10 / 33
第四話・妻が増えても逃げられない
殺し方に趣向を凝らさないで(残酷描写注意)
しおりを挟む
ナンデは頼むから残りの女たちには大人しくしていて欲しかった。そこでナンデは残りの新人たちに、ドーエスは決して私たちを愛していないから、殺されたくなければ余計な真似をするなと警告したが
「あなたに注意していただかなくても、旦那様の機嫌を損ねるようなことはしないわ」
見るからに高慢で性格の悪そうなハレムという女に、
「本当ね? 奥様面してあの方に馴れ馴れしく振る舞ったりしないわね?」
不安そうに問うナンデを、ハレムは鼻で笑って
「何よ、もしかして嫉妬しているの? まぁ、あなたの顔色なんてまるで悪夢から覚めたばかりのように真っ青ですものね。わたくしやもう1人の子のように、輝く目とバラ色の頬をした美しい女を警戒するのは当然でしょうけど」
「だから、そのノリをやめろって言ってんのよ! アンタはここがハーレムだとでも思ってんの!?」
これ以上、凄惨な現場を目撃したくないナンデは、ハレムに必死に言い聞かせようとした。しかしハレムはナンデの勢いに押されつつも
「何よ、うるさいわね。あなたに言われなくたってうまくやるわよ。用済みのあなたこそ、処分されないように気を付けたら?」
思いがけず的確な指摘に、ナンデは「ぐっ」とダメージを受けた。新人の心配ばかりしてしまったが、確かに自分だってドーエスの関心が下がったからこそ首が危ういかもしれない。
ナンデはなるべく息を潜めて生活することにした。ドーエスの目に留まらなければ「そうだ、殺そう」とは思われないかもしれない。
次にドーエスの魔の手にかかったのはナンデではなく、やはりハレムだった。はじめは様子を見て大人しくしていたが、ドーエスのほうから美しい衣装や宝石をくれたので段々と欲が出た。他の2人の妻よりも、自分にいちばん貢いで欲しくて
「このイヤリングも素晴らしいですけど、ナンデ様がしていらっしゃるようなティアラをわたくしも欲しいわ。お強いドーエス様なら、ティアラくらいいくらでも手に入れられるでしょう? よろしければ今度……」
事後。満足させたご褒美と言わんばかりにアクセサリーを強請って来たハレムを、ドーエスは面白そうに見やって
「まだ結婚してからひと月も経たないのに、ずいぶん私に慣れたようだな? ナンデなど1年近くともに居ても、1度も私にものを強請ったことが無いのに」
ナンデはドーエスとの生活を結婚ではなく、異常者による拉致監禁だと考えている。いつ自分を殺すか分からない狂人に、贅沢が言えるはずもない。生活必需品でさえ、ものすごく遠慮がちにドーエスにお伺いを立てるほどだった。
欲を見せたせいで気分を害してしまったと気づいたハレムは
「す、すみません。ご気分を害されましたか? でもわたくしは決して物欲から申したわけではなくて、妻としてドーエス様のご寵愛を感じたいから、つい欲張ってしまっただけで……」
あくまで「あなたが好きだから」というテイにすれば男の機嫌を取れるだろうと考えたが、ドーエスの場合は
「物を乞うのも情を乞うのも同じことだ。ナンデに言われなかったか? 私は決して妻たちを愛しているわけじゃないから、驕った態度を取るなと」
「あ、ああ……」
ハレムは侵略者ドーエスの怒りを買ってしまったと怯えた。しかし実際のところドーエスは怒っているのではなく、
「まぁ、そんなに宝石が欲しいなら、私が手ずから飾ってやろう。ほら、そのキツネのような目を抉って宝石をはめ込めばもっと美しくなるぞ」
「いぎゃああっ!?」
ナンデは直接、ハレムの死体は見なかった。しかし片づけをした使用人の話では、ハレムは両目をはじめ額や首回りなどに、メリメリと宝石を埋め込まれて死んでいたらしい。
(殺し方に趣向を凝らさないでぇっ!)
多人数が相手だとあっさり殺すが、少人数だと猟奇性を発揮して来るドーエスにナンデは戦慄した。最後の1人だけは、どうか消えないで。私を1人にしないでと願ったが、最後の女もやはり自ら問題を起こす。
「あなたに注意していただかなくても、旦那様の機嫌を損ねるようなことはしないわ」
見るからに高慢で性格の悪そうなハレムという女に、
「本当ね? 奥様面してあの方に馴れ馴れしく振る舞ったりしないわね?」
不安そうに問うナンデを、ハレムは鼻で笑って
「何よ、もしかして嫉妬しているの? まぁ、あなたの顔色なんてまるで悪夢から覚めたばかりのように真っ青ですものね。わたくしやもう1人の子のように、輝く目とバラ色の頬をした美しい女を警戒するのは当然でしょうけど」
「だから、そのノリをやめろって言ってんのよ! アンタはここがハーレムだとでも思ってんの!?」
これ以上、凄惨な現場を目撃したくないナンデは、ハレムに必死に言い聞かせようとした。しかしハレムはナンデの勢いに押されつつも
「何よ、うるさいわね。あなたに言われなくたってうまくやるわよ。用済みのあなたこそ、処分されないように気を付けたら?」
思いがけず的確な指摘に、ナンデは「ぐっ」とダメージを受けた。新人の心配ばかりしてしまったが、確かに自分だってドーエスの関心が下がったからこそ首が危ういかもしれない。
ナンデはなるべく息を潜めて生活することにした。ドーエスの目に留まらなければ「そうだ、殺そう」とは思われないかもしれない。
次にドーエスの魔の手にかかったのはナンデではなく、やはりハレムだった。はじめは様子を見て大人しくしていたが、ドーエスのほうから美しい衣装や宝石をくれたので段々と欲が出た。他の2人の妻よりも、自分にいちばん貢いで欲しくて
「このイヤリングも素晴らしいですけど、ナンデ様がしていらっしゃるようなティアラをわたくしも欲しいわ。お強いドーエス様なら、ティアラくらいいくらでも手に入れられるでしょう? よろしければ今度……」
事後。満足させたご褒美と言わんばかりにアクセサリーを強請って来たハレムを、ドーエスは面白そうに見やって
「まだ結婚してからひと月も経たないのに、ずいぶん私に慣れたようだな? ナンデなど1年近くともに居ても、1度も私にものを強請ったことが無いのに」
ナンデはドーエスとの生活を結婚ではなく、異常者による拉致監禁だと考えている。いつ自分を殺すか分からない狂人に、贅沢が言えるはずもない。生活必需品でさえ、ものすごく遠慮がちにドーエスにお伺いを立てるほどだった。
欲を見せたせいで気分を害してしまったと気づいたハレムは
「す、すみません。ご気分を害されましたか? でもわたくしは決して物欲から申したわけではなくて、妻としてドーエス様のご寵愛を感じたいから、つい欲張ってしまっただけで……」
あくまで「あなたが好きだから」というテイにすれば男の機嫌を取れるだろうと考えたが、ドーエスの場合は
「物を乞うのも情を乞うのも同じことだ。ナンデに言われなかったか? 私は決して妻たちを愛しているわけじゃないから、驕った態度を取るなと」
「あ、ああ……」
ハレムは侵略者ドーエスの怒りを買ってしまったと怯えた。しかし実際のところドーエスは怒っているのではなく、
「まぁ、そんなに宝石が欲しいなら、私が手ずから飾ってやろう。ほら、そのキツネのような目を抉って宝石をはめ込めばもっと美しくなるぞ」
「いぎゃああっ!?」
ナンデは直接、ハレムの死体は見なかった。しかし片づけをした使用人の話では、ハレムは両目をはじめ額や首回りなどに、メリメリと宝石を埋め込まれて死んでいたらしい。
(殺し方に趣向を凝らさないでぇっ!)
多人数が相手だとあっさり殺すが、少人数だと猟奇性を発揮して来るドーエスにナンデは戦慄した。最後の1人だけは、どうか消えないで。私を1人にしないでと願ったが、最後の女もやはり自ら問題を起こす。
10
あなたにおすすめの小説
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
《完結》「パパはいますか?」ある日、夫に似た子供が訪ねて来た。
ヴァンドール
恋愛
嫁いですぐに夫は戦地に赴いた。すると突然一人の男の子が訪ねて来た「パパはいますか?」
その子供の顔は戦地に行った夫にそっくりだった。
冷徹公爵の誤解された花嫁
柴田はつみ
恋愛
片思いしていた冷徹公爵から求婚された令嬢。幸せの絶頂にあった彼女を打ち砕いたのは、舞踏会で耳にした「地味女…」という言葉だった。望まれぬ花嫁としての結婚に、彼女は一年だけ妻を務めた後、離縁する決意を固める。
冷たくも美しい公爵。誤解とすれ違いを繰り返す日々の中、令嬢は揺れる心を抑え込もうとするが――。
一年後、彼女が選ぶのは別れか、それとも永遠の契約か。
侯爵令嬢ソフィアの結婚
今野綾
恋愛
ソフィアは希少なグリーンアイを持つヴィンセントと結婚したが、これは金が欲しいソフィアの父の思惑と高い爵位が欲しいヴィンセントの思惑が一致したからに過ぎない
そもそもヴィンセントには美しい恋人がいる
美男美女と名高いヴィンセントとその恋人は身分に大きな差があるために結婚することは叶わないのだ
その事をソフィアも耳にしており、この結婚が形ばかりのものであることを知っていた
結婚して早々、ソフィアは実家から連れてきた侍女夫婦とあばら家に住むように言われて…
表紙はかなさんです✨
ありがとうございます😊
2024.07.05
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる