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第2話・〇〇しないと出られない部屋レベル1

スキンシップに躊躇いの無い風丸です

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 私が風丸に一角獣の腕輪を貸したのは、純粋に戦闘に役立ててもらうためだったのですが

「もう金髪ちゃんの横暴に耐えられないから、これからは麦わらちゃんにつくわ~」
「えっ? 私につくって?」

 どうやら風丸は、あのブレスレットのせいでエバーシュタインさんと揉めてしまったらしく、急に私のもとを訪ねると

「正式な導き手が決まるまでは、麦わらちゃんの忍になる。というわけで、今日からよろしくな。マスターちゃん」

 ポンと肩を叩かれて、私は思わず「ええっ!?」と叫びました。剣と魔法のRPGの世界で、1人だけのんびりスローライフをしていたのに、急に魔王を再封印するお役目に戻されたのだから、そりゃ青天の霹靂です。

 けれど風丸によれば、エバーシュタインさんのところはアルゼリオさんと組める以外は、本当にデメリットしか無かったそうです。また私が貸したブレスレットを風丸に売れと迫った話も聞きました。他の人の騎士に贈り物をする私のほうが非常識なのかもしれません。しかし相当プッツン来ている様子なのを聞いて、こりゃ元には戻れまいと私も覚悟を決めました。


 風丸の心変わりにより急遽、導き手の座に舞い戻ったことを律子さんに伝えると

「じゃあ、これからは由羽ちゃんもダンジョンに入るってこと?」
「うぅ、はい。そのようです。風丸のためとは言え、私は皆さんと違って鈍臭いので、ちょっと気が重いです」

 不安を吐露すると、律子さんはクールな面差しのままキラッと目を光らせて

「だったら尚更、万全の準備が必要だね」

 それから律子さんは私を連れて街に繰り出すと、冒険初心者の私の代わりに装備を見立ててくれました。しかも「前に支度金をくれたお礼に」と私に万一のことが無いように高性能な分、お高い防具や靴だけでなく回復アイテムまで買ってくれました。

 私があげた支度金なんて目じゃない大きすぎるリターンに

「り、律子さん。支度金なんてちょっとだったのに、こんなにいただくのは悪いです」

 あまりに手厚いサポートに恐縮する私に、律子さんは頼もしい態度で

「遠慮しないで受け取って。単にお礼って言うだけじゃなくて、私が由羽ちゃんにしてあげたいんだ。由羽ちゃんには絶対に、怪我して欲しくないから」
「り、律子さん~」

 先輩力53万の律子さんのおかげで、私は分不相応なほど立派な装備を手に入れて、ステータスが強化されました。


 そして装備を整えた翌日。はじめて風丸とダンジョンに入ったのですが

「疲れたかい? 麦わらちゃん」
「うぅ、はい。装備で底上げされているとは言え、ただの一般人なので流石にちょっと疲れました」

 ここに来てからほとんど農作業用の服と麦わら帽子だったので、RPGらしく能力値に補正がつくローブやブーツを装備できたのは嬉しかったです。しかし体力や素早さは向上したものの、広大なダンジョン内をモンスターを警戒しながら移動するのは、やはり骨でした。

 そんな私を気遣ってか、風丸は笑顔である場所を指して

「じゃあ、ちょっとそこで休もうぜ」
「えっ? ダンジョンの中に休憩できる場所なんてありましたっけ? ……って、ここ特殊部屋じゃないですか!」

 扉についているボタンに描かれたモンスターマークとハートマークを見て、私はそれが特殊部屋だと悟りました。特殊部屋は各階に1つ存在し、モンスターマークを押すと強力なエリアボスが待つ異空間に。ハートマークを押すと、ピンクなお題をこなさないと出られない部屋に転送されます。

 ダンジョンの先輩である風丸も、当然それは知っているはずですが

「へぇ。ダンジョンに潜るのははじめてなのに、よく知っていたな。だったら説明は要らないよな? 早速入ろうぜ」
「いやいやいや! 何あっさりハートボタンを押そうとしているんですか!? 風丸のほうこそ何が起きるか分かっているんですか!?」
「だから入ろうとしているんじゃん。1人で戦う覚悟は決めたけど、戦闘は有利なほうがいいからね。『隠形おんぎょう』でできる限りダンジョンを進んで、特殊部屋の宝箱を開けまくって、装備を整えてからレベルを上げようぜ」

 『隠形』とは風丸のスキルで、敵に見つからずにサクサク移動できます。あまりにレベル差があると見つかってしまうのですが、自分のレベルよりも低い敵とは、いちいち戦わずに済む便利な能力です。

 『隠形』を使って装備を整えてから、レベルを上げるパターンは確かにゲームではよくやりました。単に効率だけじゃなくキャラとのイチャイチャを見るために、そもそもゲームをやっているので。

 けれど、お題をクリアして宝箱を手に入れるには

「でもその方法で行くには、私とあれこれしないといけないんですよ? 大丈夫なんですか、風丸?」

 しかし私の心配をよそに、風丸はケロッとした顔で

「俺の心配よりも自分の心配をしたら? まぁ、俺は装備が欲しいから、無理にでも手伝ってもらうけどね」
「わーんッ!? 風丸の馬鹿ぁ!」

 私の覚悟が定まらないうちに、お題部屋へと転送されました。
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