殺戮王から逃げられない

知見夜空

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オマケ・転生しても逃がさない

最終話・どれだけ姿が変わろうと(性描写有り)

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 偽ドーエスを前世に飛ばしたあと。

 ケネンの部屋には、ナンデとドーエスだけが残された。ドーエスが視線を向けると、ナンデはビクッと俯いた。

 しかしそれは以前のように単なる恐怖ではなく

「なぜ顔を隠す?」
「あっ、だって……私は前とは違うので……」

 前世と比べて醜いと思われることをナンデは恐れたが、

「そう言えば、私にだけは顔を見られたくないと言っていたな」

 ドーエスはナンデに歩み寄ると、彼女の顎を掴み顔を上げさせて

「ど、ドーエス様……んっ」

 躊躇いなく重ねられた唇に、ナンデは目を見張って

「なんでキスなさるんですか? こんな醜い女の唇に」

 ドーエスはナンデの卑屈を笑いながら、真っ直ぐに彼女を見つめて

「外見などどうでもよい。私が惹かれたのは、そなたの容姿ではなく、私を恐れ震えあがるそなたの魂だ」

 ドーエスの前でこそナンデは卑屈になってしまうが、美しい容姿と高貴な身分を失っても、他の人間には自分の矜持を保ち続けた。そんな気丈さがあるからこそ、自分にだけ弱り震える様をドーエスは愛おしく思う。

 しかしそれはそれとして

「……まぁ、そなたが気になるなら、手ずから整えてやってもよいが?」

 ドーエスに両手で顔を挟まれたナンデは、魔改造の気配を察知して

「アーッ!? このままでお願いしますぅぅ!」

 懐かしい絶叫に、ドーエスは喉の奥で笑うと再び唇を寄せた。口づけはすぐに深くなり、グッと腰を引き寄せられたナンデは

「ちょっ、ドーエス様。もしかして、ここでするんですか? すぐそこで父が死んでいるのに?」
「前世でもそうだっただろう。だいたい肉体が壊れただけで、霊体は無事だ。永遠の別れではないのだから、気にするほどのことではない」

 ドーエスは部屋の隅に目を向けると

「そなたもせっかく夫婦が再会したのに、喪に服せとは言わないだろう? ケネン」

 ナンデに霊視能力はないが、不思議とケネンが慌てて首を縦に振っているのが見える気がした。

 ケネンのほうも、ナンデが口にしたわけではないが

(もしそこに居るなら、これから先のことは見ないで欲しい……)

 という娘の無言の願いを汲み取って、さっさと冥界へ旅立った。


 ドーエスには珍しく場所だけはナンデの意向を汲んで、ケネン殺害&魔改造が行われた現場からナンデの部屋へ移った。

 死体があったら落ち着かないと思ったが、死体が無いと普通のセックスのようで、ナンデは逆に落ち着かない気持ちになった。しかしドーエスに嫌と言えるはずもなく、大人しくキスを受け入れ、衣服を脱がされた。

 ただ前世の恵まれた容姿と違い、今世の自分は醜い。他の男には引け目など感じなかったが、非の打ちどころのない容姿を持つドーエスに、醜い我が身を晒すのはやはり恥ずかしくて

「今度の私、醜くてすみません」

 ベッドに裸で押し倒されながら、泣きそうな声で謝るナンデに

「そんなに私の目が怖いか? そなたを醜いと思うのではないかと?」

 ドーエスの問いにどう答えたらいいか分からず、ナンデはただコクンと頷いた。

「そなたは忘れているようだが、猫だった頃からもう3年もそなたを見続けている。しかしその間一度だって、そなたを醜いと思ったことはない」

 ドーエスは労わるような声音で言いながら、ナンデの頬に優しく触れると

「どれだけ姿が変わろうと、そなたは私の可愛い妻だ」
「はぇっ!? か、可愛いって!?」

 真っ赤になって狼狽えるナンデに、ドーエスはニヤニヤと笑って

「今さらか? これまでだって数え切れぬほど愛を囁いて来たつもりだがな」

 確かにドーエスはこれまでも、なんならナンデ以外の女にも「可愛い」だの「愛しい」だの言うことがあった。しかしそれは本気ではなく、愚かな女をその気にさせるための悪意ある戯れだった。

 けれど、先ほどのドーエスの言葉は

「いや、でもなんか、それとは違うような……」

 珍しく慈しみを向けられたナンデは、本当に愛されているのではと錯覚しそうになった。

 しかしすぐにドーエスに弄ばれて死んでいった他の花嫁たちを思い出して

「……と言うのは気のせいでした。お忘れください」

 なんとかナンデが踏み止まると、ドーエスはくくくと笑って

「やはりそなたはなかなか落ちぬな」
(やっぱり罠だったんだ……)

 真に受けなくて良かったとナンデはホッとした。

 ドーエスは言葉どおり、容姿の変化など少しも気にした様子なく、ナンデの身体を隅々まで愛撫した。以前と変わらないどころか、久しぶりの妻の身体に、ドーエスは飢えたように触れて口づける。

 やがて十分に蕩けて潤ったナンデのそこに、ドーエスは自分の猛ったものを押し当てた。

「ど、ドーエス様……」

 破瓜の痛みを恐れるナンデに

「前世と同じだ。痛いのは最初だけ。すぐに良くなるゆえ耐えろ」

 一気に貫かれてナンデは苦痛の声をあげた。しかし痛がっていたのは最初だけで、

「当時の感覚が蘇って来たか? はじめての割に、もう心地よさそうだ」
「だって……怖いけど……」
「けど?」

 姿が変わってもドーエスが自分を捨てないでくれたことに、ナンデは安堵も感じていた。頭ではドーエスの危険性を理解しているのに、いつの間にか体とともに心も絆されていたのかもしれない。

 切ないような甘いような感覚に、頭まで侵されそうになったが、

(でも、それは死亡フラグだから!)

 ドーエス相手に恋に落ちることは= イコール死だと、

「なんでもありません。ただ怖いです」

 この時も類いまれなる警戒心が、ナンデを踏み止まらせた。

 けれどドーエスは鈍い男ではない。ナンデの心に自分への恋情が芽生えかけていることには、とうに気づいている。

 だからこそドーエスは、

「そうか。では存分に怯えろ。私への恐怖を忘れぬうちは、また可愛がってやる」

 ナンデにだけは何度も口にする。自分とともに在るうえで破ってはいけないルールを、決して忘れないように。他の者と同じように、無造作に殺していい対象にならないように。

 脅しめいた言葉や行為はいつしか、ナンデが油断しないための護りになり、これから新たな夫婦の縁を長く紡いでいく。

 今度は偶然ではなく、ナンデと在りたいと望む殺戮王の意思によって。
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