13 / 73
十月のこと
友だちに喝を入れるカザネ
しおりを挟む
ジムがミシェルを好きらしいのはともかく、彼女のパーティーに参加しようとしていることは伝えておいたほうがいいかと、
「えっ? ジムがミシェルのパーティーに出る?」
放課後。ハンナの家に寄ったカザネは、彼女に例のことを話した。
「あんな陽キャの巣窟に行くなんて……ジム、心が壊れちゃわないかしら?」
「ね。私もあんなパーティーピーポーたちのパーティーナイトに出るなんて恐怖しかないけど、ジムはなんか行こうとしているみたいなんだよね……」
ミシェルのコスプレが目当てらしいとは言えずに濁すも、
「多分、少しでもミシェルを見ていたいのね」
冷静に考察するハンナに、カザネは驚いて、
「は、ハンナ、知っていたの? ジムがミシェルを好きだって」
「だって子どもの頃から同じ学校だもの。彼が好きな人くらい知っているわ」
微笑んで見せたのも束の間、彼女はすぐに悲しみに顔を曇らせて、
「でもジムの気持ちはわかる。ミシェルは本当に綺麗だもの。真っすぐでサラサラのブロンドに、真珠のような白い肌。シンデレラのような青い瞳でバレリーナのように華奢で。それに比べて私なんて、髪はチリチリで、肌は黒くて、唇も体も分厚くて、背なんかジムよりも高いくらいで……」
黒い瞳からぽろりと涙を流すと、
「なんで私、こんな風に生まれちゃったんだろう?」
恋する少女にとっては、好きな人の好みが美の基準になる。特にハンナの場合は、子どもの頃からジムがミシェルに憧れる様子を見て来た。だからハンナはミシェルとは正反対の、黒人らしい特徴の全てにコンプレックスがあった。
「は、ハンナ。そんな風に言わないで。ミシェルは確かに綺麗だけど、ハンナにはハンナの良さがあるよ。ジムだってミシェルと比べてハンナはダメだなんて思わないよ」
それはハンナを宥めるためではなくカザネの本心だった。人種や年齢や体型など、色んな特徴を持つ人が居るが、その1人1人に、その人にしかない美しさがあるとカザネは信じている。
しかしカザネの言葉はハンナには届かず、
「でも私は彼に見惚れられたことなんてないもの」
可能性に蓋をして自分の世界に閉じ籠もろうとする彼女に
「~っ、もうハンナ!」
「な、何!?」
突然の大声にビクッとするハンナに、カザネは続けて、
「美の化身みたいなミシェルに臆する気持ちは分かる! でもハンナは今の自分の姿を100%の全力だって言える!? ぶっちゃけ私たちはミシェルと比べて嘆いていいほど、そもそも女子力磨いてない!」
今の自分たちがミシェルに敵わないと言うのは、無加工のジャガイモが彩り豊かなポテトサラダに「ポテサラはいいよね。皆に人気があって」と言うようなものだ。
でも本当は自分にも、なんらかのお惣菜になれる可能性があるんだ。ミシェルと同じにはなれなくても、コロッケやじゃがバターのほうが好きだって言う人も絶対に居るとカザネは熱弁した。
「でも私なんか努力したところでミシェルのようには……」
「ミシェルのようにはならなくていいよ! ハンナはハンナなりの美人になればいい! そうすれば少なくとも、今のハンナよりはジムをハッとさせられるはずだよ!」
カザネに熱く言い聞かされたハンナは、
「か、カザネ……」
胸を打たれたように瞳を揺らすと、グッと力強い顔つきになって
「そうね。私、甘えていた。今のままの自分でジムに振り向いて欲しいなんて。ミシェルはもともいいけど、明らかに美容やオシャレをがんばっているものね。ジムが振り向いてくれないと嘆きたいなら、やれるだけの努力をしてからすべきよね」
自分で自分を説得すると、
「私、どうせブスだからなんて言ってないで、髪型とか服装とか、もっとがんばってみる!」
「ハンナ、偉い! きっと素敵になるよ!」
この日を機にハンナはジムを振り向かせるべく、積極的に行動&変身する努力をすると誓った。
「えっ? ジムがミシェルのパーティーに出る?」
放課後。ハンナの家に寄ったカザネは、彼女に例のことを話した。
「あんな陽キャの巣窟に行くなんて……ジム、心が壊れちゃわないかしら?」
「ね。私もあんなパーティーピーポーたちのパーティーナイトに出るなんて恐怖しかないけど、ジムはなんか行こうとしているみたいなんだよね……」
ミシェルのコスプレが目当てらしいとは言えずに濁すも、
「多分、少しでもミシェルを見ていたいのね」
冷静に考察するハンナに、カザネは驚いて、
「は、ハンナ、知っていたの? ジムがミシェルを好きだって」
「だって子どもの頃から同じ学校だもの。彼が好きな人くらい知っているわ」
微笑んで見せたのも束の間、彼女はすぐに悲しみに顔を曇らせて、
「でもジムの気持ちはわかる。ミシェルは本当に綺麗だもの。真っすぐでサラサラのブロンドに、真珠のような白い肌。シンデレラのような青い瞳でバレリーナのように華奢で。それに比べて私なんて、髪はチリチリで、肌は黒くて、唇も体も分厚くて、背なんかジムよりも高いくらいで……」
黒い瞳からぽろりと涙を流すと、
「なんで私、こんな風に生まれちゃったんだろう?」
恋する少女にとっては、好きな人の好みが美の基準になる。特にハンナの場合は、子どもの頃からジムがミシェルに憧れる様子を見て来た。だからハンナはミシェルとは正反対の、黒人らしい特徴の全てにコンプレックスがあった。
「は、ハンナ。そんな風に言わないで。ミシェルは確かに綺麗だけど、ハンナにはハンナの良さがあるよ。ジムだってミシェルと比べてハンナはダメだなんて思わないよ」
それはハンナを宥めるためではなくカザネの本心だった。人種や年齢や体型など、色んな特徴を持つ人が居るが、その1人1人に、その人にしかない美しさがあるとカザネは信じている。
しかしカザネの言葉はハンナには届かず、
「でも私は彼に見惚れられたことなんてないもの」
可能性に蓋をして自分の世界に閉じ籠もろうとする彼女に
「~っ、もうハンナ!」
「な、何!?」
突然の大声にビクッとするハンナに、カザネは続けて、
「美の化身みたいなミシェルに臆する気持ちは分かる! でもハンナは今の自分の姿を100%の全力だって言える!? ぶっちゃけ私たちはミシェルと比べて嘆いていいほど、そもそも女子力磨いてない!」
今の自分たちがミシェルに敵わないと言うのは、無加工のジャガイモが彩り豊かなポテトサラダに「ポテサラはいいよね。皆に人気があって」と言うようなものだ。
でも本当は自分にも、なんらかのお惣菜になれる可能性があるんだ。ミシェルと同じにはなれなくても、コロッケやじゃがバターのほうが好きだって言う人も絶対に居るとカザネは熱弁した。
「でも私なんか努力したところでミシェルのようには……」
「ミシェルのようにはならなくていいよ! ハンナはハンナなりの美人になればいい! そうすれば少なくとも、今のハンナよりはジムをハッとさせられるはずだよ!」
カザネに熱く言い聞かされたハンナは、
「か、カザネ……」
胸を打たれたように瞳を揺らすと、グッと力強い顔つきになって
「そうね。私、甘えていた。今のままの自分でジムに振り向いて欲しいなんて。ミシェルはもともいいけど、明らかに美容やオシャレをがんばっているものね。ジムが振り向いてくれないと嘆きたいなら、やれるだけの努力をしてからすべきよね」
自分で自分を説得すると、
「私、どうせブスだからなんて言ってないで、髪型とか服装とか、もっとがんばってみる!」
「ハンナ、偉い! きっと素敵になるよ!」
この日を機にハンナはジムを振り向かせるべく、積極的に行動&変身する努力をすると誓った。
0
お気に入りに追加
139
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます
沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる