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第7話・育成開始から半年
キレると強くなるタイプのヒロイン
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が、次の瞬間。
「さんざん楽しんでおきながら急に手の平を返しやがって! このクソ野郎どもがぁぁ!」
星月さんは空間全体をビリビリと震わせるような圧倒的な声量でシャウトすると
「責任を取らねーなら、せめて慰謝料を払えやぁぁ!」
訓練場の壁に飾られていたメイスで、カイゼルとクレイグをボコボコにした。
星月さんの勇姿に、由羽ちゃんは熱狂して
「素敵ですよ、星月さん! その意気です!」
「タマを潰せよ、セーラーちゃん! そんなヤツラ、不能にしちまえ~!」
風丸と一緒に「いいぞ、やれやれ」とノリノリで星月さんを応援した。2人は星月さんと仲が良かったわけじゃないけど、目の前で人が捨てられる様を見ていい気はしなかったのだろう。
けっきょくカイゼルとクレイグは星月さんの要求どおり、彼女に慰謝料として宝飾品を数点巻き上げられた。彼らは「そっちだって二股していたくせに」と不満げだったが
「封印の騎士に選ばれたいなら、これ以上醜い振る舞いで失望させないでください。あなたがたがどれだけ腕を上げようが、人として信用に値しない方をわざわざ選ぶほど、こちらは戦力に困っていないので」
とモラルの番人・ユエルさんに睨まれて要求に応じるしかなかった。
カイゼルたちの言うとおり、星月さんも完全な被害者では無かっただろう。それでも結婚するつもりで付き合っていた相手に、一方的に捨てられる姿は見ていて忍びなかったので、金銭的な補償だけでもされて良かった。この世界の宝石は、見た目も名称も向こうと同じなので、恐らく問題なく換金できるはずだ。
不幸中の幸いと言うか、星月さんは捨てられた時点で、カイゼルとクレイグへの熱が一気に冷めたようだ。カイゼルとクレイグの口ぶりからして、彼らが愛していたのは星月さんの容姿と神の使いという肩書きだったようだから、愛想が尽きるのも無理は無い。だから翌日にはサッパリした顔で、ユエルに送還された。
星月さんという導き手を失ったカイゼルとクレイグ。本来なら私か由羽ちゃんのパーティーに入れなければならないところだが
「申し訳ありませんが、今のあなたがたと組んでも、かえって足手まといです。自分のせいで生じた遅れは、自分で取り戻してください」
「俺も右に同じだな~。1軍のメンバーはすでに足りているのに、2軍の育成のために足並みを揃える理由は無いんでね」
ユエルと風丸は、力不足を理由に2人を冷たく拒絶した。しかしそれは表向きの理由で、実際は星月さんと快楽に耽っていた淫らで不誠実な男たちを、私や由羽ちゃんに近付けたくなかったようだ。
正直なところ、私もカイゼルとクレイグには悪印象がある。しかし個人的な嫌悪感があるからこそ、私的な感情で育成を放棄していいのかと少し後ろめたい。
ただ風丸の言うとおり、攻撃力ツートップのアルゼリオと風丸に、支援魔法の使い手であるユエルの3人で組むのが、いちばんバランスがいい。カイゼルとクレイグには悪いが、封印の騎士になりたいなら、ユエルの言うとおり、自力で這い上がってもらわなければならない。
そこは納得しているのかカイゼルとクレイグは文句を言わず、ただ顔を見合わせて
「……まぁ、俺たちだけでもダンジョンに入れないことはないが」
しばらくは2人だけでダンジョンに入ろうと決めかけた矢先。
「2人だけでは心許ないのでしたら、私が協力しましょうか?」
孤立したカイゼルとクレイグに、手を差し伸べたのはネフィロスだった。魔属性のネフィロスは、聖属性のユエルと真逆の力を持つ。要するに、敵に状態異常やステータスダウンをかけて戦闘を有利にしてくれる。
ネフィロスにサポートしてもらえば、これまでの遅れを取り戻せるかもしれないと、2人は申し出を受け入れた。ネフィロスはゲームでは戦闘に参加しなかったから、いったいどんな魔法が使えるのか、ちょっとだけ2人が羨ましかった。
「さんざん楽しんでおきながら急に手の平を返しやがって! このクソ野郎どもがぁぁ!」
星月さんは空間全体をビリビリと震わせるような圧倒的な声量でシャウトすると
「責任を取らねーなら、せめて慰謝料を払えやぁぁ!」
訓練場の壁に飾られていたメイスで、カイゼルとクレイグをボコボコにした。
星月さんの勇姿に、由羽ちゃんは熱狂して
「素敵ですよ、星月さん! その意気です!」
「タマを潰せよ、セーラーちゃん! そんなヤツラ、不能にしちまえ~!」
風丸と一緒に「いいぞ、やれやれ」とノリノリで星月さんを応援した。2人は星月さんと仲が良かったわけじゃないけど、目の前で人が捨てられる様を見ていい気はしなかったのだろう。
けっきょくカイゼルとクレイグは星月さんの要求どおり、彼女に慰謝料として宝飾品を数点巻き上げられた。彼らは「そっちだって二股していたくせに」と不満げだったが
「封印の騎士に選ばれたいなら、これ以上醜い振る舞いで失望させないでください。あなたがたがどれだけ腕を上げようが、人として信用に値しない方をわざわざ選ぶほど、こちらは戦力に困っていないので」
とモラルの番人・ユエルさんに睨まれて要求に応じるしかなかった。
カイゼルたちの言うとおり、星月さんも完全な被害者では無かっただろう。それでも結婚するつもりで付き合っていた相手に、一方的に捨てられる姿は見ていて忍びなかったので、金銭的な補償だけでもされて良かった。この世界の宝石は、見た目も名称も向こうと同じなので、恐らく問題なく換金できるはずだ。
不幸中の幸いと言うか、星月さんは捨てられた時点で、カイゼルとクレイグへの熱が一気に冷めたようだ。カイゼルとクレイグの口ぶりからして、彼らが愛していたのは星月さんの容姿と神の使いという肩書きだったようだから、愛想が尽きるのも無理は無い。だから翌日にはサッパリした顔で、ユエルに送還された。
星月さんという導き手を失ったカイゼルとクレイグ。本来なら私か由羽ちゃんのパーティーに入れなければならないところだが
「申し訳ありませんが、今のあなたがたと組んでも、かえって足手まといです。自分のせいで生じた遅れは、自分で取り戻してください」
「俺も右に同じだな~。1軍のメンバーはすでに足りているのに、2軍の育成のために足並みを揃える理由は無いんでね」
ユエルと風丸は、力不足を理由に2人を冷たく拒絶した。しかしそれは表向きの理由で、実際は星月さんと快楽に耽っていた淫らで不誠実な男たちを、私や由羽ちゃんに近付けたくなかったようだ。
正直なところ、私もカイゼルとクレイグには悪印象がある。しかし個人的な嫌悪感があるからこそ、私的な感情で育成を放棄していいのかと少し後ろめたい。
ただ風丸の言うとおり、攻撃力ツートップのアルゼリオと風丸に、支援魔法の使い手であるユエルの3人で組むのが、いちばんバランスがいい。カイゼルとクレイグには悪いが、封印の騎士になりたいなら、ユエルの言うとおり、自力で這い上がってもらわなければならない。
そこは納得しているのかカイゼルとクレイグは文句を言わず、ただ顔を見合わせて
「……まぁ、俺たちだけでもダンジョンに入れないことはないが」
しばらくは2人だけでダンジョンに入ろうと決めかけた矢先。
「2人だけでは心許ないのでしたら、私が協力しましょうか?」
孤立したカイゼルとクレイグに、手を差し伸べたのはネフィロスだった。魔属性のネフィロスは、聖属性のユエルと真逆の力を持つ。要するに、敵に状態異常やステータスダウンをかけて戦闘を有利にしてくれる。
ネフィロスにサポートしてもらえば、これまでの遅れを取り戻せるかもしれないと、2人は申し出を受け入れた。ネフィロスはゲームでは戦闘に参加しなかったから、いったいどんな魔法が使えるのか、ちょっとだけ2人が羨ましかった。
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