わたしは怨霊になりたい

知見夜空

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新婚編

夜は愛に飢えたケダモノ(ほんのり性描写)

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 ガッと襲われるかと思ったが、ササグはやっぱり控えめで、いきなりがっつくことはしなかった。

 緊張のせいか我慢のせいか、呼吸も荒く手も震えていた。

 でもその衝動を多分、懸命に堪えながら、私の手に指を絡めて何度も唇を重ねて来た。

 ……なんか甘酸っぱい。

 手を繋いでキスするという初歩的な触れ合いが、あくまで彼が私に抱く感情は、性欲ではなく恋なのだと感じさせた。

 彼のドキドキが伝染するように、私の胸まで騒がしくなる。

 ササグは興奮に頬を染めながら

「ウラメ様の口の中、舐めたいです。ウラメ様の味を知りたい……」

 背後でお姉さん方が、また「きゃあ~」と盛り上がる。返事の代わりに口を開けると、ササグの舌がニュルッと侵入して来た。

 最初は慣れない感触に悪い意味でゾクッとしたが、舌で唇の裏や上あごをくすぐられると、ピリピリとした刺激を感じた。

 ……気持ちいい、かもしれない?

 私はまだ答えを出しあぐねていたが、ササグは夢中になって

「ウラメ様の唾液、甘いです……。もっと……」

 最初は座ったままキスしていたが、押し倒されて、のしかかられるように口内を貪られる。

 薄い夜着越しに、ササグの硬い体と熱を感じる。多分これ平熱じゃない。私に発情して熱くなっているのか。

 ササグに全身で求められているのを感じて、私の体も熱くなる。羞恥のせいか、それ以外かは分からないけど。

「着物も脱がせていいですか? もう全部、欲しいです……」

 あれほど遠慮深かったササグが、辛そうな顔で求めて来る。お姉さん方に勧められたからではなく、気付けば頷き返していた。

 私の着物を脱がせて、貧相な体を暴いたササグは「ああ」と感嘆の声を漏らして

「すごい。綺麗です。ウラメ様」

 私は意識的に痩せ細っているので、絶対にそんな感動するような体ではないのだが

「ササグ、泣いているの?」

 水滴が頬を打つ感触で、彼が涙したのを知る。

 驚く私に、ササグは目元を拭いながら

「すみません、こんな時に。でも俺はずっとあなたの肌を知ること無く、死んでいくんだと思っていたから」

 「叶うなんて思わなくて、すごく嬉しくて……」と彼は震える声で続けた。

 ……ササグはいつから、こんなに私を想っていたのだろう。これだけ焦がれながら、だけど18で死ぬのだからと諦めるのは、どんなに切なかっただろう。

 私は彼の頭を裸の胸に抱き寄せると

「もう全部ササグのだから、いっぱいしていいよ」

 今だけは怨霊になるという目的を忘れて、ただササグに報いたい気持ちで身を委ねた。


 男は体を許すと、すぐに付け上がるとはお姉さん方から聞いていた。ササグは別だと思っていたが

「……ウラメ様。今日もいいですか?」

 最初は私が生きていればいいと言っていたのに、あれから毎晩のように、したがるようになった。

 お誘いの態度だけは遠慮がちだが

「綺麗な顔して意外と貪欲だねぇ、ササグちゃん」
「昼は真面目な働き者で、夜は愛に飢えたケダモノなんて最高だねぇ」

 お姉さん方は堪らない様子だが

「これいつまで続くんですかね? 毎晩こんなんじゃ身が持たないんですが……」

 ササグはとこでも献身的なので、セックスが苦痛ということはない。

 むしろ彼の技術か私の感度が上がっているのか、日増しに良くなっている。が、それが怖い。

 最初は触れられたり舐められたりは気持ち良くても、挿入は違和感が大きくて苦手だった。

 でも最近は大きくて硬いのを入れられるのが、いちばん気持ちいい。浅いところをかき回されて、容赦なく奥を責められると、よすぎて気が変になる。

 精神的には25歳も離れた子に乱されるなんて嫌だ……。気持ちいいと我慢できなくて、変な声が出ちゃうのが嫌だ……。

 それをササグに

『可愛い声、もっと聞かせてください』

 と愛しそうに微笑まれて、ドキッとしている自分も嫌だ。

 こんなハッピーらぶえっちライフは、未来の大怨霊の過去として相応しくない。

 自分にベタ惚れの夫に毎夜抱かれながら、怨霊になりたいなんてほざいていたら、怨霊界のレジェンドたちに八つ裂きにされてしまう。
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