【騎士王と主の伝説】18禁乙女ゲーの世界に来たからには全力で推しを幸せにします【風丸編】

知見夜空

文字の大きさ
上 下
17 / 68
第4話・〇〇しないと出られない部屋レベル2

キスしないと出られない部屋再び

しおりを挟む
 剣と魔法のRPGに取り組む時間が増えると言うことは、スローライフを楽しむ余裕が減ると言うことです。釣りや牧場要素については、釣りの師匠や老夫婦さんたちが私の事情を知って

『由羽ちゃんは国のために、大事な仕事をしているんでしょう? 無理に手伝わなくても食材は分けてあげるから、私たちのことは気にしないで』

 と前よりお手伝いの時間は減ってしまったのに、食材を分けていただいています。

 私の畑に関しても

『導き手としての仕事が忙しいなら、僕が由羽の代わりに畑を見てあげるよ』

 と、まさかのユニちゃんが畑のお世話を買って出てくれました。神秘の森の主であるユニちゃんは、居るだけで植物に好影響を与えるそうです。神秘の森から、たまにお城の畑の様子を見に来てくれるようになったユニちゃんのお陰で、私の野菜たちは前より新鮮元気になりました。

 私は本当に色んな人たちに助けられています。ダンジョンに入る平日は無理ですが、休日はなるべくお手伝いして、皆さんに恩返しできたらいいなと思いました。


 とは言え、導き手として呼ばれたのですから、騎士の育成が最優先です。今日も風丸とダンジョンに入り、彼がモンスターと戦っている間、私は回避したりアイテムでサポートしたりしました。メインで戦っている風丸ほどではありませんが、2人しか居ないと私がミスした分、彼が不利になってしまうので、なかなか気が抜けません。

 それでも今日もなんとか無事に切り抜けて、またお題部屋に来たのですが

「今回のお題はなんでしたか?」
「またキスだってさ。さて今回はどこにしてやろうか?」

 獲物に飛びかかる前の猫みたいに笑う風丸に、私は慌てて

「手にしてください! 手でお願いします! 顔にされたら爆発します!」

 ライトなスキンシップには慣れましたが、やっぱりキスは恋人同士がするものというイメージが強くて、推しにされるのは絶対に無理でした。

 私に拒否された風丸は

「されるのが嫌なら、マスターちゃんが俺にするって手もあるんだぜ?」
「えっ? 私が風丸にするんですか?」

 思いがけない提案に、ちょっと戸惑いましたが

「うーん。まぁ、確かにされるよりもするほうが、ダメージが少ないかもしれませんよね。じゃあ、手を……って、なんで引っ込めるんですか?」

 風丸はなぜか自分の背中に両手を隠すと、ニパッと笑って

「顔にしてくんなきゃ、やーだ」

 語尾に星がついているような、おどけた声で言う風丸に

「いきなりの駄々っ子!? か、可愛いワガママですが、頬やオデコにするのも結構恥ずかしいですよ?」
「この間は猫みたいって可愛がってくれたじゃん。口ならともかく頬や額ならペットにだってするだろ?」
「まぁ、そうかもしれませんが……」

 下心があるからこそ躊躇っていると、風丸はキュルン顔で首を傾げて

「好きなだけ甘えていいって言ったのに。俺が可愛くないの、ご主人様?」
「アーッ!? 可愛い! 間違いなく世界でいちばん可愛いです~!」

 太陽を直視したように目を押さえて悶える私に、風丸はニヤッと笑って

「じゃあ、してよ」
「うぅ、そんなに言うんでしたら……じゃ、じゃあ、ほっぺにしますね?」

 立った状態だと届かないので、ちょっとだけ屈んでもらいます。近づいた顔にドキドキしながら、滑らかな頬に口づけると

「ふふっ、くすぐってぇ」

 子どもみたいにコロコロと笑う風丸に、私は思わず時が止まりました。ゲームでは顏は笑っていても目の奥は冷めていたのに、こんなに無邪気な笑顔ができるんですね。

 推しのキラキラ笑顔を目の当たりにして固まる私をよそに、風丸は笑みを残したままの表情で

「アンタにキスされんの、気持ちいい。もっとしてよ、マスターちゃん」
「えっ!? でも、もう宝箱出てますけど!?」

 お題はこれでクリアしているのに、なぜか風丸は

「別にいいじゃん、すぐに出なくても。ちょっとゆっくりして行こうぜ」
「わっ、風丸!?」

 風丸は私をベッドに引っ張り込むと
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

逃げて、追われて、捕まって

あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。 この世界で王妃として生きてきた記憶。 過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。 人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。 だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。 2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ 2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。 **********お知らせ*********** 2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。 それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。 ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。

魔性の大公の甘く淫らな執愛の檻に囚われて

アマイ
恋愛
優れた癒しの力を持つ家系に生まれながら、伯爵家当主であるクロエにはその力が発現しなかった。しかし血筋を絶やしたくない皇帝の意向により、クロエは早急に後継を作らねばならなくなった。相手を求め渋々参加した夜会で、クロエは謎めいた美貌の男・ルアと出会う。 二人は契約を交わし、割り切った体の関係を結ぶのだが――

転生した世界のイケメンが怖い

祐月
恋愛
わたしの通う学院では、近頃毎日のように喜劇が繰り広げられている。 第二皇子殿下を含む学院で人気の美形子息達がこぞって一人の子爵令嬢に愛を囁き、殿下の婚約者の公爵令嬢が諌めては返り討ちにあうという、わたしにはどこかで見覚えのある光景だ。 わたし以外の皆が口を揃えて言う。彼らはものすごい美形だと。 でもわたしは彼らが怖い。 わたしの目には彼らは同じ人間には見えない。 彼らはどこからどう見ても、女児向けアニメキャラクターショーの着ぐるみだった。 2024/10/06 IF追加 小説を読もう!にも掲載しています。

【完結】氷の王太子に嫁いだら、毎晩甘やかされすぎて困っています

21時完結
恋愛
王国一の冷血漢と噂される王太子レオナード殿下。 誰に対しても冷たく、感情を見せることがないことから、「氷の王太子」と恐れられている。 そんな彼との政略結婚が決まったのは、公爵家の地味な令嬢リリア。 (殿下は私に興味なんてないはず……) 結婚前はそう思っていたのに―― 「リリア、寒くないか?」 「……え?」 「もっとこっちに寄れ。俺の腕の中なら、温かいだろう?」 冷酷なはずの殿下が、新婚初夜から優しすぎる!? それどころか、毎晩のように甘やかされ、気づけば離してもらえなくなっていた。 「お前の笑顔は俺だけのものだ。他の男に見せるな」 「こんなに可愛いお前を、冷たく扱うわけがないだろう?」 (ちょ、待ってください! 殿下、本当に氷のように冷たい人なんですよね!?) 結婚してみたら、噂とは真逆で、私にだけ甘すぎる旦那様だったようです――!?

次期騎士団長の秘密を知ってしまったら、迫られ捕まってしまいました

Karamimi
恋愛
侯爵令嬢で貴族学院2年のルミナスは、元騎士団長だった父親を8歳の時に魔物討伐で亡くした。一家の大黒柱だった父を亡くしたことで、次期騎士団長と期待されていた兄は騎士団を辞め、12歳という若さで侯爵を継いだ。 そんな兄を支えていたルミナスは、ある日貴族学院3年、公爵令息カルロスの意外な姿を見てしまった。学院卒院後は騎士団長になる事も決まっているうえ、容姿端麗で勉学、武術も優れているまさに完璧公爵令息の彼とはあまりにも違う姿に、笑いが止まらない。 お兄様の夢だった騎士団長の座を奪ったと、一方的にカルロスを嫌っていたルミナスだが、さすがにこの秘密は墓場まで持って行こう。そう決めていたのだが、翌日カルロスに捕まり、鼻息荒く迫って来る姿にドン引きのルミナス。 挙句の果てに“ルミタン”だなんて呼ぶ始末。もうあの男に関わるのはやめよう、そう思っていたのに… 意地っ張りで素直になれない令嬢、ルミナスと、ちょっと気持ち悪いがルミナスを誰よりも愛している次期騎士団長、カルロスが幸せになるまでのお話しです。 よろしくお願いしますm(__)m

嫌われ女騎士は塩対応だった堅物騎士様と蜜愛中! 愚者の花道

Canaan
恋愛
旧題:愚者の花道 周囲からの風当たりは強いが、逞しく生きている平民あがりの女騎士ヘザー。ある時、とんでもない痴態を高慢エリート男ヒューイに目撃されてしまう。しかも、新しい配属先には自分の上官としてそのヒューイがいた……。 女子力低い残念ヒロインが、超感じ悪い堅物男の調子をだんだん狂わせていくお話。 ※シリーズ「愚者たちの物語 その2」※

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

処理中です...