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第9話・誓いの指輪

2人が結婚するには

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 「これから毎日一緒に眠れたらいいな」という希望どおり、あれから私とユエルは再び一緒に寝るようになった。

 エバーシュタインさんや星月さんを職務怠慢により強制送還した手前、快楽に溺れるわけにはいかない。またユエルの年齢的にも、年齢制限に引っかかるような行為は慎んでいる。

 ただ同じベッドに入った後、ユエルは必ず私を愛おしそうに見下ろして

「こうして一緒に眠れるだけで、夫婦みたいで嬉しいです。おやすみなさい、マスター」

 「いい夢を」と愛情を込めて頬にキスしてくれる。こういうただ愛おしむだけの触れ合いのほうが、心臓にグッと来てしまうのは私だけだろうか。

 そんな風に言うと、今は清い関係なんだなと思われるかもしれない。ただ例によって5回に1回ほどの確率で、お題部屋に飛ばされる不具合は起き続けている。

 前は不運として受け取っていたが、今のユエルは

「……正直、待っていました。次はいつマスターに触れられるだろうって」

 私の手を取りながら、秘密を打ち明けるように囁くと

「ここでは我慢しなくていいですよね? しないと出られないから」

 普段は禁欲している分、指定されたお題よりも、ちょっと過激なことをされる。ただ倫理観が邪魔するだけで、濃厚な触れ合いを望んでいるのはユエルだけではない。だから『しないと出られない』という免罪符を、私もありがたく受け入れていた。


 ユエルと将来の約束をしたことは、城の人たちにはまだ話していない。やはり異世界であっても、14歳の少年が一回りも年上の女と結婚すると知ったら周りは心配する。

 だから私はユエルの求婚を受け入れたものの、周りの人に知らせる心の準備はまだだった。しかし生真面目なユエルが、宙ぶらりんな状態を許すはずもなく

「マスター。しつこいかもしれませんが、将来は僕と結婚してくださるということでよろしいですか?」
「う、うん。ただ私と君の年齢差だとアレだから、ユエルが大人になるまでは、内々の関係にしておきたいんだけど」

 やっぱりどこか卑怯と言うか及び腰の私に、ユエルは困り顔で

「マスターにプレッシャーをかけたくはありませんが、国民に向けてはともかく城の者たちには知らせないと、勝手に縁談を組まれてしまいます」
「あっ、そうか。君は国王だもんね。周りが放っておかないよね」

 一般人ならともかく国王のユエルにとって、後継ぎを作るために結婚は必須だ。決まった人が居なければ、周りはその空席を埋めようとするだろう。

「でも私なんかが伴侶として認めてもらえるかな?」

 私は12も年上の異世界人だ。向こうの世界でも平民だが、こちらには家族すら居ない。ゲームの知識は豊富だが、こちらの世界の常識やマナーは知らない。今はまだ26だが、ユエルが20歳になる頃には30を超えてしまう。若い子よりは出産に不利な年齢だ。身分のある人の妻には、明らかに相応しくない女だ。

 私の懸念にユエルは

「正直、五分五分だと思います。僕の国では特に神聖なものが尊ばれますから、神が遣わした導き手であるマスターは身分的には問題ありません」

 確かにカイゼルやクレイグも「導き手ならともかく」と言っていた。逆に言えば導き手の身分を失えば危ないのかもしれないが

「仮に相楽さんが最終的な導き手に選ばれたとしても、僕をここまで育ててくださった主はマスターであることを城の者は承知していますから、その恩を忘れることは無いかと」

 条件的には及第点らしいと聞いて安心したが、ユエルはやや顔を曇らせて

「ただマスターがお考えのとおり、本音を言えば周りの者たちは国にとって利のある相手との婚姻を望むだろうと思います」

 そりゃ周りは恩義はあっても無力な年増より、条件のいい相手を望むだろう。だからこそ私とユエルが結婚するためには、ハッキリと意志表示することが大事だそうだ。


 そこでユエルが考えたのは

「すごい……綺麗な場所だね」

 私は今ユエルに連れられて中世ヨーロッパの聖堂のような場所に居た。この城には魔王を封じるダンジョンの入り口にも神殿がある。しかし公的な行事を大事な封印の地でするわけにはいかない。だから封印の儀式以外の神聖な儀式はここで行うそうだ。綺麗なんて単純な言葉では足りないほど、神聖で厳かな雰囲気が漂う美しい場所だった。

「でも、どうしてここに連れて来てくれたの?」

 私の質問に、ユエルは少し照れたように微笑みながら

「王家の人間は、ここで結婚するんです。だから少し早いけど、誓いを立てるならここがいいと思って」

 そう言ってユエルが取り出したのは
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