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回想編(ササグ視点)
喉から手が出るほどあなたが(ほんのり性描写)
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娯楽の乏しい村では酒と食以外の楽しみは、異性くらいしかない。
俺やウラメ様以外の若者たちは、だいたい13くらいから異性に関心を持ちはじめて、大人の目を盗んで楽しむ者もいた。
大抵は男のほうがやりたがりだが、女にも欲はあるようだ。
15になると、俺も同年代の女や、すでに夫が居る女からも誘われるようになった。
通常、生贄は儀式の1か月前に選ばれる。しかし俺だけは村長が、ウラメ様の代の生贄にするために拾って来た子どもだ。
18歳で死ぬと分かっている相手を誘うのは、刹那的な快楽のためでしかない。
女たちは俺が好きだと言いながら、助けるつもりはまるでなく
「どうせ18になったら生贄にならなきゃいけないのに、他の男たちと同じだけ働くなんて馬鹿みたいだよ。もうアンタには時間が無いんだから、これからは楽しいことだけしなよ」
「アンタは村のために命を捧げるんだから、それまで遊んでいたって誰も咎めないよ」
女は俺の手を取り、着物の中に招こうとしたが
「悪いが、俺には好きな人がいる。やめてくれ」
仮に意中の相手が居なくとも、命だけじゃ飽き足らず体まで食い物にされるのは御免だった。
俺の返事に、女はあからさまに顔をしかめて
「好きな人って、もしかして村長の次女のことかい? あんな薄気味悪い女のどこが……」
お前にウラメ様の何が分かると、よほど言いたかったが、俺は『いい人間』でいなければならない。
咄嗟に言葉は飲み込んだが、目には憎悪が溢れていたようで、女は俺の顔を見て「ひっ」と言葉を止めた。
「ウラメ様を悪く言わないでくれ。あの方は俺の恩人なんだ」
それだけ言うと、相手の反応を待たず、立ち去ろうとしたが
「ウラメだって!」
女は俺の背中に怒りをぶつけるように
「この村で暮らす限り、いつかは誰かのものになるんだよ! アンタと違って先のある誰かのものにね!」
誘いを断り恥をかかせた仕返しか、女は俺を「可哀想に!」と嘲笑った。
女の誘いを拒む口実ではなく、俺はウラメ様が好きだ。
子どもの頃は純粋に慕っていたが、俺にはウラメ様しか見えないから、男としての欲望も自然とあの方に向いてしまった。
他の女はどうでもいいが、ウラメ様の肌は見たいと思う。
あの細い体を抱きしめて隅々まで口づけて、最奥に入り込みたい。1つになれたら、どんなに幸せだろうと、よく夢想する。
ウラメ様への欲を自覚してから、離れで寝かせてもらうことは無くなった。
でもウラメ様は俺の気持ちを知らないから「眠れなくて」と言い訳すれば、子どもの時のように無防備に入れてしまうだろう。
ウラメ様は優しいから「死ぬ前にどうか想いを遂げさせてください」と泣きつけば、受け入れてくれるかもしれない。
優しい人に死を盾に関係を迫ることの卑怯さを知りながら
「死ぬ前に、せめて一度でも」
と日に何度も考える。
あの女の言うとおり、俺が死ぬ思いで諦めようとしている人を、他の男が無感覚に手に入れるのかと思うと、腸が煮えくり返るほど悔しかった。
だから例え同情でも、ウラメ様が結婚してくれて本当に嬉しかった。
俺の片想いで触れることのできない関係でも、形だけでも夫婦なら他の男に奪われる心配は無い。
ウラメ様の隣を独占できるなら、それだけでいいと本気で思っていたのに
「えっ!? ……口づけや抱擁はしてもいいんですか?」
優しいウラメ様は恋情では無いけど、俺が好きだから、できる範囲で喜ばせたいと言ってくれた。
舞い上がって唇に接吻してしまっても、怒らないでくれるどころか
「今さらだけど、好きになってくれてありがとう」
俺の一方的な執着を、よいものとして受け止めてくれた。
ウラメ様はご自分を薄情だと思っているようだが、こんなに優しい方は絶対に他に居ない。
少なくとも俺にとっては、やっぱり神や仏のように寛容で温かくて、慕わずにはいられない方だ。
だから絶対に失いたくない。これまで以上によく働いて、ワガママは絶対に言わないようにしよう。
恋慕が大きくなるほど欲も増したが、このうえ体まで奪うような真似はすまいと思っていた。
しかしまたしても
「ちょっとくらいならいいよ。変なことをしても」
また俺を憐れんでくださったのか、ウラメ様は自分から許可を出してくださった。
ウラメ様の優しさに付け込んではダメだと頭では思うが、いいよと言われて我慢できるほど俺には余裕が無くて
「ウラメ様の口の中、舐めたいです。ウラメ様の味を知りたい」
ウラメ様の舌に舌を絡めると、蕩けそうなほど気持ち良くて、甘い唾液が美味しくて
「ウラメ様の唾液、甘いです……。もっと欲しい……」
押さえつけていた欲望が、噴出して止まらなくなった。
ずっと見たくて堪らなかったウラメ様の肌は、想像の何百倍も綺麗で、あんまりありがたくて涙が出た。
だけどウラメ様は俺の反応を、笑うことも気持ち悪がることもせず
「もう全部ササグのだから、いっぱいしていいよ」
俺の頭を引き寄せて、柔らかな胸に抱きしめてくれた。
子どもの頃。俺は、この世を地獄だと思っていた。たまにちょっといいことがあっても、目が眩むような幸せを味わうことなんて無いだろうと。
けれどウラメ様と交わっている時は、極楽なんて目じゃないほど身も心も満たされて、生まれて来て良かったと思える。
村の男たちが「この世の楽しみなんて女と酒くらいだ」と言う気持ちが、今はよく分かる。
酒は人が飲んでいる様を見ると、理性を無くして愚かな振る舞いをしたり、どうやら健康を害したりで、得よりも損のほうが多そうだと俺は遠慮していた。
女色だって度を越して耽っていいものではないと、頭では分かっている。
ただ、その理性を越えて気が狂いそうなほどウラメ様との触れ合いは気持ちいい。
だから俺は流石にしつこいかもしれないと頭では思いつつ
「……ウラメ様。今日もいいですか?」
と毎晩ウラメ様を求めてしまうようになった。
多分それだけでも多いくらいなのに、ウラメ様が受け入れてくださるのをいいことに、天候不良で仕事にならない日は朝から晩まで。
俺やウラメ様以外の若者たちは、だいたい13くらいから異性に関心を持ちはじめて、大人の目を盗んで楽しむ者もいた。
大抵は男のほうがやりたがりだが、女にも欲はあるようだ。
15になると、俺も同年代の女や、すでに夫が居る女からも誘われるようになった。
通常、生贄は儀式の1か月前に選ばれる。しかし俺だけは村長が、ウラメ様の代の生贄にするために拾って来た子どもだ。
18歳で死ぬと分かっている相手を誘うのは、刹那的な快楽のためでしかない。
女たちは俺が好きだと言いながら、助けるつもりはまるでなく
「どうせ18になったら生贄にならなきゃいけないのに、他の男たちと同じだけ働くなんて馬鹿みたいだよ。もうアンタには時間が無いんだから、これからは楽しいことだけしなよ」
「アンタは村のために命を捧げるんだから、それまで遊んでいたって誰も咎めないよ」
女は俺の手を取り、着物の中に招こうとしたが
「悪いが、俺には好きな人がいる。やめてくれ」
仮に意中の相手が居なくとも、命だけじゃ飽き足らず体まで食い物にされるのは御免だった。
俺の返事に、女はあからさまに顔をしかめて
「好きな人って、もしかして村長の次女のことかい? あんな薄気味悪い女のどこが……」
お前にウラメ様の何が分かると、よほど言いたかったが、俺は『いい人間』でいなければならない。
咄嗟に言葉は飲み込んだが、目には憎悪が溢れていたようで、女は俺の顔を見て「ひっ」と言葉を止めた。
「ウラメ様を悪く言わないでくれ。あの方は俺の恩人なんだ」
それだけ言うと、相手の反応を待たず、立ち去ろうとしたが
「ウラメだって!」
女は俺の背中に怒りをぶつけるように
「この村で暮らす限り、いつかは誰かのものになるんだよ! アンタと違って先のある誰かのものにね!」
誘いを断り恥をかかせた仕返しか、女は俺を「可哀想に!」と嘲笑った。
女の誘いを拒む口実ではなく、俺はウラメ様が好きだ。
子どもの頃は純粋に慕っていたが、俺にはウラメ様しか見えないから、男としての欲望も自然とあの方に向いてしまった。
他の女はどうでもいいが、ウラメ様の肌は見たいと思う。
あの細い体を抱きしめて隅々まで口づけて、最奥に入り込みたい。1つになれたら、どんなに幸せだろうと、よく夢想する。
ウラメ様への欲を自覚してから、離れで寝かせてもらうことは無くなった。
でもウラメ様は俺の気持ちを知らないから「眠れなくて」と言い訳すれば、子どもの時のように無防備に入れてしまうだろう。
ウラメ様は優しいから「死ぬ前にどうか想いを遂げさせてください」と泣きつけば、受け入れてくれるかもしれない。
優しい人に死を盾に関係を迫ることの卑怯さを知りながら
「死ぬ前に、せめて一度でも」
と日に何度も考える。
あの女の言うとおり、俺が死ぬ思いで諦めようとしている人を、他の男が無感覚に手に入れるのかと思うと、腸が煮えくり返るほど悔しかった。
だから例え同情でも、ウラメ様が結婚してくれて本当に嬉しかった。
俺の片想いで触れることのできない関係でも、形だけでも夫婦なら他の男に奪われる心配は無い。
ウラメ様の隣を独占できるなら、それだけでいいと本気で思っていたのに
「えっ!? ……口づけや抱擁はしてもいいんですか?」
優しいウラメ様は恋情では無いけど、俺が好きだから、できる範囲で喜ばせたいと言ってくれた。
舞い上がって唇に接吻してしまっても、怒らないでくれるどころか
「今さらだけど、好きになってくれてありがとう」
俺の一方的な執着を、よいものとして受け止めてくれた。
ウラメ様はご自分を薄情だと思っているようだが、こんなに優しい方は絶対に他に居ない。
少なくとも俺にとっては、やっぱり神や仏のように寛容で温かくて、慕わずにはいられない方だ。
だから絶対に失いたくない。これまで以上によく働いて、ワガママは絶対に言わないようにしよう。
恋慕が大きくなるほど欲も増したが、このうえ体まで奪うような真似はすまいと思っていた。
しかしまたしても
「ちょっとくらいならいいよ。変なことをしても」
また俺を憐れんでくださったのか、ウラメ様は自分から許可を出してくださった。
ウラメ様の優しさに付け込んではダメだと頭では思うが、いいよと言われて我慢できるほど俺には余裕が無くて
「ウラメ様の口の中、舐めたいです。ウラメ様の味を知りたい」
ウラメ様の舌に舌を絡めると、蕩けそうなほど気持ち良くて、甘い唾液が美味しくて
「ウラメ様の唾液、甘いです……。もっと欲しい……」
押さえつけていた欲望が、噴出して止まらなくなった。
ずっと見たくて堪らなかったウラメ様の肌は、想像の何百倍も綺麗で、あんまりありがたくて涙が出た。
だけどウラメ様は俺の反応を、笑うことも気持ち悪がることもせず
「もう全部ササグのだから、いっぱいしていいよ」
俺の頭を引き寄せて、柔らかな胸に抱きしめてくれた。
子どもの頃。俺は、この世を地獄だと思っていた。たまにちょっといいことがあっても、目が眩むような幸せを味わうことなんて無いだろうと。
けれどウラメ様と交わっている時は、極楽なんて目じゃないほど身も心も満たされて、生まれて来て良かったと思える。
村の男たちが「この世の楽しみなんて女と酒くらいだ」と言う気持ちが、今はよく分かる。
酒は人が飲んでいる様を見ると、理性を無くして愚かな振る舞いをしたり、どうやら健康を害したりで、得よりも損のほうが多そうだと俺は遠慮していた。
女色だって度を越して耽っていいものではないと、頭では分かっている。
ただ、その理性を越えて気が狂いそうなほどウラメ様との触れ合いは気持ちいい。
だから俺は流石にしつこいかもしれないと頭では思いつつ
「……ウラメ様。今日もいいですか?」
と毎晩ウラメ様を求めてしまうようになった。
多分それだけでも多いくらいなのに、ウラメ様が受け入れてくださるのをいいことに、天候不良で仕事にならない日は朝から晩まで。
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