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下り列車

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「なにそれー。わかんないよぉ。」と、友里恵は笑う。
あんまり理系じゃない子だ(笑)

でも「下り列車は居なかったのね」と、貨物時刻表を見、友里恵はつぶやく。

その時間帯、明け方に掛けては
東京に近いこの場所では、上り貨物ばかりになる。
それは、通勤電車が走り難いので
朝になる前に、東京に着いてしまうため、である。

「つまり、臨時列車が走っていない限りは、下り列車に跳ねられた可能性はない。か」と
友里恵は、駅の時刻表と見比べて。

臨時列車が走っていて、はねられたら
もっと大きな騒ぎになるだろうし...。





「でも、北口にふたりで来たとしても、下りホームね、南側の。
そっちに降りても不自然じゃないね。」と、友里恵。

そうだね、と輝彦は考えた。

ふたりだと、違った視点でモノを見られるから面白い。

それに、友里恵はちょっと個性的なので(笑)。


「それで、なんかの拍子にホーム下に転げた。
ふざけて追いかけごっこしてたとか。」と、友里恵は想像するけど
また、自分だったら視点(笑)
40女がそんなことするかなぁ、と輝彦は思ったけど
それも、33男の発想かもしれない。

大学生の若い男の子とはしゃいでいると、心が若返るのかもしれない。
実際、輝彦自身が友里恵と居ると、18歳に戻ったような気になってしまう。

「ぜーんぜん、おじさんっぽくないよぉ。クラスの子より、若いもん。自由だし」と
友里恵はそう言う(笑)のだけれど。



「それで、落っこちた拍子に動かなくなったオーナーを見て
恋人の大学生は怖くなって、逃げた。
あるいは軽いケンカしてて、揉めて落ちたのかな...と、それだと事故だね。」と
輝彦。

それなら、翌日警官に遭遇し、気が動転していたのも道理....だけれども。
警察はそれを殺人容疑とせず、鉄道会社も事故にしなかった。

当日の新聞を調べると、自殺との表現はない。
周囲への配慮であろうか、「片野駅付近での事故」としか。
名前も出されていなかった。

「でも、だんなさんも冷たいね」と、友里恵。
だって、奥さんが死んだってのに、事務的っていうか。と、続け

「ねえ、あたしが死んだら、泣いてくれる?」なんて
かわいいことを言うので、輝彦は笑って

「キミが先に死ぬ筈ないんじゃないかなぁ。だいたい、僕の方が年上なんだし。16年も」と
輝彦は気になってる事を言うと

「もしものハナシよ、も・し・も」と、友里恵は楽しそうだ。


「そうだなぁ...それは悲しいかな。泣いちゃうかもな。」と、輝彦は、にこにこしながら。

「ホント?」と友里恵は、にっこり。

「うん。だって、まだ、ちっちゃいまんまだし....。」と、輝彦が言うと

友里恵は、耳まで赤くなって、輝彦の腕をひっぱたいた「バカ。気にしてるのにー。バカバカ。」

と?
なんのこと、って、輝彦が尋ねる。

「...まだね、これから大きくなるんだもん。好きな人に触れてもらえばね....。」って
俯いて。


?、輝彦は「ああ、おっぱいか」と、言ったので


「バカバカ、ほんとにもぅ、ばかーーーー!」と、駆け出してホームの端へ
制服のまんまなので、どう見ても変な親子か兄妹か(笑)


さわってないじゃん、まだ(笑)

と、輝彦は言いながら

「おーい、転ぶとあぶないよー。」と、ホームの端っこまで掛けていった友里恵を追いかけた。

「あぶない!」
転びそうになった友里恵を、寸でのところで輝彦は抱きとめた。

小柄で軽い友里恵だから、軽く抑えられた。
普段はきなれないスカートだし、革の靴だから、と
友里恵はちょっと恥ずかしそう。でも、
輝彦の腕の中で「もうちょっと、こーしててぇ」なんて甘えてる(笑)。

「危ないJK愛人みたいじゃん」と、輝彦はわざと軽く。若者ことばで。

「んー、でもあたしたちはコイビトだもーん。フィアンセだし。もう18歳だからタイホされないもーん」(笑)友里恵。

「でも、ちっちゃなキミはひょっとすると中学生に間違えられたりして(笑)」と、輝彦が言うと

抱きついていた腕に噛み付く振りをして、友里恵(笑)

女バンパイヤかい(笑)。

「あ、でも。こんな感じでじゃれてて落ちたのかなぁ。ホーム下。」」と、友里恵は言う。

確かに、友里恵だったから支えられたけど。
大柄40女(笑)では、痩せぎすの文学青年(笑)では支えられずに転落。

レールで頭打って、絶命。

怖くなって逃げた。

そんな推理も成り立つ。

その場合、保護責任遺棄罪、が成立するかどうかだけど
まあ、年少の大学生だし。....。



「でも、コイビトが怪我したら、ふつー助けるよ。」と、友里恵。


「ケンカしてた後、で、例えばもう愛が冷めてた、なんて事だったら
関わりを恐れて逃げた....とか。だって、不倫だし。不貞罪ってあるんだよ、今でも」

ふーん、と、友里恵はうなづく。「フテイザイって、罪重い?」

「大学生の方は、そうでもないだろうね。でも、だんなさんが訴えなければ、なんでもないよ。
浮気なんて、いっぱいあるじゃない。」と、輝彦は言う。


「アナタ、浮気しないでね」と、友里恵は、輝彦の腕にまだ頬をもたれたまま、甘えて。


「僕は、別に。だいたい、あんまり女の人に積極的だったこと、ってないんだ」と、輝彦が言うと



「そーいえば、アタシの時もそんな感じだったかなー。あ、でも、それじゃ過去にいっぱい
がーるふれんどが居たとか?」と、友里恵はすぐに自分のハナシになる(笑)


「フレンドって言うか、お友達はいっぱいできるけど。取材とかで。でもそれっきりだね、ふつう。」
と、輝彦は正直に。


「そっか、それなら許してあげる。これからはウワキなし!」、と、友里恵はぱっ、と離れてジャンプ。

コンクリートのホームに、革靴が当たって硬い音を出した。
意外に響くのは、ホームも、防音壁も音を反射する材質だから。


そんな会話も筒抜けか(笑)

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