18 / 68
第4話・〇〇しないと出られない部屋レベル2
密かに変わっていく関係
しおりを挟む
風丸はゴロンとベッドに仰向けになると
「キス、もっとしてよ。マスターちゃん」
私に自分を押し倒させるような体勢で、誘惑するようにこちらを見上げて来ました。
「ほ、本気ですか?」
「してくんねーと、俺からするぞ」
予告するように、私の唇を親指でなぞる風丸に
「し、します! します!」
なんでこんなことに? と戸惑いつつ、風丸の額や頬に乞われるままキスします。自分の唇が彼の肌に触れるたびに、胸にポポッと火が灯ります。……情欲の火じゃないですよね!? 落ち着いてください、私!
喪女の私にはチューだけで限界で、もういいかなと、やめようとしましたが
「ダメ。もっと」
風丸は私の背中に手を回すと、逃がすまいとするようにグッと引き寄せました。ベッドの上で推しと密着しながら、世界一綺麗だと見惚れてやまない顔にキスをする。性別が逆だったら200パーセント、勃っていたところです。女で良かった!
心臓がドンドコ不穏な音を立てる私とは逆に、風丸はとろっと気持ち良さそうな顔で
「やっぱりマスターちゃんにキスされんの、妙に気持ちいい。もしかすると、あれが効いてんのかな?」
「あれって……ハッ!? もしかして、これが『風丸を幸せにする力』なんですか!?」
以前、エバーシュタインさんが提唱した風丸洗脳説が今
「そーかも。キスだけじゃなくて、こうやってマスターちゃんに触れていると、変に気持ちいい。嬉しくて、楽しくて、勝手に顔が笑いそうになる……これが幸せってヤツなのかな?」
ヒロインにさえ心を開かなかったスーパードライ忍者・風丸が「これが幸せ?」なんて素面で言うはずが無いので
「わー!? 騙されちゃダメです、風丸! その幸せはまやかしですから浸ってはいけません!」
言いながら体を離そうとしましたが、風丸は放してくれず
「んー……」
自分の上に乗っかった私をギューッと抱きしめて、愚図るようにスリスリしています。まるで夢だと分かっていても、覚めたくないと言うような仕草に
「か、風丸~」
オロオロしながら呼びかけると
「こうしていると気持ちよくて放したくなくなるけど……アンタの言うとおり、まやかしの幸せに浸るってなんか嫌だな……」
風丸はなんとか正気を取り戻すと、私をベッドに座り直らせて自分も起き上がり
「まさか金髪ちゃんの指摘どおりになるとは……厄介な能力をもらってくれたなぁ? マスターちゃん」
我に返った風丸は、さっきまでのベタベタぶりを醜態と感じたのか、恨めし気に私を見ました。
「うぅ、すみません。まさかこんなことになるとは。エバーシュタインさんの言うとおり、帰ったほうがいいでしょうか?」
「は? なんでそんな話になるんだよ?」
「だって謎能力で風丸を狂わせるわけには」
風丸が好きだからこそ、本来の意思を捻じ曲げるようなことはしたくありませんでしたが
「……別にいいじゃん。ただ触りたくなるだけで、アンタの言いなりになるわけじゃないんだから」
「でも」
食い下がる私に、風丸は少しムキになって
「俺のためならなんでもしてくれるんだろ。だったらいいって言うまでここに居ろよ。アンタがどう思っているかは知らないけど、俺にとっちゃアンタがいちばん甘々で役に立つマスターなんだから」
「り、利用なんですね? 待遇目当てなんですね?」
風丸は真正面から、私をギュッと抱きしめると
「……そーだよ。だからここに居て。これからも俺の役に立ってよ」
「好きだから」ではなく「役に立て」だったことに少し安心しました。風丸に好きだとか言われたら、いよいよ洗脳説が濃厚になります。でも利用だと言ってくれるうちは風丸が快適に過ごせるように、便利に使われようと思いました。
「キス、もっとしてよ。マスターちゃん」
私に自分を押し倒させるような体勢で、誘惑するようにこちらを見上げて来ました。
「ほ、本気ですか?」
「してくんねーと、俺からするぞ」
予告するように、私の唇を親指でなぞる風丸に
「し、します! します!」
なんでこんなことに? と戸惑いつつ、風丸の額や頬に乞われるままキスします。自分の唇が彼の肌に触れるたびに、胸にポポッと火が灯ります。……情欲の火じゃないですよね!? 落ち着いてください、私!
喪女の私にはチューだけで限界で、もういいかなと、やめようとしましたが
「ダメ。もっと」
風丸は私の背中に手を回すと、逃がすまいとするようにグッと引き寄せました。ベッドの上で推しと密着しながら、世界一綺麗だと見惚れてやまない顔にキスをする。性別が逆だったら200パーセント、勃っていたところです。女で良かった!
心臓がドンドコ不穏な音を立てる私とは逆に、風丸はとろっと気持ち良さそうな顔で
「やっぱりマスターちゃんにキスされんの、妙に気持ちいい。もしかすると、あれが効いてんのかな?」
「あれって……ハッ!? もしかして、これが『風丸を幸せにする力』なんですか!?」
以前、エバーシュタインさんが提唱した風丸洗脳説が今
「そーかも。キスだけじゃなくて、こうやってマスターちゃんに触れていると、変に気持ちいい。嬉しくて、楽しくて、勝手に顔が笑いそうになる……これが幸せってヤツなのかな?」
ヒロインにさえ心を開かなかったスーパードライ忍者・風丸が「これが幸せ?」なんて素面で言うはずが無いので
「わー!? 騙されちゃダメです、風丸! その幸せはまやかしですから浸ってはいけません!」
言いながら体を離そうとしましたが、風丸は放してくれず
「んー……」
自分の上に乗っかった私をギューッと抱きしめて、愚図るようにスリスリしています。まるで夢だと分かっていても、覚めたくないと言うような仕草に
「か、風丸~」
オロオロしながら呼びかけると
「こうしていると気持ちよくて放したくなくなるけど……アンタの言うとおり、まやかしの幸せに浸るってなんか嫌だな……」
風丸はなんとか正気を取り戻すと、私をベッドに座り直らせて自分も起き上がり
「まさか金髪ちゃんの指摘どおりになるとは……厄介な能力をもらってくれたなぁ? マスターちゃん」
我に返った風丸は、さっきまでのベタベタぶりを醜態と感じたのか、恨めし気に私を見ました。
「うぅ、すみません。まさかこんなことになるとは。エバーシュタインさんの言うとおり、帰ったほうがいいでしょうか?」
「は? なんでそんな話になるんだよ?」
「だって謎能力で風丸を狂わせるわけには」
風丸が好きだからこそ、本来の意思を捻じ曲げるようなことはしたくありませんでしたが
「……別にいいじゃん。ただ触りたくなるだけで、アンタの言いなりになるわけじゃないんだから」
「でも」
食い下がる私に、風丸は少しムキになって
「俺のためならなんでもしてくれるんだろ。だったらいいって言うまでここに居ろよ。アンタがどう思っているかは知らないけど、俺にとっちゃアンタがいちばん甘々で役に立つマスターなんだから」
「り、利用なんですね? 待遇目当てなんですね?」
風丸は真正面から、私をギュッと抱きしめると
「……そーだよ。だからここに居て。これからも俺の役に立ってよ」
「好きだから」ではなく「役に立て」だったことに少し安心しました。風丸に好きだとか言われたら、いよいよ洗脳説が濃厚になります。でも利用だと言ってくれるうちは風丸が快適に過ごせるように、便利に使われようと思いました。
4
お気に入りに追加
165
あなたにおすすめの小説

一晩だけのつもりだったのに異世界に攫われました
木村
恋愛
セイレン・ルイ・ファラリアは、自分より年上の孫までいる男に嫁ぐことに。ならばいっそ慣れてしまいたいと、隣国で行われる神事で観光客の中から一晩の遊び相手を探すことに。しかし実際に男に囲まれると恐ろしく、何もできないでいたセイレンを、美しい騎士が助け出した。
「うちの番さかい、もう誰にも触られたらあかんよ」
方言人外×人生崖っぷち男爵令嬢による異世界ロマンスファンタジー!
ムーンライトノベルズのブルームーンカクテル企画参加作品です
企画URL:https://nl.syosetu.com/event/bluemooncocktail/
※神様に嫁入りするつもりはございません
https://www.alphapolis.co.jp/novel/827614135/239940205
のスピンオフ小説となります。この話は単体で読めます。(でも本編読んだ方が面白いです)
なろうの方のURL
https://novel18.syosetu.com/n6452jv/
脅迫して意中の相手と一夜を共にしたところ、逆にとっ捕まった挙げ句に逃げられなくなりました。
石河 翠
恋愛
失恋した女騎士のミリセントは、不眠症に陥っていた。
ある日彼女は、お気に入りの毛布によく似た大型犬を見かけ、偶然隠れ家的酒場を発見する。お目当てのわんこには出会えないものの、話の合う店長との時間は、彼女の心を少しずつ癒していく。
そんなある日、ミリセントは酒場からの帰り道、元カレから復縁を求められる。きっぱりと断るものの、引き下がらない元カレ。大好きな店長さんを巻き込むわけにはいかないと、ミリセントは覚悟を決める。実は店長さんにはとある秘密があって……。
真っ直ぐでちょっと思い込みの激しいヒロインと、わんこ系と見せかけて実は用意周到で腹黒なヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
表紙絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真のID:4274932)をお借りしております。

聖女と聖主がらぶらぶなのが世界平和に繋がります(格好良すぎて聖主以外目に入りません)
ユミグ
恋愛
世界に淀みが溜まると魔物が強くなっていく中ある書物に書かれてある召喚をウォーカー国でする事に…:
召喚された?聖女と美醜逆転な世界で理不尽に生きてきた聖主とのらぶらぶなオハナシ:
極力山なし谷なしで進めたいっ…!けど、無理かもしれない………ーーツガイ表現がありますが、出てきません

外では氷の騎士なんて呼ばれてる旦那様に今日も溺愛されてます
刻芦葉
恋愛
王国に仕える近衛騎士ユリウスは一切笑顔を見せないことから氷の騎士と呼ばれていた。ただそんな氷の騎士様だけど私の前だけは優しい笑顔を見せてくれる。今日も私は不器用だけど格好いい旦那様に溺愛されています。

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜
京
恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。
右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。
そんな乙女ゲームのようなお話。
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果
てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。
とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。
「とりあえずブラッシングさせてくれません?」
毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。
そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。
※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる