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ジャンの狙いは護法の珠
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荊の道を走ってゆく巨大牛。
マリンカの服を口にくわえているジャンは、後ろから追いつかれないように勢いつけて走ってゆく。
ジャンの走るスピードが早いせいか、今地面に落とされるのが怖いと思った私は何故か冷汗が流れる。
話せる余裕などない。
身体が揺れているだけに、風が気持ちいいとか、そんなことなんて考えられない。
森の景色も見る余裕もない。
ジャンの走るスピードが、だんだん速くなってきた。
このスピードで怪我をしたくない私は、思わず身体に力が入ってしまった。
いろんなことを思う私は、自分の身体が落とされないよう気にしていた。
怖さのあまり、私はもっと最悪なことを考えてしまった。
もしも、荊の道でジャンに私の身体を投げ飛ばされたら、私は起き上がることもできず、立ち上がれないだろう。
そう思うと、ジャンの力がなんだか怖く感じた。
巨大牛の足で身体を踏まれたら、私は生きていられないだろうな。
「「姫様~」」
ジャンの後から、さっきまで気絶していた爺とレン殿が聞こえた。
二人の声が聞いたせいか、私は身体の力が抜けた。
「爺~レン殿~」
二人の姿は見えづらいが、私はいつものように後ろにいる二人に叫んだ。
私の姿を追ってきてくれるとは、今は正直に嬉しかった。
二人が追ってきてくれるなら、私も何かしないと……
私は揺れ動く中、ジャンの身体に触れようとしていた。
片手で手を伸ばすとジャンの身体に紐みたいのが括り付けられていたのに気が付いた。
これなら私でも掴めるかも……
身体を少し動かして、少し手を伸ばすとジャンの身体の紐が握れた。
《!!》
ジャンは身体をビクッとさせた。
気づいたのか。
私は上目でジャンを見た。
彼は自分のペースを崩さず勢いよく走って行った。
荊の道を通り抜けて森から出たジャンは、ゆっくりと足を止めた。
私は、ジャンの口からポイッと放り出された。
「え、ちょっと。落とすならゆっくり落としてよ!」
幸い落ちた時、私は両手ついて倒れたから良かった。
女子に対しては丁寧に扱うべきでしょう。
私はジャンに怒っていた。爺のことだって許しているわけじゃない。
動物と同じ動きをしていたジャンは、身体の体勢を変えた。
《怪我がないように、落としたんだぞ》
すかした顔で私に言うジャンは、最初に会った時とは変わらない感じだ。
「ジャン。どうして、ガーディル国に行こうとするの?訳を教えて」
私は本当の理由が知りたかった。
人間と同じ立ち方をするジャンは、足をくずして、胡坐をして座る。
《姫よ。ガール国には護法の珠があるのは本当なのか?》
巨大牛が胡坐座りをするとは……牛の進化なのか。本物の王子か分からなくなってきた。
いつもの様にジャンに話そう。
私は冷静さを装った。
「あるわよ。でも、護法の珠は母上が持っていて、国の住民と父上と王宮の皆を護る力になっているの」
《それは、一つしかないのか?それともまだあるのか?》
「一つだけよ。護法の珠を狙っていたの?」
《それがあれば、シンリ国の王宮にいる貴族、関係者達を元に戻せるからな。譲ってはくれないか?》
ジャンは率直に私に言ってきた。
やっと、ジャンの本心が聞けた気がした。でも、叶えられない話だ。
マリンカは思いつめた顔でジャンに言う。
「それはダメだ。国も今は大変な時なのだ。母上から奪うつもりなら私が許さない」
《クソッ。姫の母上からじゃ、護法の珠など奪えないではないか!》
ジャンが地面に拳を叩くと、地面が揺れていた。
彼の近くにいた私でも身体がフラフラ動いた。
「ジャン。あなた本当に……」
私の話中に、爺が話しかけてきた。
「姫様! 牛と話さなくていいですぞ」
「コイツの処分は私達に任せて下され」
マリンカの後を追いかけてきたセナ執事とレン殿は、ジャンに敵意を抱いていた。
二人はジャンに刃物を向けた。
「マリンカ様。牛から離れてください」
爺は私を連れ戻そうとすると、ジャンは大きな声で威嚇した。
《来るな。ジジイ》
ジャンの威嚇で、二人は私から離れた。
爺とレン殿は、胡坐座りしているジャンを狙うかのように見ていた。
レン殿は前にでて、ジャンを何度も刺すが、レン殿の剣を何度もかわしているジャンも凄い。
「化け物牛。姫を食ったら殺すぞ」
一振りの刃がジャンの脇腹を傷つけた。本当にジャンを倒すかも……
レン殿の顔つきが戦う顔になっている。
レン殿を止めないと……
私はジャンから離れた。
レン殿の前にでた私は大声で二人に言い、振り向きながらジャンに言う。
「待ってレン殿。やめて! 爺も参戦しないで! 牛王子。いえ、シンリ国王子ジャン。二人を倒さないで」
「「姫様」」
マリンカの服を口にくわえているジャンは、後ろから追いつかれないように勢いつけて走ってゆく。
ジャンの走るスピードが早いせいか、今地面に落とされるのが怖いと思った私は何故か冷汗が流れる。
話せる余裕などない。
身体が揺れているだけに、風が気持ちいいとか、そんなことなんて考えられない。
森の景色も見る余裕もない。
ジャンの走るスピードが、だんだん速くなってきた。
このスピードで怪我をしたくない私は、思わず身体に力が入ってしまった。
いろんなことを思う私は、自分の身体が落とされないよう気にしていた。
怖さのあまり、私はもっと最悪なことを考えてしまった。
もしも、荊の道でジャンに私の身体を投げ飛ばされたら、私は起き上がることもできず、立ち上がれないだろう。
そう思うと、ジャンの力がなんだか怖く感じた。
巨大牛の足で身体を踏まれたら、私は生きていられないだろうな。
「「姫様~」」
ジャンの後から、さっきまで気絶していた爺とレン殿が聞こえた。
二人の声が聞いたせいか、私は身体の力が抜けた。
「爺~レン殿~」
二人の姿は見えづらいが、私はいつものように後ろにいる二人に叫んだ。
私の姿を追ってきてくれるとは、今は正直に嬉しかった。
二人が追ってきてくれるなら、私も何かしないと……
私は揺れ動く中、ジャンの身体に触れようとしていた。
片手で手を伸ばすとジャンの身体に紐みたいのが括り付けられていたのに気が付いた。
これなら私でも掴めるかも……
身体を少し動かして、少し手を伸ばすとジャンの身体の紐が握れた。
《!!》
ジャンは身体をビクッとさせた。
気づいたのか。
私は上目でジャンを見た。
彼は自分のペースを崩さず勢いよく走って行った。
荊の道を通り抜けて森から出たジャンは、ゆっくりと足を止めた。
私は、ジャンの口からポイッと放り出された。
「え、ちょっと。落とすならゆっくり落としてよ!」
幸い落ちた時、私は両手ついて倒れたから良かった。
女子に対しては丁寧に扱うべきでしょう。
私はジャンに怒っていた。爺のことだって許しているわけじゃない。
動物と同じ動きをしていたジャンは、身体の体勢を変えた。
《怪我がないように、落としたんだぞ》
すかした顔で私に言うジャンは、最初に会った時とは変わらない感じだ。
「ジャン。どうして、ガーディル国に行こうとするの?訳を教えて」
私は本当の理由が知りたかった。
人間と同じ立ち方をするジャンは、足をくずして、胡坐をして座る。
《姫よ。ガール国には護法の珠があるのは本当なのか?》
巨大牛が胡坐座りをするとは……牛の進化なのか。本物の王子か分からなくなってきた。
いつもの様にジャンに話そう。
私は冷静さを装った。
「あるわよ。でも、護法の珠は母上が持っていて、国の住民と父上と王宮の皆を護る力になっているの」
《それは、一つしかないのか?それともまだあるのか?》
「一つだけよ。護法の珠を狙っていたの?」
《それがあれば、シンリ国の王宮にいる貴族、関係者達を元に戻せるからな。譲ってはくれないか?》
ジャンは率直に私に言ってきた。
やっと、ジャンの本心が聞けた気がした。でも、叶えられない話だ。
マリンカは思いつめた顔でジャンに言う。
「それはダメだ。国も今は大変な時なのだ。母上から奪うつもりなら私が許さない」
《クソッ。姫の母上からじゃ、護法の珠など奪えないではないか!》
ジャンが地面に拳を叩くと、地面が揺れていた。
彼の近くにいた私でも身体がフラフラ動いた。
「ジャン。あなた本当に……」
私の話中に、爺が話しかけてきた。
「姫様! 牛と話さなくていいですぞ」
「コイツの処分は私達に任せて下され」
マリンカの後を追いかけてきたセナ執事とレン殿は、ジャンに敵意を抱いていた。
二人はジャンに刃物を向けた。
「マリンカ様。牛から離れてください」
爺は私を連れ戻そうとすると、ジャンは大きな声で威嚇した。
《来るな。ジジイ》
ジャンの威嚇で、二人は私から離れた。
爺とレン殿は、胡坐座りしているジャンを狙うかのように見ていた。
レン殿は前にでて、ジャンを何度も刺すが、レン殿の剣を何度もかわしているジャンも凄い。
「化け物牛。姫を食ったら殺すぞ」
一振りの刃がジャンの脇腹を傷つけた。本当にジャンを倒すかも……
レン殿の顔つきが戦う顔になっている。
レン殿を止めないと……
私はジャンから離れた。
レン殿の前にでた私は大声で二人に言い、振り向きながらジャンに言う。
「待ってレン殿。やめて! 爺も参戦しないで! 牛王子。いえ、シンリ国王子ジャン。二人を倒さないで」
「「姫様」」
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