【騎士王と主の伝説】18禁乙女ゲーの世界に来たからには全力で推しを幸せにする

知見夜空

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第7話・育成開始から半年

半年目の成果発表

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 こちらの世界に来てから半年。いちばん健全だった私とユエルの関係が変化してしまったくらいだから、他のメンバーにだって色々ある。

 はたから見ても「メロメロなのでは?」と思うほど、最近の風丸は由羽ちゃんにベッタリだ。由羽ちゃんが言うには、それは例の『風丸を幸せにする力』の影響で本人の意思では無いらしい。

 しかし私から見れば

「風丸? お腹が空いたんですか?」

 私と由羽ちゃんが夕食を作っていると、風丸がひょっこり厨房にやって来て

「暇だからマスターちゃん、見に来ただけ~」

 他の人には決して出さない甘えた声で言うと、料理をしている由羽ちゃんを厨房の隅から嬉しそうに見ていた。男の人が厨房に来てまで、彼女が料理を作っている姿を見たがるって、もう絶対に好きじゃん……。

 この時点で私は2人のラブラブぶりが気になって、野菜の皮を剥く手も震えたが

「いつも笑顔で尽くしてくれて、マスターちゃんと結婚する男は幸せだね」

 推しからの「いいお嫁さんになるね」的な発言に、由羽ちゃんは「うーん」と苦笑して

「私がこんなに笑顔で尽くしたくなるのは風丸だけなので、ダメじゃないでしょうか?」

 由羽ちゃん的には「誰にでも献身的なわけじゃない」と否定したかっただけらしいが

「ふ~ん……そうなんだ」

 言外に「あなただから特別なんだ」と言われた風丸は、少し俯いたくらいじゃ隠しきれない喜色を浮かべた。私は激しいときめきに襲われると同時に、こんなにいいものを見せてもらいながらリアルゆえ課金できないことに苦しみを感じた。由羽ちゃん、何も聞かずに5万円くらい受け取ってくれないかな……。

 話はズレたが、2人の間に漂う空気は本当に温かくて幸せそうで、洗脳ものにありがちな病んだ雰囲気は全然無い。

 念のためユエルにも聞いたが

「僕にも風丸さんは、普通に相楽さんを好いていらっしゃるように見えます」

 とのことだ。例の能力の影響も少しはあるのかもしれないが

『マスターちゃんと結婚する男は幸せだね』

 と思うなら「君が由羽ちゃんと結婚して、幸せにしてもらったらいいんじゃないかな!?」と、自分はユエルの求婚から逃げているくせに、全力でプッシュしたい衝動に苛まれている。


 また育成開始から半年と言うことで、お互いの成長具合を確認するために、5人の騎士で腕試しを行った。腕試しと言っても死なない限りは、どれだけ負傷しても回復できてしまう世界なので、実戦さながらマジで斬り合うし、特技も魔法も使いまくる。


 まずはユエルVSアルゼリオのリベンジマッチ。アルゼリオはエバーシュタインさんが送還された後、由羽ちゃんのパーティーに入った。アルゼリオが心を入れ替えて、今は真面目に鍛錬していること。また具体的なステータスについても由羽ちゃんから聞いている。

 順調に育成されてはいるが、うちのユエルはハードモード仕様なのでアルゼリオと20レベルほど差がある。しかも今のユエルは、全ステータスを一度にアップする魔法を覚えた。加えてユエルはもともと魔防が高いうえに、魔法反射も使える。風丸のようにスピードが高くて1ターンに2回攻撃できるならともかく、アルゼリオでは本当に歯が立たない相手になってしまった。そんなわけでリベンジマッチは、ユエルが順当に勝利した。


 続いてアルゼリオVS風丸。アルゼリオは戦闘前に、ユエルの魔法で体力を、道具で気力を回復して万全の体調で2回戦に臨んだ。

 風丸はユエルと違って魔防が高いわけでも、魔法反射を持っているわけでもない。しかし詠唱する隙を与えない速度で斬りかかって来るので、サシでの戦いでは大威力の魔法を封じられる。しかも風丸はアルゼリオと比べて魔攻が低めな代わりに、詠唱においても『短縮』というスキルがあるので発動が速い。よって決着も早かった。

 風丸はアルゼリオより5レベル高いだけなので、もう少しいい勝負ができるかと思ったが、意外と圧倒的だった。戦闘には基本ステータスの他に、テンションの要素も関わっている。

 導き手との関係が良好なほど、キャラは絶好調になる。要するに大好きなマスターに良いところを見せようと張り切るのだ。由羽ちゃんの風丸に対する深すぎる思い入れを知っていたので、テンションに影響するほど仲よくなったことに密かにホロリとした。

 次に風丸とユエルの戦闘。ユエルは風丸よりも15レベル上でテンションも同じくらい高い。ただ風丸は由羽ちゃんから、素早さを大幅にアップする『一角獣の腕輪』を借りている。そのせいで素早さだけは、ユエルを上回っていた。

 アルゼリオの時と同様に、大威力の魔法は封じられたが、もともとユエルには攻撃魔法は無い。ユエルは風丸の隙を突いて1つずつ、自分のステータスをアップ&小威力の回復魔法で体力を回復しながら戦っていたので、終盤になるほど優位になり、危なげなく勝利した。

 15レベル差もある風丸に対して、圧倒的とは言えない戦い。しかしユエルの能力は、もともと長期戦に向いたタイプだ。素早さ特化の風丸に釣られることなく、自分の戦法を貫いて最終的に勝利したユエルは、むしろ聖属性の剣士として順調に成長していた。
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