花の舞散る季節

色音花絵

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季節四 秋

秘めた想い

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「春。私はずっと、春を守らなければと思っていた。けれど、もうその必要は無くなったようだな。春はもう、充分に強くなった」
「ありがとうございます…」
 面と向かってそう言われ、恥ずかしさを覚えた春は俯いて顔を赤らめた。その言葉に嬉しさを感じつつも、少しながら寂しさを感じていた。その反応に、蒼が一瞬微笑を浮かべ、話を続ける。
「…だから、これからは『妹』としてではなく、一人の『女性』として接しようと思う」
 その言葉に、春が勢い良く顔を上げた。その顔は、まるで熟れた柿のように真っ赤だった。蒼はまた、微かに微笑んでいる。
「それ……は、どのような意味でしょうか?」
「既に分かっているのだろう?  顔が真っ赤だぞ」
 言われて、春は思わず顔を背けた。頬を触ってみて、その熱さに、自分のことながら驚く。その後ろから、そっと蒼が抱き締める。背中から、温もりが伝わった。
「あの、蒼…?」
「暖かいだろう」
「はい」
「私の心は、この温もりよりもっと、もっと、熱くなっているのだ…」
 蒼が春に回した手に力を込めた。緊張からか、その手は微かに震えている。
「それは、私を好いてくださっている…という意味ですか?」
「いや、違う」
「違う?」
 春が鸚鵡おうむ返しに問いた。そういう意味でないと言うならば、一体どんな意味なのだろう。春には分からなかった。
「私は春を好いているのではない。春を、愛しているのだ。それで、春は…どうなんだ?」
 春の瞳が、驚きで真ん丸に見開いた。そして、顔だけでなく、耳までも赤く染めて、春は切れ切れに言葉を発した。
「え、あの、本当に?」
「このようなこと、嘘をつくと思うのか?」
 背中から回された手が、小刻みにかたかたと震えている。春はその手に、自分の手をゆっくりと重ねた。蒼の手は少し汗ばみ、冷たかった。少しでも温かくなるように、その手をぎゅっと握る。
「嘘だとは申しておりません。しかし、私達は兄と妹です。このようなこと、許される訳がありません」
「許される訳がない?  …そんなことは関係がない。私は、春の気持ちを訊いているのだ」
 真面目に答えた言葉を、蒼が呆れたように吐き捨てた。すると、春が面食らったように呟く。
「私の、気持ち、ですか?」
「そうだ。兄弟、家族としてではない、春の私に対する気持ちだ」
「私、私は」
 春は答えに詰まってしまった。宙を見詰めて、ただ考えを巡らせる。答えを探して、自分自身に、ひたすら問い掛けた。
(私の気持ち。私の、蒼に対する気持ちは…?)
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