですが、ユエル君はもう全ての状態異常を無効化する体質を得ています。風丸君と和泉さんは無力化しますので、後はお2人でなんとか」
カイゼルとネフィロスが言い合う向こうで、風丸はクレイグの攻撃をなんとか回避しながら
「ユエル! 弱体化は自分で解くから回復をかけてくれ! このままじゃ満足に戦えねぇ!」
「わ、分かりました!」
風丸は状態異常の他に、全てのステータスをダウンさせられていた。状態異常と違って弱体化は、正反対の魔法やアイテムの効果で打ち消すしかない。速さを司る風属性の風丸は、自力で『加速』をかけられる。他のステータスは下がったままだが、素早さと体力が戻ればひとまず、これ以上の攻撃を受けずに済む。
沈黙を解除された風丸は、自分に『加速』をかけた。次いでユエルの回復魔法がかかり、半死半生だった体が回復する。
体力と素早さを取り戻した風丸は、真っ先に由羽ちゃんを取り返しに行ったが
「おっと。おやめになったほうがいい。いくらあなたが素早くとも、この距離なら私が喉を掻き切るほうが速い」
警告とともにネフィロスは、今度は風丸を麻痺させた。1人1人を個別に浄化したのでは間に合わない。ユエルは仲間全員を同時に治す『全体浄化』をかけた。
それによって風丸だけでなく私の麻痺も解ける。ネフィロスに邪魔されながらの乱戦がはじまった。状態異常を無視すれば、無防備になった私と風丸が、カイゼルとクレイグに狙われてしまう。そのせいで今回、ユエルはサポートに徹するしかなかった。
私たちの班には、全ての状態異常を解除できるユエルが居る。しかもユエルは100レベルになるまでに、全ての状態異常とステータスダウンを無効にする体質を得ていた。
私とカイゼルも水属性の魔法によって、個別になら治癒と一部の状態異常が解除できる。だからこちらの班が動けなくなる恐れはまずないと考えて、2つしかない全ての状態異常を無効にするアクセサリーは風丸とクレイグに譲った。
それなのに、なぜ風丸は『沈黙』と『毒』を受けていたのか?
これまで散々戦力外扱いして来たクレイグだが、実は彼には他のメンバーには無い特技がある。それは物質を司る地属性であり、敵軍や犯罪者を武力によって制圧する騎士団ならではの特技『装備破壊』。騎士であるクレイグは『装備破壊』によって、敵兵や犯罪者を殺さずに無力化できる。
ただし魔王やダンジョン内のモンスターは、そもそも『装備』していないので、封印の儀式では使いどころのない特技だった。また装備があまりに強固だと破壊できないので、最強装備には武器防具ともに使えない。しかし全状態異常無効のアクセサリーには有効だったのだろう。
クレイグは風丸の隙を突いてアクセサリーを破壊。そこに魔属性の使い手が『沈黙』と『毒』をかけた。
アイテムや装備の破壊は一部の魔属性も行う。ただし魔属性の場合は自身の死と引き換えの呪いとしての発動で、装備中のアイテムや重要なキーアイテムには無効だったので油断した。
ユエルの魔法によって、風丸の『沈黙』と『毒』が一気に解ける。声を取り戻した風丸が真っ先に叫んだのは
「2人とも気を付けろ! 敵はクレイグだけじゃない!」
その警告と同時に、悪寒を伴う黒い魔力が私とユエルを襲う。全状態異常無効の体質を得たユエルは無事だったが、私は身体が麻痺して堪らずその場に倒れ込んだ。
「マスター!」
さらに私に駆け寄ろうとするユエルの背後から
ギィンッ!
剣と剣がぶつかり合う音。背後からの突然の斬撃を、ユエルは辛うじて剣で防いだ。後ろからユエルに斬りかかったのは、風丸と交戦中のクレイグではなく
「今の攻撃を防ぐとは。『剣聖の片りん』は伊達じゃないようだな」
邪悪な笑みを浮かべるカイゼルに、ユエルは深刻な顔で
「カイゼルさん。どうしてあなたまで……」
「俺たちを排除して封印の騎士になりたいんだとさ。ネフィロスの野郎に唆されたんだ」
風丸の説明によって、アルゼリオの魂を奪った魔属性の使い手が他ならぬネフィロスであることが判明した。
風丸がボロボロなのはネフィロスに全ステータスダウンをかけられて動きが鈍ると同時に、クレイグに『装備破壊』されて『沈黙』と『毒』を食らわされたから。さらに助けを求めに行こうとした由羽ちゃんも私と同様、魔法で麻痺させられてネフィロスに捕まっていた。
だとすれば、魔属性の使い手を捜すという名目で私たちを二分したのも、私とユエルが居ない隙に、まずは風丸から始末するための罠だったんだ。
「ネフィロスさん。なぜこんなことを」
ぐったりした由羽ちゃんを連れて姿を現したネフィロスを、ユエルは咎めるように睨んだ。一方のネフィロスは、いつもどおり悠然と微笑をたたえて
「疑問を感じるのは当然ですが、悠長に話している場合でしょうか?」
ネフィロスが指した先で、カイゼルが魔法の詠唱を終えた。凝縮された青白い光が弾けると同時に、私とユエルに向かって巨大な氷の槍が迫る。ユエルは私を片腕で抱えると、もう一方の手で聖句を唱えて剣を振るう。眼前に現れた真白き光の盾が、カイゼルの氷の槍を粉砕した。
「チッ! おい、ネフィロス! ユエルを沈黙させろ! 魔法が通らん!」
「残念ですが、ユエル君はもう全ての状態異常を無効化する体質を得ています。風丸君と和泉さんは無力化しますので、後はお2人でなんとか」
カイゼルとネフィロスが言い合う向こうで、風丸はクレイグの攻撃をなんとか回避しながら
「ユエル! 弱体化は自分で解くから回復をかけてくれ! このままじゃ満足に戦えねぇ!」
「わ、分かりました!」
風丸は状態異常の他に、全てのステータスをダウンさせられていた。状態異常と違って弱体化は、正反対の魔法やアイテムの効果で打ち消すしかない。速さを司る風属性の風丸は、自力で『加速』をかけられる。他のステータスは下がったままだが、素早さと体力が戻ればひとまず、これ以上の攻撃を受けずに済む。
沈黙を解除された風丸は、自分に『加速』をかけた。次いでユエルの回復魔法がかかり、半死半生だった体が回復する。
体力と素早さを取り戻した風丸は、真っ先に由羽ちゃんを取り返しに行ったが
「おっと。おやめになったほうがいい。いくらあなたが素早くとも、この距離なら私が喉を掻き切るほうが速い」
警告とともにネフィロスは、今度は風丸を麻痺させた。1人1人を個別に浄化したのでは間に合わない。ユエルは仲間全員を同時に治す『全体浄化』をかけた。
それによって風丸だけでなく私の麻痺も解ける。ネフィロスに邪魔されながらの乱戦がはじまった。状態異常を無視すれば、無防備になった私と風丸が、カイゼルとクレイグに狙われてしまう。そのせいで今回、ユエルはサポートに徹するしかなかった。
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