わたしは怨霊になりたい

知見夜空

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新婚編

無責任に煽る霊たち(ほんのり性描写)

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 私が鬱になっていると

「だ、大丈夫だよ。女だって食事と同じさ。いくら好物でも毎日食ってりゃ、そのうち飽きるよ!」
「そうそう! 勢いがいい分、飽きるのも早いって!」

 お姉さん方は布団お化けとした私を一生懸命励ますと

「……だからアンタも声を我慢するのをやめて、もっと「好き」とか「気持ちいい」とか、ササグ君が喜ぶようなことを言ってみたらどうだい?」
「なんでわざわざ煽るような真似を?」

 瞠目する私に、お姉さん方は

「だってアンタの目的は、さっさとササグ君に飽きられることだろ? だったら踏みとどまろうとするより、さっさと堕ちちまって攻略完了って思わせたほうが良くないかい?」
「そうそう! いっそドロドロに溶けちまえば、それ以上とろかそうって気にならないだろうし!」
「また新しい女を1から攻略したくなるよねぇ?」

 言っていることはそれっぽいが、なぜかお姉さん方の目は泳いでいた。けれど攻略済みの女を、それ以上欲しがらない説は私も納得できたので

「……じゃあ、恥ずかしいけど、デレデレしたことを言ってみます」

 その夜。私は早速お姉さん方のアドバイスに従って

「ササグ……」
「わっ? どうしたんですか?」

 自分からササグの胸に飛び込むと、彼の目をジッと見つめて

「好きだから、くっつきたい」
「えっ!?」
「今日もいっぱいして? 早くササグが欲しい」

 内心かなり恥じらいながら、たどたどしく誘ってみると

「~っ、ああ、もう! そんな可愛いこと!」

 ササグは悶えながら、私をギュウッと抱きしめて

「ウラメ様が可愛すぎて、牽牛けんぎゅうのようになりそうです。何もかも放り出して、ずっとあなたに触れていたい」

 と絶え間なく口づけた。

 牽牛とは七夕伝説の彦星のことだ。独身の時は男女ともに真面目な働き者だったのに結婚した途端に、仲がよすぎてダメになったというやつ。

 子どもの頃は単に仲良しなんだなと思ったが、結婚した今は仕事に支障が出るほど『仲良し(意味深)』したせいで引き裂かれたのだと分かる。

 そんな牽牛になりそうなほどエッチにハマってしまったらしいササグは、空が白むまで私を抱いた。

 これまでは仕事に響かないように、多くても3回で済ませていたササグだが、私が煽るようになってからは完全に歯止めが壊れたようで、5、6回が平均になって来た。

 しかもそれは夜の話で

「あれ? ササグ、どうしたの?」

 昼間に離れに戻って来たので何かと思ったら

「今日は雨風が酷いので、仕事が中止になったんです」
「そうなんだ」

 ササグは狩りや農作業など外でする仕事をしているので、天候によっては出られない日もある。

 ただこれまでのササグは、私の指示を守り自分の仕事が無い時は、他の人の仕事を手伝って好感度を上げていた。

 けれど今日は、なぜか少し緊張した様子で「あの」と口を開くと

「……今日はもう仕事が無いから、今からしちゃダメですか?」

 とうとう夜だけでは飽き足らず、昼まで求めて来るようになった。

 私は抱き潰されてもニートだからいいけど

「ササグ。体は平気なの?」

 ある時そんな質問をすると、ササグはキョトンとしたが

「だってああいうことをするにも体力がいるでしょ? 睡眠時間だって減っちゃうし、体辛くない?」

 心配する私に、ササグはほんわり笑いながら首を振って

「ウラメ様とした後はすごく幸せな気持ちで眠れるので、前より元気なくらいです。全く疲れません」
「そ、そうなんだ……」

 お姉さん方が言うように、ササグは繊細そうな容姿に似合わず体力お化けのようだった。おかげで毎晩どころか、天候によっては朝からズコバコされる生活が続いている。

 この事態を憂慮ゆうりょした私は、独自に束縛大作戦を決行した。恋愛に疎い私だが、束縛が激しいと嫌われるくらいは知っている。

「私以外と仲良くしちゃダメだからね。見るのも話すのもダメ」

 とか無理を言い続ければ、流石に愛想を尽かすはずだ。

 けれど実行したところ、ササグはなんだかソワソワして

「あの、それは焼きもちですか? 俺を他の人に取られたくないんですか?」

 私はあえてムッと不機嫌そうな顔を作ると

「だってササグは私の物なんだから、他の女に取られたくない。だから私以外の女に絶対にデレデレしちゃダメ」

 意図的に所有物扱いして人権を踏みにじるも、ササグはパーッと笑顔になって

「嫉妬してくれて嬉しいです。はい。俺はウラメ様の物なので、今日からはウラメ様以外の女性とは目も合わせないようにします。ただ無視されていると思ったら相手が傷つくでしょうから誤解されないように、村の人たちには予め事情を説明しておきますね」

 ウキウキと言い放つササグに

「事情を説明するって……」

 呆然とする私に、ササグはデレデレしながら

「ウラメ様が妬いちゃうので、今日から他の女性とは話せないし、目も合わせられませんって」
「ゴメン。嘘です。本当にやめて」

 恥ずかしいからやめてくれと必死で縋る羽目になった。ササグは私を嫉妬させないための策として、前にも増して惜しみなく、私に愛を告げるようになった。
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