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第6話・〇〇しないと出られない部屋レベル2

怒涛のように口説かれる主

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「僕に触れられて狼狽えはしても、嫌わないでくれるのはなぜですか? こうして見つめるだけで頬を染めるのは、ただ恥ずかしいからじゃなくて、あなたも好いてくれているのだと思うのは自惚れですか?」

 容赦なく熱情をぶつけて来るユエルに、私はタジタジになりながら

「いや、自惚れではないけど……君はまだ14歳なのに、大人が子どもに手を出すわけには……」

 理性グラグラの私とは裏腹に、ユエルはますます意志堅固に

「お言葉ですが、手を出されているのはマスターのほうです。それとマスターの世界ではどうか知りませんが、少なくとも僕の国では、男女ともに子どもが作れる年齢であれば、齢の差がいくつ離れていようが結婚できます」
「でも普通、女のほうが一回りも年上ってことはないんじゃ?」

 一般人ならともかくユエルは国王だ。世継ぎを作らなければならない立場なら、単なる好みではなく出産のためにも女性は若いほうがいい。

 一回りも年上の女との結婚なんてデメリットしかない。それはユエルも承知のはずだが

「マスターは回復役として後ろに回すのが普通の僕を剣士として鍛え、戒律に縛られていた僕に、大切なことは自分の心で決めるように教えてくれました。世間一般の考えが必ずしも正しいわけじゃないと教えてくれたのはマスターなのに、ここには常識を持ち出すんですか? あなた自身の気持ちで答えてはくれないんですか?」

 ユエルは厳しく追及すると、返事を急かすように

「マスター」

 こちらを見下ろす真剣な眼差しを、とてもじゃないけど正視できず

「……ゴメン。君に戒律を破らせたくせにズルいけど、私の世界では子どもに手を出すことは犯罪なんだ。君に惹かれる気持ちがあるからこそ、自分だけは特別だなんて都合よく許すことはできない」

 彼の気持ちと向き合うのを拒むように目を逸らしたまま

「それに君は否定するけど、やっぱりもともと主として慕っていたところに、今回みたいなことが重なったから、色んな感情がごっちゃになって、恋愛だと錯覚しているだけじゃないかな?」

 いろいろ言ったけど、本当は全部言い訳だった。錯覚だなんて嘘でも言うのは悪いほど、ユエルは本気だと分かっているのに

「マスターは僕が恋愛と性欲の区別もつかないほど、子どもだと思っているんですか?」
「君は下手な大人よりずっと賢いし、思慮深い人だよ。だけど、まだ14歳だから、どうしたって未成熟な部分があるでしょう」

 自分の心の弱さを、ユエルの年齢のせいにして

「君に好きだと言われて、正直すごくドキドキした。だけど君の年齢や自分の立場を考えると、やっぱり本当だとは思えない。だから悪いけど頷けないよ。いつか君が後悔するかもしれないことを、私には選べない」

 本当はいつか自分が捨てられて傷つきたくないだけの臆病を、卑怯な嘘で誤魔化した。これまで他の人の告白を断って来たのは、好きになれそうもなかったからだ。でも今ユエルの告白を断ったのは、本気で愛してしまいそうだから。

 異性と付き合ったことは無いけど、これまで色んな別れを経験して来た。大して好きでもない人でも、背を向けられるのは辛かった。本気で好きになった人に、もし嫌われたら、どんなに傷つくか分からない。

 だから私は将来の自分が傷つかないために、ユエルの本気を拒絶した。今ここにいる彼を傷つけて。

「……分かりました」

 乾いた声音で答えた彼が、私の気持ちをどんな風に理解したのかは分からない。それでもユエルは、私の上から退いてベッドから降りると

「返事を急かして困らせて、すみませんでした。帰りましょう」

 まるで何事も無かったかのように、衣服を整えて一緒にお題部屋を出た。
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