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現代編(最終章)
最終話・500年の不在の理由
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「普通の人は死んだらすぐに他の生物に生まれ変わるんですが、ウラメ様はこの500年、霊として活動するでもなく魂を眠らせていたようで。これがあの別れ以来、はじめての再会なので、恋し過ぎてつい……」
ササグの話を総合すると、私はウラメから前野継に生まれ変わったようだ。
だとすると私はウラメに転生したのではなく、事故のショックで前世の自分と同化していたのだろうか?
そして遠い過去で生贄として死ぬはずだったササグを助けた。
そのササグが転生を繰り返し、トラックに轢かれるはずだった私を助けたことで、死の運命が変わったとか?
それ自体も不思議だが
「500年1度も生まれ変わらなかったって。なんで私、そんな長いこと眠っていたんだろうね?」
口にした瞬間、私はあることを思い出してハッとした。
死ぬまでに1万回は言わされた「何度生まれ変わっても一緒になろうね」の約束が重たくて
『もう怨霊になれなくてもいい。私を生まれ変わらせないで。このまま安らかに眠らせて……』
と最後に強く願ったことを。
一般的に輪廻転生は悟りを開くまで続くと言われている。
だとすると「嫌だ」で拒否することはできない。
その代わり神様か何かが転生までの期間を長くしてくれたのかもしれない。
また現世のしがらみに揉まれるまで、少しでも長く安らかな眠りが続くように。
「ウラメ様?」
無垢な瞳で問うササグから、私はソッと視線を逸らして
「いや……なんでもない」
私が自分の意思で、500年もササグを避けていたと知ったら、彼がどうなるか分からない。
幸いササグは500年の不在の理由までは分からないようで、ほんわり微笑みながら
「でも良かったです。本当は存在していたウラメ様を、俺が見逃し続けたわけじゃなくて。もし俺の居ない500年。ウラメ様も普通に生まれ変わって、その時々に恋人や伴侶が居たらと思うと、想像だけで気が狂いそうですから……」
居もしない恋敵を想って、また闇を深めていくササグに
「落ち着いてササグ。実際は君以外、誰も居ないから。今世でも私、誰とも付き合ってないから」
慌てて宥めると、ササグは素直に気を取り直して
「はい、良かったです。ウラメ様が俺と再会するまでの500年。誰とも交わらず、ただ眠っていてくださって」
私も良かった。ササグの居ない人生とか下手に無くて。
純愛的な意味では無く、ひたすら私の安全のために。
「そう言えば、さっきの霊はなんだったんだろう? 私と同化したかったみたいだけど、どうして私を狙ったのかな?」
私の疑問に、ササグは少し沈黙すると、暗い微笑を浮かべて
「……あの怨霊は自分を慕う相手を拒んだ末に、死んだり殺されたりした者たちの集合です。だからウラメ様と共鳴したのでは? 自分を慕う相手から逃げたいという波長によって」
それを聞いた瞬間、あの霊の不可解な言動を思い出した。
『誰かと居たほうがいいよ。じゃないと怖いものが来るよ』
『ゴメンね。でもあなたを助けるには、こうするしかないの』
そして最後。ササグが呼んだ『何か』と対面した彼女たちの
『いやぁぁ! 来ないで! 自由にしてぇぇ!』
という断末魔。
あの怨霊は生前の自分たちと同様に『何か』に捕まりそうな私を心配して、同化することで護ろうとした。
それをササグが阻止したついでに
『どうぞ。末永く幸せに』
恐らくササグと波長が合うゆえに知り合った『何か』たちに引き渡した。
その一部始終を知った私は、過去最大級の恐怖に見舞われつつも
「……無いよ、そんな波長! また会えて、すごく嬉しいよ!」
さっきササグは私に拒否されたら悲しくて死ぬと言っていた。
でもその死は絶対に、自分だけでなく私を巻き込んだものだ。
心中は嫌だという本能が、反射的にササグの手を取らせた。
私に手を握られたササグは幸福そうに目を細めて
「俺もまたウラメ様に会えて、言葉にできないくらい嬉しいです」
自分からもギュッと手を繋ぎ、私のほうに身を寄せると
「昔の俺は愚かでしたから、なんの準備もなくウラメ様と別れて、おかげで500年も独りぼっちでしたが、もう同じ轍は踏みませんから」
今度は私の転生に関して、なんらかの準備があるらしいササグは
「今日この時からは本当に、ずーっとずーっと一緒です」
語尾にハートがついているような甘い声で永遠を告げた。
ああ……こんなことなら、さっきの霊たちと、さっさと同化しておけば良かったな。
せっかく助けてくれようとしたのに、私のせいでササグに睨まれて、ようやく逃げ延びた『何か』と再会させちゃってゴメンね……と私は遠い目で詫びた。
ササグの話を総合すると、私はウラメから前野継に生まれ変わったようだ。
だとすると私はウラメに転生したのではなく、事故のショックで前世の自分と同化していたのだろうか?
そして遠い過去で生贄として死ぬはずだったササグを助けた。
そのササグが転生を繰り返し、トラックに轢かれるはずだった私を助けたことで、死の運命が変わったとか?
それ自体も不思議だが
「500年1度も生まれ変わらなかったって。なんで私、そんな長いこと眠っていたんだろうね?」
口にした瞬間、私はあることを思い出してハッとした。
死ぬまでに1万回は言わされた「何度生まれ変わっても一緒になろうね」の約束が重たくて
『もう怨霊になれなくてもいい。私を生まれ変わらせないで。このまま安らかに眠らせて……』
と最後に強く願ったことを。
一般的に輪廻転生は悟りを開くまで続くと言われている。
だとすると「嫌だ」で拒否することはできない。
その代わり神様か何かが転生までの期間を長くしてくれたのかもしれない。
また現世のしがらみに揉まれるまで、少しでも長く安らかな眠りが続くように。
「ウラメ様?」
無垢な瞳で問うササグから、私はソッと視線を逸らして
「いや……なんでもない」
私が自分の意思で、500年もササグを避けていたと知ったら、彼がどうなるか分からない。
幸いササグは500年の不在の理由までは分からないようで、ほんわり微笑みながら
「でも良かったです。本当は存在していたウラメ様を、俺が見逃し続けたわけじゃなくて。もし俺の居ない500年。ウラメ様も普通に生まれ変わって、その時々に恋人や伴侶が居たらと思うと、想像だけで気が狂いそうですから……」
居もしない恋敵を想って、また闇を深めていくササグに
「落ち着いてササグ。実際は君以外、誰も居ないから。今世でも私、誰とも付き合ってないから」
慌てて宥めると、ササグは素直に気を取り直して
「はい、良かったです。ウラメ様が俺と再会するまでの500年。誰とも交わらず、ただ眠っていてくださって」
私も良かった。ササグの居ない人生とか下手に無くて。
純愛的な意味では無く、ひたすら私の安全のために。
「そう言えば、さっきの霊はなんだったんだろう? 私と同化したかったみたいだけど、どうして私を狙ったのかな?」
私の疑問に、ササグは少し沈黙すると、暗い微笑を浮かべて
「……あの怨霊は自分を慕う相手を拒んだ末に、死んだり殺されたりした者たちの集合です。だからウラメ様と共鳴したのでは? 自分を慕う相手から逃げたいという波長によって」
それを聞いた瞬間、あの霊の不可解な言動を思い出した。
『誰かと居たほうがいいよ。じゃないと怖いものが来るよ』
『ゴメンね。でもあなたを助けるには、こうするしかないの』
そして最後。ササグが呼んだ『何か』と対面した彼女たちの
『いやぁぁ! 来ないで! 自由にしてぇぇ!』
という断末魔。
あの怨霊は生前の自分たちと同様に『何か』に捕まりそうな私を心配して、同化することで護ろうとした。
それをササグが阻止したついでに
『どうぞ。末永く幸せに』
恐らくササグと波長が合うゆえに知り合った『何か』たちに引き渡した。
その一部始終を知った私は、過去最大級の恐怖に見舞われつつも
「……無いよ、そんな波長! また会えて、すごく嬉しいよ!」
さっきササグは私に拒否されたら悲しくて死ぬと言っていた。
でもその死は絶対に、自分だけでなく私を巻き込んだものだ。
心中は嫌だという本能が、反射的にササグの手を取らせた。
私に手を握られたササグは幸福そうに目を細めて
「俺もまたウラメ様に会えて、言葉にできないくらい嬉しいです」
自分からもギュッと手を繋ぎ、私のほうに身を寄せると
「昔の俺は愚かでしたから、なんの準備もなくウラメ様と別れて、おかげで500年も独りぼっちでしたが、もう同じ轍は踏みませんから」
今度は私の転生に関して、なんらかの準備があるらしいササグは
「今日この時からは本当に、ずーっとずーっと一緒です」
語尾にハートがついているような甘い声で永遠を告げた。
ああ……こんなことなら、さっきの霊たちと、さっさと同化しておけば良かったな。
せっかく助けてくれようとしたのに、私のせいでササグに睨まれて、ようやく逃げ延びた『何か』と再会させちゃってゴメンね……と私は遠い目で詫びた。
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