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I need to be in love
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駅前の自転車の
いくつかを
リサは、微笑みながら触れて歩いている。
旅、って言う
ふだんと違う時間が、そうさせるのだろうけれど
ここに住んでいる人から見ると、ちょっと不思議な人、そんな印象な
行動だろうか。
夕暮れの村、空気はとても澄んで
寒いくらいに感じるのは
この地、northeastらしい雰囲気である。
爽やかにも感じられる、その風のせいで
リサは、懐かしい思い出をイメージする。
そう、自転車で
おじさんは
おじいちゃんの建てた家から
この駅まで通っていたのだった。
そう思って、自転車の一台を見ると
見覚えのある文字に、見慣れた住所が掛かれて居た。
後ろのふぇんだーに、黒いマジックインキで。
その文字が、よく車掌さんが車内で発券する
切符の文字のようで
リサは、思わず笑顔になる。
そこに戻って来た、と言うような
安堵感が、そうさせるのだろうか。
記憶はないけれど、おじいちゃんも
この自転車で
通っていたのだろうか。
時々、汽車を見に行きたくて
おじいちゃん乗せて貰った自転車の後ろは
この自転車より、もっと
無骨なものだったような気もする。
汽車に乗って、少し南の方の峠の駅へ行き、
そこの駅の人に、やっぱり自転車を借りて
峠まで、汽車を見に行ったんだった。
黒くて大きな機関車を、線路沿いで見て。
煙をいっぱい吐いて、大きな体を揺らして。
蒸気機関車は、大きな生き物のようだった。
そういえば、おじさんは写真が好きで
その、峠で鉄道写真を撮って
国鉄の社内雑誌に掲載したり、などと
楽しい趣味人。
やっぱり自転車で、あちこちに
ツアイスのカメラを持って行ったものだった。
いつだったか、リサが間違えて
その大事なカメラのフードを曲げて
しまった事があった。
でも、おじさんは
怒らず
黙って、金属のフードを眺めていた。
小さな頃のリサは、おてんばだったので
そのレンズフードを
なんとか直そうとして
歯形のついてしまったレンズフード。
それを、おじさんは
笑いながら眺めていた。
機械と、人って
そんなふうにして、思い出を作って行ったり。
機関車も、カメラも、自転車も
人の作りだした金属の塊なのに
見る気持ちによっては、懐かしかったり
愛おしかったり。
リサの気持ちも、その機械の思い出で
いっぱいだ。
駅前を、歩いて。
バス通りに出ようかと思っているリサに
ラジオの音楽が聞こえて来た。
砂利道沿いの家、
古い木造の窓から、明かりが漏れて
楽しい家族の夕餉、団欒。
ラジオの女性DJは、爽やかな言葉で
曲を紹介する。
I need to be in love by carpenters"
美しいと言うか、几帳面な印象の
楽器のような歌声で
その曲は綴られる。
恋に落ちるべき、なのでしょう、わたし。
完璧を求めるなんて、無理だったのね。
と、そのボーカリストは歌う。
彼女、カレンは
若くしてバンドで成功してしまって、なぜか
心の均衡を失って
夭折してしまう。
本当に、彼女の望む道だったのだろうか?
バンド、音楽。
でも、兄と始めたその音楽生活が
周囲の期待を呼ぶようになると、彼女の望む、ふつうの生活は
望むべくもなくなる。
もともと、几帳面な性格なので
周囲の期待に応えようと
ヒットソングを作り続ける、などと言うのは
人気、その根拠がないものだから
彼女にとっても
重圧だったのかもしれない。
いくつかを
リサは、微笑みながら触れて歩いている。
旅、って言う
ふだんと違う時間が、そうさせるのだろうけれど
ここに住んでいる人から見ると、ちょっと不思議な人、そんな印象な
行動だろうか。
夕暮れの村、空気はとても澄んで
寒いくらいに感じるのは
この地、northeastらしい雰囲気である。
爽やかにも感じられる、その風のせいで
リサは、懐かしい思い出をイメージする。
そう、自転車で
おじさんは
おじいちゃんの建てた家から
この駅まで通っていたのだった。
そう思って、自転車の一台を見ると
見覚えのある文字に、見慣れた住所が掛かれて居た。
後ろのふぇんだーに、黒いマジックインキで。
その文字が、よく車掌さんが車内で発券する
切符の文字のようで
リサは、思わず笑顔になる。
そこに戻って来た、と言うような
安堵感が、そうさせるのだろうか。
記憶はないけれど、おじいちゃんも
この自転車で
通っていたのだろうか。
時々、汽車を見に行きたくて
おじいちゃん乗せて貰った自転車の後ろは
この自転車より、もっと
無骨なものだったような気もする。
汽車に乗って、少し南の方の峠の駅へ行き、
そこの駅の人に、やっぱり自転車を借りて
峠まで、汽車を見に行ったんだった。
黒くて大きな機関車を、線路沿いで見て。
煙をいっぱい吐いて、大きな体を揺らして。
蒸気機関車は、大きな生き物のようだった。
そういえば、おじさんは写真が好きで
その、峠で鉄道写真を撮って
国鉄の社内雑誌に掲載したり、などと
楽しい趣味人。
やっぱり自転車で、あちこちに
ツアイスのカメラを持って行ったものだった。
いつだったか、リサが間違えて
その大事なカメラのフードを曲げて
しまった事があった。
でも、おじさんは
怒らず
黙って、金属のフードを眺めていた。
小さな頃のリサは、おてんばだったので
そのレンズフードを
なんとか直そうとして
歯形のついてしまったレンズフード。
それを、おじさんは
笑いながら眺めていた。
機械と、人って
そんなふうにして、思い出を作って行ったり。
機関車も、カメラも、自転車も
人の作りだした金属の塊なのに
見る気持ちによっては、懐かしかったり
愛おしかったり。
リサの気持ちも、その機械の思い出で
いっぱいだ。
駅前を、歩いて。
バス通りに出ようかと思っているリサに
ラジオの音楽が聞こえて来た。
砂利道沿いの家、
古い木造の窓から、明かりが漏れて
楽しい家族の夕餉、団欒。
ラジオの女性DJは、爽やかな言葉で
曲を紹介する。
I need to be in love by carpenters"
美しいと言うか、几帳面な印象の
楽器のような歌声で
その曲は綴られる。
恋に落ちるべき、なのでしょう、わたし。
完璧を求めるなんて、無理だったのね。
と、そのボーカリストは歌う。
彼女、カレンは
若くしてバンドで成功してしまって、なぜか
心の均衡を失って
夭折してしまう。
本当に、彼女の望む道だったのだろうか?
バンド、音楽。
でも、兄と始めたその音楽生活が
周囲の期待を呼ぶようになると、彼女の望む、ふつうの生活は
望むべくもなくなる。
もともと、几帳面な性格なので
周囲の期待に応えようと
ヒットソングを作り続ける、などと言うのは
人気、その根拠がないものだから
彼女にとっても
重圧だったのかもしれない。
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