わたしは怨霊になりたい

知見夜空

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回想編(ササグ視点)

愛と呼べるか分からないけど(けっこう性描写)

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 そんなただれた生活をしているわりに、不思議とウラメ様は子を孕まなかった。

 ただの夫婦では、いつかウラメ様に逃げられてしまうかもしれない。

 でもウラメ様は優しいから、夫を捨てることはあっても、子を捨てることは絶対にできないだろう。

 俺が子どもにとっていい父親であれば、子どもから父親を奪ってはならないと、自分も家に留まってくれるはず。

 だから俺は最低でも、1人は子どもが欲しかった。

 それなのに1年抱き続けても、ウラメ様は孕まなかった。俺かウラメ様のどちらかが、子を作れない体質なのかもしれない。

 けれど産めないのかと思ったら、意外とあっさり諦めがついた。

 出産で命を落とす女も居る。ウラメ様はか弱いから、余計に危ないかもしれない。

 子を産まなければ、その危険も無いと考えれば、かえって安心できた。

 しかし何故かある時から

「あの、ササグ。するのはいいけど、なるべく最後は外で出して欲しい……」

 性交の最中。恐々と切り出したウラメ様に、俺はポカンとしながら

「最後は外で出せって……子種のことですか? 今までは何も言わなかったのに急にどうして?」

 下半身を繋げたまま動きを止めて真意を問う。

 ウラメ様は俺の下で顔を背けながら

「いや、なんか……やっぱりお産は怖いなって。なるべく子どもができないようにしたくて……」

 ウラメ様は人一倍苦痛に弱い。特に出産は男でも、気を失うほどの痛みだと聞く。

 ウラメ様が嫌なら無理強いしたくは無かったが

「ササグ?」
「……ウラメ様の頼みはなんでも聞いてあげたいし、無理に産めとは言えませんが」
「あっ、あっ、ササグっ」

 繋げていた部分を動かすと、ウラメ様は戸惑いながらも切ない声を上げた。

 揺さぶられて縋るのは腕だけじゃなく、ウラメ様の中も離すまいとするように俺の一物いちもつに絡みついて来る。

「ウラメ様の中に出せないのは寂しいです。あなたが好きだから、はらの奥まで俺でいっぱいにしたい」
「やっ、ダメって、言っているのにっ」

 いっそう激しく揺さぶると、ウラメ様は切羽詰まった声を上げたが

「ダメって言われても無理です。体を繋げながら、これだけ我慢するなんて」

 俺はウラメ様を逃がさぬように、細い手首を布団に押さえつけながら

「だからこれからも、俺の子種は全部ウラメ様が飲んでください。お産を代わることはできませんが、他は全て俺がやりますから」

 それからは今まで以上に、執拗に子種を注ぐようになった。

 子種が零れないように男根で栓をしたまま、奥の奥まで満ちるように何度も精を放つ。

 抜いた時に、ぽっかりと開いたウラメ様の穴からドロッと白濁が零れると、ああ、全部俺のものだと独占欲が満たされた。

 そんな抱き方をするようになってから3か月。

「……怒っていますか? ついに孕ませてしまって」

 1年以上も子ができなかったのはたまたまだったようで、ついにウラメ様は妊娠した。

 もともと俺は子どもが居たほうがいいと思っていたから嬉しい。

 でもウラメ様はこれから何か月もの不調に耐えて、出産しなければならない。

 俺が産めればいいのだが、こればかりは代われない。

 無理やりしておきながら、酷いことをしてしまったと今さら反省すると

「いや、君は私の旦那さんなんだし、妊娠させちゃダメとは言えないけど」

 ウラメ様は寛容にも、俺の暴挙を許してくれたが

「……お産、痛いんだろうなって、ちょっと不安で。それにいいお母さんになる自信も無いし」

 浮かない顔のウラメ様に、俺は罪悪感で胸を痛めながら

「前にも言いましたが、お産以外のことは全て俺がするから大丈夫です。ただ」
「ただ?」
「……生活の面倒は俺が見られますが、愛情だけはウラメ様にしか与えられませんから。俺にしてくれたみたいに、頭を撫でたり優しい言葉をかけたりしてあげて欲しいです」

 言った後で俺が無理やり孕ませた子を、愛してあげて欲しいなんて望みすぎかもしれないと思った。

 村人たちを見る限り、大抵の母親は自然と子を愛する。

 ……でも俺の母がそうだったように、望まぬ妊娠の末に生まれる子も居る。

 結婚してもらえただけでも奇跡なのに、いい母になってくれと望むのは、やはり押しつけに思えたが

「君も不安だろうに、私だけ愚痴ってゴメン」

 ウラメ様は俯いた俺の頭を優しく撫でると

「出産も子育ても1人じゃ絶対に無理だけど、ササグと一緒ならきっと大丈夫」

 先ほどまでの不安が嘘のように、優しく微笑んで

「だから私の足りないところは、君が助けてくれる?」

 と俺に手を差し伸べてくれた。

 ウラメ様はいつも自分を人でなしのように言う。

 例えば俺ばかり働いて自分は休んでいることや、本当は俺を愛していないことを気に病んでいるようだ。

 ……でも俺だってウラメ様を好いてはいるが、愛しているかは分からない。

 ウラメ様から聞いて印象深かった話がある。

 本当に愛しているなら、痛がる相手の手を無理に引っ張ることはできない。自分は喪失の痛みに心を引き裂かれても、相手を尊重できることが愛だと言う話だった。

 けれど、俺はウラメ様のためなら命だって捧げられるが、もっと深く繋がりたい。決して手放したくないという欲だけは抑えられない。

 周りから見れば俺が尽くしているようで、本当に大事なところで折れてくれているのは、いつもウラメ様だった。

 だからこそ俺は、この優しい方がもっと慕わしくなる。

 実の母から

『あなたの世話をしてあげるのは、私が結婚するまでよ』

 と言われながら育ち

『12年後に生贄になるなら、それまでは面倒をみてやろう』

 と、この村に連れて来られた俺にとって、ウラメ様は奇跡のように特別な方だから。

 だから俺は、またウラメ様に譲らせてしまったことに気付きながらも

「はい……はい。もちろん」

 涙ながらにその手を取って

「ウラメ様にも子どもにも絶対に不自由させません。俺の全てをかけて、必ず2人を幸せにします」

 と強く誓った。
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