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第10話・波乱
予期せぬ横槍
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あれから私はユエル、風丸、アルゼリオのパーティーでダンジョンに潜るようになった。個人の能力はすでに十分なので、主に3人の呼吸を合わせるためだ。
ただ3人で戦うと一気に片付いて楽な半面、経験値が入りにくい。ユエルを100レベルにするには、やはり単独で戦わせたほうが効率的だ。
その旨を私から聞いた由羽ちゃんは目を輝かせて
「だから貴重な休日もユエル君の訓練にあてるんですね! 婚約しても育成の手を緩めない! 安定のデスマーチですね、律子さん!」
「厳しすぎかなとも思うんだけど、ユエル自身もどうせならカンストを目指したいって言うから」
そんなわけで平日は風丸とアルゼリオを加えた4人で。休日は私とユエルの2人だけでダンジョンに潜り、封印の儀式までのラスト1か月は月月火水木金金状態だった。
しかし封印の儀式の1週間前。最後の休日に事件は起きた。私とユエルがダンジョンに潜っている間。由羽ちゃんは風丸と過ごし、アルゼリオは1人で街に繰り出していた。
そのアルゼリオが外出先で何者かに襲われた。体は生きているが、意識の無い状態で城に戻って来た。ユエルによれば、魂が抜けているのだと言う。
城の医務室で寝かされているアルゼリオの周りに集まった私たちは
「アルゼリオさんは大丈夫なんですか?」
心配そうな由羽ちゃんに、ユエルは深刻な表情で
「死んだわけではありませんから、魂が戻れば元通り動けるようになります。逆に言えば魂が戻らなければ、僕にも意識を回復させられません」
「それにしても魂を奪うなんて、いったいどうやって」
私の呟きに、同席していたネフィロスが
「実は魔属性の術でしたら、気力体力ともに十分弱らせれば相手から魂を奪えます。そして同じ魔属性として嘆かわしいことですが、魔王を解放して世界の滅亡を目論む派閥もあると聞いています」
「わざわざ魔王を解放したいなんてどうして? 魔王が復活しちゃったら、自分たちだって危ないのに」
由羽ちゃんは疑問のようだが
「魔王が復活しなくたって、生き地獄を味わっているヤツは居るさ。特に魔属性はネフィロスの旦那みたいな一部の例外を除けば差別の対象だからね。力と機会がありゃ自分の命を犠牲にしても、世界を滅ぼしたいと願ったって不思議はないよ」
そもそも魔王は人々の負の感情の集積だ。それも100年に1度リセットしているにも関わらず、決して消えることなく何度も蘇っている。それは魔王が居なくても人間同士でお互いを苦しめ合い、傷つけ合っている証拠。自分だけ苦しむくらいなら、風丸の言うとおり、全て滅べと望む者も居るだろう。
「でも魔属性の術者なら魂を奪えるとして、この国の誰にアルゼリオを倒すことができたんだろう? 地上の人間にはそうそう倒せないレベルのはずだけど」
私の疑問にカイゼルが
「どれだけ体を鍛えようが動けなければ意味がない。魔属性の人間が関わっているとしたら、状態異常にステータスダウン。敵を弱体化する方法はいくらでもある。我々ほどの手練れじゃなくとも、人数を揃えれば可能だろう」
「それに今は推測よりも、アルゼリオを襲った犯人を捜さないと。アルゼリオの魂を取り返さないことには、ソイツは一生寝たきりになっちまうんだろう?」
クレイグの言うとおり、今はアルゼリオの魂を取り戻すのが先決だ。他国の王子である彼を寝たきりのままにさせておけないのもあるが、犯人の目的次第では新たな被害者が出る可能性もある。
翌日。私たちはアルゼリオを倒した犯人を捜索することになった。無論、手掛かりなしに闇雲に捜すことは不可能だ。捜索のヒントとして、ネフィロスが魔属性の魔力に反応するという探知機をくれた。ただし反応するのは、半径1キロ以内なので歩き回る必要がある。
私とユエルはカイゼルを。風丸とクレイグは安全のために由羽ちゃんも連れて、二手に分かれて街を捜索することになった。
ただ3人で戦うと一気に片付いて楽な半面、経験値が入りにくい。ユエルを100レベルにするには、やはり単独で戦わせたほうが効率的だ。
その旨を私から聞いた由羽ちゃんは目を輝かせて
「だから貴重な休日もユエル君の訓練にあてるんですね! 婚約しても育成の手を緩めない! 安定のデスマーチですね、律子さん!」
「厳しすぎかなとも思うんだけど、ユエル自身もどうせならカンストを目指したいって言うから」
そんなわけで平日は風丸とアルゼリオを加えた4人で。休日は私とユエルの2人だけでダンジョンに潜り、封印の儀式までのラスト1か月は月月火水木金金状態だった。
しかし封印の儀式の1週間前。最後の休日に事件は起きた。私とユエルがダンジョンに潜っている間。由羽ちゃんは風丸と過ごし、アルゼリオは1人で街に繰り出していた。
そのアルゼリオが外出先で何者かに襲われた。体は生きているが、意識の無い状態で城に戻って来た。ユエルによれば、魂が抜けているのだと言う。
城の医務室で寝かされているアルゼリオの周りに集まった私たちは
「アルゼリオさんは大丈夫なんですか?」
心配そうな由羽ちゃんに、ユエルは深刻な表情で
「死んだわけではありませんから、魂が戻れば元通り動けるようになります。逆に言えば魂が戻らなければ、僕にも意識を回復させられません」
「それにしても魂を奪うなんて、いったいどうやって」
私の呟きに、同席していたネフィロスが
「実は魔属性の術でしたら、気力体力ともに十分弱らせれば相手から魂を奪えます。そして同じ魔属性として嘆かわしいことですが、魔王を解放して世界の滅亡を目論む派閥もあると聞いています」
「わざわざ魔王を解放したいなんてどうして? 魔王が復活しちゃったら、自分たちだって危ないのに」
由羽ちゃんは疑問のようだが
「魔王が復活しなくたって、生き地獄を味わっているヤツは居るさ。特に魔属性はネフィロスの旦那みたいな一部の例外を除けば差別の対象だからね。力と機会がありゃ自分の命を犠牲にしても、世界を滅ぼしたいと願ったって不思議はないよ」
そもそも魔王は人々の負の感情の集積だ。それも100年に1度リセットしているにも関わらず、決して消えることなく何度も蘇っている。それは魔王が居なくても人間同士でお互いを苦しめ合い、傷つけ合っている証拠。自分だけ苦しむくらいなら、風丸の言うとおり、全て滅べと望む者も居るだろう。
「でも魔属性の術者なら魂を奪えるとして、この国の誰にアルゼリオを倒すことができたんだろう? 地上の人間にはそうそう倒せないレベルのはずだけど」
私の疑問にカイゼルが
「どれだけ体を鍛えようが動けなければ意味がない。魔属性の人間が関わっているとしたら、状態異常にステータスダウン。敵を弱体化する方法はいくらでもある。我々ほどの手練れじゃなくとも、人数を揃えれば可能だろう」
「それに今は推測よりも、アルゼリオを襲った犯人を捜さないと。アルゼリオの魂を取り返さないことには、ソイツは一生寝たきりになっちまうんだろう?」
クレイグの言うとおり、今はアルゼリオの魂を取り戻すのが先決だ。他国の王子である彼を寝たきりのままにさせておけないのもあるが、犯人の目的次第では新たな被害者が出る可能性もある。
翌日。私たちはアルゼリオを倒した犯人を捜索することになった。無論、手掛かりなしに闇雲に捜すことは不可能だ。捜索のヒントとして、ネフィロスが魔属性の魔力に反応するという探知機をくれた。ただし反応するのは、半径1キロ以内なので歩き回る必要がある。
私とユエルはカイゼルを。風丸とクレイグは安全のために由羽ちゃんも連れて、二手に分かれて街を捜索することになった。
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