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十一月のこと
ある夜の出来事
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ハンナは前回のハロウィンパーティーをきっかけに、待ちの姿勢をやめてジムを落とすと決意した。ジムはミシェルに惹かれているが、叶わぬ恋だと諦めている様子だ。それならハンナを応援したいよ! とカザネは彼女の恋のセコンドになった。
そこでお休み前の金曜日の夜。カザネはブライアンとジムの映画上映会に、ハンナを招待した。ハンナはカザネの厚意を喜んで
「ありがとう、カザネ。機会を作ってくれて」
「ううん。ハンナが色々がんばっているの知っているし。私もできる限りアシストするから、なんでも言ってね」
カザネもハンナと同じくファッションやメイクには疎いので、オシャレの相談には乗れない。ダイエットは方法を調べることはできても、実行するのはハンナだ。意外と手伝えることが少ないので、せめてジムとの接点を増やしてあげたかった。
ちなみにジムの反応は
「ハンナとは学校では仲がいいけど、流石にこの年になると女の子を気軽に家には呼べないから、プライベートで会うことは無かったんだ。でもハンナとは子どもの頃からの付き合いだし、一緒に居て楽しいから、カザネが呼んでくれて良かったよ」
と、ここまでは非常に好感触だったが、
「カザネと仲良くなって分かったけど、友だち付き合いに男も女もないもんね」
要するにカザネとハンナは、ジムにとって異性ではなかった。カザネはそのほうが気楽だが、ジムに恋するハンナはそれでは困る。上映会では部屋を暗くするから、少しはいい雰囲気になるといいなとカザネは期待していた。
それからカザネ、ジム、ハンナ、ブライアンの4人は、ジムの部屋で映画を見始まった。しかし開始早々、カザネはある誤算に気付く。
「ハンナが居るのに今日もホラーなの!?」
心優しいハンナは暴力的かつ悲惨な表現が苦手だ。しかしブライアンによれば、
「目的を考えれば今日こそホラーだろ? 怖がるフリしてくっつくチャンスじゃん」
「えっ? 誰が誰に?」
不思議がるジムを誤魔化すためにブライアンは
「俺がお嬢ちゃんに。「キャー。怖い。助けてー」って」
と笑顔でカザネに抱きついて見せた。裏声でふざけるブライアンに、ジムは呆れ顔で、
「ブライアンはホラーじゃなくても、いつもカザネにくっついているじゃないか」
「えっ? 2人って、いつもこんなに距離が近いの?」
「付き合っているの?」と言わんばかりのハンナの反応に、
「好きで距離が近いんじゃないよ。ブライアンが私をクッションにして来るんだよ」
カザネは不本意そうに反論したが、
「だってお嬢ちゃん、ちょうどいいサイズなんだもん」
ブライアンはカザネを解放するどころか、本格的にクッションにした。そんな2人を目の当たりにしたハンナは
「ジム、ちょっといいかしら」
2人を部屋に残して、ジムとともに廊下に出ると、
「ジム、もしかしてブライアンはカザネが好きなのかしら? 彼はモテる人だけど、以前付き合っていたミシェルやジュリアには、あそこまでベタベタしなかったわよね?」
あそこまでベタベタしないどころか、巻き付いていたのはミシェルやジュリアのほうで、ハンナの記憶ではブライアンの両手は基本ポッケの中だった。
「ハンナもそう思う? 僕もブライアンはカザネが好きなんじゃないかって、本人に聞いてみたことがあるんだけど」
ジムが2人の関係に疑問を持ったのは、ある夜の出来事がきっかけだった。
ハロウィン以降、ブライアンのカザネへのスキンシップはいっそう激しくなった。学校ではカザネが女子に睨まれないように過度の接触は避けているが、ジムの前だと平気でベタベタする。
映画を見たりゲームしたりする時、カザネはブライアンの膝の上が定位置になっていた。最初は抵抗していたカザネだが、最近は疲れたのか屈するまでのスピードが徐々に速くなり、その日もヌイグルミのようにブライアンに抱かれていた。
その日の映画はスリリングなサスペンスやホラーではなく、50年ほど前の名作だった。カザネの好みではなかったようで、うつらうつらする彼女に気付いたブライアンは
「もうお眠かい、お嬢ちゃん? 映画をやめてベッドに行く?」
傍で聞いているジムの耳のほうが、蕩けてしまいそうなほど甘い声。以前からジムは、ブライアンのカザネに対する呼びかけが、どこか優しいことに気付いていたが、この日は特に顕著だった。
それからブライアンは
「コイツを部屋に寝かせて来るわ」
とジムに言うと、カザネをひょいと横抱きにし、部屋まで運んでやった。
カザネの部屋に入ったブライアンは、そのまま彼女をベッドに寝かせて布団をかけた。しかしすぐには立ち去らず、愛おしげに寝顔を見下ろして前髪をかき分けると、露になった額に
「おやすみ、お嬢ちゃん。いい夢を」
とおやすみのキスをした。
そこでお休み前の金曜日の夜。カザネはブライアンとジムの映画上映会に、ハンナを招待した。ハンナはカザネの厚意を喜んで
「ありがとう、カザネ。機会を作ってくれて」
「ううん。ハンナが色々がんばっているの知っているし。私もできる限りアシストするから、なんでも言ってね」
カザネもハンナと同じくファッションやメイクには疎いので、オシャレの相談には乗れない。ダイエットは方法を調べることはできても、実行するのはハンナだ。意外と手伝えることが少ないので、せめてジムとの接点を増やしてあげたかった。
ちなみにジムの反応は
「ハンナとは学校では仲がいいけど、流石にこの年になると女の子を気軽に家には呼べないから、プライベートで会うことは無かったんだ。でもハンナとは子どもの頃からの付き合いだし、一緒に居て楽しいから、カザネが呼んでくれて良かったよ」
と、ここまでは非常に好感触だったが、
「カザネと仲良くなって分かったけど、友だち付き合いに男も女もないもんね」
要するにカザネとハンナは、ジムにとって異性ではなかった。カザネはそのほうが気楽だが、ジムに恋するハンナはそれでは困る。上映会では部屋を暗くするから、少しはいい雰囲気になるといいなとカザネは期待していた。
それからカザネ、ジム、ハンナ、ブライアンの4人は、ジムの部屋で映画を見始まった。しかし開始早々、カザネはある誤算に気付く。
「ハンナが居るのに今日もホラーなの!?」
心優しいハンナは暴力的かつ悲惨な表現が苦手だ。しかしブライアンによれば、
「目的を考えれば今日こそホラーだろ? 怖がるフリしてくっつくチャンスじゃん」
「えっ? 誰が誰に?」
不思議がるジムを誤魔化すためにブライアンは
「俺がお嬢ちゃんに。「キャー。怖い。助けてー」って」
と笑顔でカザネに抱きついて見せた。裏声でふざけるブライアンに、ジムは呆れ顔で、
「ブライアンはホラーじゃなくても、いつもカザネにくっついているじゃないか」
「えっ? 2人って、いつもこんなに距離が近いの?」
「付き合っているの?」と言わんばかりのハンナの反応に、
「好きで距離が近いんじゃないよ。ブライアンが私をクッションにして来るんだよ」
カザネは不本意そうに反論したが、
「だってお嬢ちゃん、ちょうどいいサイズなんだもん」
ブライアンはカザネを解放するどころか、本格的にクッションにした。そんな2人を目の当たりにしたハンナは
「ジム、ちょっといいかしら」
2人を部屋に残して、ジムとともに廊下に出ると、
「ジム、もしかしてブライアンはカザネが好きなのかしら? 彼はモテる人だけど、以前付き合っていたミシェルやジュリアには、あそこまでベタベタしなかったわよね?」
あそこまでベタベタしないどころか、巻き付いていたのはミシェルやジュリアのほうで、ハンナの記憶ではブライアンの両手は基本ポッケの中だった。
「ハンナもそう思う? 僕もブライアンはカザネが好きなんじゃないかって、本人に聞いてみたことがあるんだけど」
ジムが2人の関係に疑問を持ったのは、ある夜の出来事がきっかけだった。
ハロウィン以降、ブライアンのカザネへのスキンシップはいっそう激しくなった。学校ではカザネが女子に睨まれないように過度の接触は避けているが、ジムの前だと平気でベタベタする。
映画を見たりゲームしたりする時、カザネはブライアンの膝の上が定位置になっていた。最初は抵抗していたカザネだが、最近は疲れたのか屈するまでのスピードが徐々に速くなり、その日もヌイグルミのようにブライアンに抱かれていた。
その日の映画はスリリングなサスペンスやホラーではなく、50年ほど前の名作だった。カザネの好みではなかったようで、うつらうつらする彼女に気付いたブライアンは
「もうお眠かい、お嬢ちゃん? 映画をやめてベッドに行く?」
傍で聞いているジムの耳のほうが、蕩けてしまいそうなほど甘い声。以前からジムは、ブライアンのカザネに対する呼びかけが、どこか優しいことに気付いていたが、この日は特に顕著だった。
それからブライアンは
「コイツを部屋に寝かせて来るわ」
とジムに言うと、カザネをひょいと横抱きにし、部屋まで運んでやった。
カザネの部屋に入ったブライアンは、そのまま彼女をベッドに寝かせて布団をかけた。しかしすぐには立ち去らず、愛おしげに寝顔を見下ろして前髪をかき分けると、露になった額に
「おやすみ、お嬢ちゃん。いい夢を」
とおやすみのキスをした。
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